本来はこれからスタートすべき企画だったはずである。それというのも、昨年僕が見た中で、文句なしに傑作で、誰もが楽しんで観られるだろう作品たちだからである。ちょっと意外に感じられる作品も入っているかもしれないが、しかしこれを皆が見た後であれば、日本全国どこであっても、なるほどそうだったかもしれないな、と思うはずだと思う。僕の個人的なものがあるとはいえ、それくらい普遍的に面白いものは面白く、優れているものは優れているのである。
という前置きがあって、やっぱり面白くて凄い作品というのは「パラサイト」であろう。社会批評性を高めてカッコつけて描きたくなる題材を、重層的でなおかつギャグをちりばめて、ミステリでありながらしっかり心理ホラーも混ぜ込み、そうして社会性をしっかり担保している。要するにごちゃごちゃとしていながら整合性があり、エンタティメント性がしっかりした上で、人々を感心させてしまうのだ。興行的にも成功である。もう一つ言えるとしたら、やはり韓国映画であって、日本でも「万引き家族」は出来るんだけど、「パラサイト」みたいに、ひょっとするとハリウッドでも作られそうな感じにはならない。まあ、そこのところはいくぶん議論はあるかもしれないけど、そういうメジャー感はさすがだと思う。
「盲目」も最初に言っておくと、まあ、インドらしいというのは言えるのだが、それでも国際性もやっぱりあるってことである。この状況はさすがにインドだろうってことだけど、言っていることは、かなり国際性が高いというか。しかしやっぱりこれは、インドだから面白いんですけどね。かなりホラーでブラックなことになるんだけど、ギャグでもあって、人情噺だったりもする。そういうのが、本当にもうこてこてに盛られていて、観ている方が心配してしまうのである。爆発力もあって、しっかり娯楽として楽しめるだろう。これでいいのかどうかは、後から考えてもよく分からないんだけどね。
「婚前特急」は、こんなに面白い映画を見逃してたのか! という反省として。ツボにはまったというのはあるかもしれないが、こういうコメディはそう簡単にできるものではない。キャラクターが生きていて、現実でもこのキャラで起こりそうなことが次々起こって、見栄も手伝って大騒動になる。二転三転のどんでん返しがあったりして、本当にそうなっちゃうんだ! って大爆笑である。ま、そうならない人はごめんなさい。こういうのこそ本当の傑作だと僕は思います。ちょっとしたアイディア次第でいろんなことができるんだという、夢と希望が湧いてくるような、真に素晴らしい作品ではないだろうか。
パラサイト 半地下の家族/ポン・ジュノ監督
盲目のメロディ~インド式殺人協奏曲~/シュリラーム・ラガヴァン監督
婚前特急/前田弘二監督