orengeオレンジ/橋本光次郎監督
始業式前の登校中、桜並木に見とれていると、10年後の自分から手紙が届いた。内容は転校してくる翔という男の子のこと。10年後の自分は様々な後悔を抱えており、それは翔に対するものだった。結果的に自殺に追い込まれていった同級生の男の子の命を救うために、過去の自分は何をすべきだったのか。要するに今の自分は何をすることになるのか?
設定がSF作品とはいえるが、青春のシャイな心の葛藤をえがいた作品として悪くない。多少主人公の青年はしっかりしてなくて脆すぎる感じがするが、それがある意味で病的な死に陥りやすい性格ということになるんだろうか。友人たちを巻き込んで、後悔無い思いを伝え合い、自分自身を形成していく成長物語でもある。未来は自分の行いによってパラレルに分かれていくものであって、決定されている運命をなぞっている訳では無い。そのようなメッセージも込められていて、悪くない出来だろう。
しかしながら個人的に思うのは、やはり親友である須和のことである。先にある未来では、菜穂と一緒になって子供もある。しかし菜穂が本当に好きだった翔との恋愛を、いまだに応援していることになる。ちょっといい奴過ぎるし、悲しすぎるのではないか。結局ある意味では自分への破壊行為でもある。変わらない未来においてそれで生きていて、自分が分裂しないのだろうか。
学校生活がこんな感じだった経験が乏しくてよく分からないところが多かったけれど、少女マンガ的に学校を俯瞰すると、こういう世界もあるのかもしれない、と思った。だから学生時代はいつまでも楽しいような記憶のある人がそれなりに多いのだろう。まあ、多少割り引いても、若いというのは楽しそうではあるんだけどね。切ない季節は思いのたけをおしこめないで、表に出して生きていきましょう。何しろ人生は短いのだから。