刑事コロンボ・魔術師の幻想/ハーヴェイ・ハート監督
カードマジックのトリックのネタばらしの場面があって、やっと観たことがある記憶が蘇った。そういえばこのコロンボのおかげでマジジャンは少し困ったのではなかろうか。実際に魔法を使える人間はいないので、何かトリックはある。いや、あるはずで、基本的に殺人事件を解く刑事と、マジシャンとは相性が良い様にも思う(いや、悪いというべきか)。今はどうだか知らないけれど、以前はこのようなマジックショーの謎解きのようなバラエティは結構あって、謎解きに参加するメンバーには、必ず推理小説家が入っていた。コロンボの場合は脚本家ということになるが、ミステリを考え付いたりする才能というのは、マジックのトリックを考えることと似ていることもあるのではなかろうか。
そういうわけで、マジシャンといえども逃げ場はない。しかし、このふてぶてしい犯人ではあるが、なんとなく僕は同情してしまう心情もないではない。殺人は確かに身勝手なところがあるから駄目というのは分かるが、被害者から恐喝されていたわけで、それでも殺されて当然の人間だったかどうかということもあるが、しかしやはりマジックやトリックの覚えがある人間であるから分からないように殺したくなるのも無理はないではないか。過去を抱えたまま生きていく人間は本当につらいものである。
さて、それでもこのトリックにも、さらに謎解きにも、いくつかの偶然によって成り立っているものが結構ある。いくら厨房が忙しいといえども、やはり分かるものは分かるだろうし、タイプライターのリボンにしても、見つけたのは偉いことかもしれないが、やはりかなり偶然という感じもする。しかしながら生きているのがそういうことなんだということになると、何にもいえないわけではあるが…。
それにしても犯人は、脱出を得意とするわけで、さらに手錠もはずせるのだから逃げるのも簡単なのではないか問題、というのもありそうだ。そういうチャレンジのための続編があればいいのだが、恐らくなさそうなところをみると、やはり仕掛けというのが必要そうだということになる。刑務所にある材料で足りるといいけどね。