前から好きだったのかもしれない分野なのだが、また個人的なブームが再燃している。理由はストレートに、面白いから。きっかけはコロナだったかもしれない。ウイルスのおかげで、生物のことをいろいろ考えるようになって、結局また進化論に来てしまった。そうして、どうやら僕は生半可にしか進化論関係を読んでいなかった。
「現代によみがえる」は、少し古い筈なんだが、改めて総合的に俯瞰するには、最適な本だ。おおもとのダーウィンは、本当に古くなっていないのだ。その時代背景にありながら、いかに自由に、そうして科学的に、ダーウィンは思考を深めていったのだろうか。廻りの人間を含めて、人間の思考錯誤が面白いのである。
「系統樹」という分類については、生物の世界にはいつもついてまわる問題だ。系統樹をもって今や過去を知る手法なんて、ありふれている一手法だと思っていた。ところがこれがとんでもない。系統樹で考えるというのは、ダイレクトに歴史がそのまま科学であるという姿そのものなのだ。この面白さは、ちょっといろいろはみ出しすぎて、手に余ってしまうのだった。
本当は先のほんの前に「理不尽な」を読んでいて、途中であれっと思ったのが、そもそものきっかけだった。言っていることは分かるのだが、なんだか僕が理解していることとは違うのか? それももう確定して違うのか? そのさまざまな論をこれまで読んでいて気づかなかった僕が愚かだった。僕は完全に進化論を誤解していた。様々な進化論の本を読んできて、確かになんとなくモヤモヤしたものがあったはずなのだ。そのモヤモヤの道筋がやっと見えてきた感じだ。楽しいブックガイドにもなっていて、これは道の始まりなのである。
「王様気取りの」は、けっこう恐ろしい名著である。人間は改めて人間で、そうして驚異の地球の環境の中で暮らしている。そうして、実際に様々な感染症にかかる可能性があり、そうしてあるいは、それらの感染と共存しながら存在している。これはもう、人生は運だというのは明確だ。我々はある意味で生かされている。我々は狭い社会の中でしか生きていけない弱きものだったのだ。
そうして「マリス博士」なのだ。マリス博士は現在世界中でもっとも有名なノーベル賞受賞者だろう。ええっ、知らないはずないですよ。マリス博士がPCR検査を発見したのだ。それも彼女とドライブ中に思いついて、そのまま熱中してその理屈を確立してしまった。そうしてサーフィンして気ままに暮らしましたとさ。まったく変な人がいたもんだ。本当に世界を変えてしまったのだ。ま、楽しく生きたものが、人生の勝者である。
現代によみがえるダーウィン/長谷川真理子、三中信宏、矢原徹一著(文一総合出版)
系統樹思考の世界/三中信宏著(講談社現代新書)
理不尽な進化/吉川浩満著(朝日出版社)
王様気どりのハエ/ロバート・S・デソヴィツ著(紀伊国屋書店)
マリス博士の奇想天外な人生/キャリー・マリス著(ハヤカワ文庫)