カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

複雑に糸が絡んでほぐれなくてもそれでいい   ハッシュ!

2017-03-29 | 映画

ハッシュ!/橋口亮輔監督

 ゲイのカップルに、ひょんなことから知り合いになった男性遍歴のだらしない女・朝子が、子供が欲しいという理由で近づいてくる。直也の方は、ゲイであることを隠してもいないしある意味でそういう一生を送る覚悟を決めている。一方パートナーの勝浩は、父親という立場でも気持ちが揺らぐし(基本的に人が良い)、会社の若い女性からも横恋慕されている。ゲイである自分に割り切れなさを感じているんだろう。そこに何か気持ちは荒れているが、子供が欲しいという朝子という女が絡んできたので、横恋慕女が激情して興信所に関係を調べさせ、お互いの家族に暴露してしまう。そこでこの家族らがこれらの複雑に見える関係に割り込んでいろいろ意見を言うので、さらにごちゃごちゃと混乱が深まって収集がつかなくなっていくように見えるのだった。
 基本的にはゲイのカップルがささやかながら平和に暮らしているところに女が絡んできた所為でおかしくなるのだが、結果的に家族の在り方や、大人の事情のあやふやさ、整理できない感情の問題などが、いろんな形で浮き上がってくる。大変だが、単にコメディとして笑いのために調理されている訳でなく、おかしくもありながら、実に考えさせられる内容になっている。観終わっても余韻が続いて、もっとゴタゴタやってもらっても良かったかもな、とさえ思った。尺が長くなりすぎて失敗しただろうけど。
 ゲイでは無くても家族を作る葛藤に押しつぶされるように生活している人もいるし、結局理解しているのかしていないのか最後まで分からない人はいるし、暴力的に混ぜまわして復讐しか頭にない人もいる。何か心に傷があったのかもしれないが、好きでもない男とはセックスしてしまう朝子であっても、本当はちゃんと向き合う相手が欲しいということなのかもしれない。でも相手がゲイなんだから、願望はやはりストレートにはいかない訳だ。
 変な映画と敬遠するには惜しい映画だと思う。実際普通にいい映画としての評価も高い。少し古くはなっているが、役者さんたちの若い姿を見るだけでも、ずいぶん楽しい映画ではなかろうか。
コメント
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