イソギンチャクの間を泳ぐクマノミは、アニメにもなった関係もあってか、大変に人気のある魚である。オレンジに白い三本の縞模様が鮮やかで(橙が主だったり背が黒かったりなどの種もある)可愛らしく美しい。暖かい海に生息し、地域で様々な呼び名もある。高知ではチンチクリなどと呼ばれているという。
見た目の可愛らしさと裏腹に、大変に攻撃性の強い性格である。縄張り意識が強く、イソギンチャクの間で激しい攻防を繰り広げている。捕食する大型の魚の脅威もあって、棲みかを追われると死活問題である。弱い個体は安住の地を求めて、ひたすら放浪するより無い。そうして鍛えられて成長し、やがて良いイソギンチャクを支配するまで戦い続ける。
さらに面白いのは、ひとつの縄張りの中で一番大きな個体は必ず雌である。そして次に大きな個体のオスとしか交尾しない。後の雑魚はナンバー2になれるまでひたすら争い続ける。そして一番大きな個体の雌が死ぬなどアクシデントがあると、何と今までのナンバー2のオスが、メスに性転換する。そうして今までナンバー3だったオスとだけ交尾して子孫を残すのである。なんとなく人間の感覚からするとややこしいが、そうやって強い子孫を残す戦略なのかもしれない。