カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

最も美しいセオリー(2020年をふりかえる)

2021-01-12 | なんでもランキング

 前から好きだったのかもしれない分野なのだが、また個人的なブームが再燃している。理由はストレートに、面白いから。きっかけはコロナだったかもしれない。ウイルスのおかげで、生物のことをいろいろ考えるようになって、結局また進化論に来てしまった。そうして、どうやら僕は生半可にしか進化論関係を読んでいなかった。
 「現代によみがえる」は、少し古い筈なんだが、改めて総合的に俯瞰するには、最適な本だ。おおもとのダーウィンは、本当に古くなっていないのだ。その時代背景にありながら、いかに自由に、そうして科学的に、ダーウィンは思考を深めていったのだろうか。廻りの人間を含めて、人間の思考錯誤が面白いのである。
 「系統樹」という分類については、生物の世界にはいつもついてまわる問題だ。系統樹をもって今や過去を知る手法なんて、ありふれている一手法だと思っていた。ところがこれがとんでもない。系統樹で考えるというのは、ダイレクトに歴史がそのまま科学であるという姿そのものなのだ。この面白さは、ちょっといろいろはみ出しすぎて、手に余ってしまうのだった。
 本当は先のほんの前に「理不尽な」を読んでいて、途中であれっと思ったのが、そもそものきっかけだった。言っていることは分かるのだが、なんだか僕が理解していることとは違うのか? それももう確定して違うのか? そのさまざまな論をこれまで読んでいて気づかなかった僕が愚かだった。僕は完全に進化論を誤解していた。様々な進化論の本を読んできて、確かになんとなくモヤモヤしたものがあったはずなのだ。そのモヤモヤの道筋がやっと見えてきた感じだ。楽しいブックガイドにもなっていて、これは道の始まりなのである。
 「王様気取りの」は、けっこう恐ろしい名著である。人間は改めて人間で、そうして驚異の地球の環境の中で暮らしている。そうして、実際に様々な感染症にかかる可能性があり、そうしてあるいは、それらの感染と共存しながら存在している。これはもう、人生は運だというのは明確だ。我々はある意味で生かされている。我々は狭い社会の中でしか生きていけない弱きものだったのだ。
 そうして「マリス博士」なのだ。マリス博士は現在世界中でもっとも有名なノーベル賞受賞者だろう。ええっ、知らないはずないですよ。マリス博士がPCR検査を発見したのだ。それも彼女とドライブ中に思いついて、そのまま熱中してその理屈を確立してしまった。そうしてサーフィンして気ままに暮らしましたとさ。まったく変な人がいたもんだ。本当に世界を変えてしまったのだ。ま、楽しく生きたものが、人生の勝者である。

現代によみがえるダーウィン/長谷川真理子、三中信宏、矢原徹一著(文一総合出版)
系統樹思考の世界/三中信宏著(講談社現代新書)
理不尽な進化/吉川浩満著(朝日出版社)
王様気どりのハエ/ロバート・S・デソヴィツ著(紀伊国屋書店)
マリス博士の奇想天外な人生/キャリー・マリス著(ハヤカワ文庫)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちょっと変、別にお勧めではないはずだが(2020年をふりかえる)

2021-01-12 | なんでもランキング

 「クーリンジエ」は、映画関係者には評判のいい映画だ。映画の枠から考えると長すぎる尺なのだが、二三回に分けて観るドラマのようなものだと思えばいいかもしれない。一つのコマに納めることのできなかった監督の力量不足ともいえるし、そもそもそんなこと関係ねえさ、という開き直りかもしれない。そういうところは気に入らないのだが、しかし見ていくと、非凡なのは確かなのだ。映画なのだが文学性が高いというか、なんとなくハマり観てしまう。まあ、お暇ならどうぞ、なのだけど、語り合いたい映画かもしれない。
 「誰もがそれを」も、妙な映画である。サスペンスであり、緊張感も確かにある。しかしこれは究極の愛でもあり、ずるがしこい詐欺でもある。こういう感覚は、南米や南ヨーロッパにはたまにある。愛がすべてで愛のためなら何でもやる、という美徳感があって、しかし人を騙して儲かるような人間が偉いのである。これは日本人にはほとんど理解できない倫理観なのだが、しかしやはり愛の前に勝てない人間が出てくるのだ。人はそれを最大限利用しようとする。まあ、馬鹿とお人よしは同格だということなんでしょうか。
 「甘い生活」は、一応名作ということで定着している。しかしながら、この映画の意味が分かっている人なんてほとんどいないだろう。作った監督だって、意味を知っているかどうか怪しいものだ。しかしながら物語は進み、混沌は深まる。何か気分的にいい映画を観たという錯覚は残る。ほんとに不思議な映画は、そうやって神格化してしまうのである。
 「女王陛下のお気に入り」も不思議な物語だ。貴族という廃退的な世界に使われる人間が、どのような方法でのし上がっていくか。手っ取り早いのは気に入られることだ。しかしながら、直接気に入られるのは最も重要であるのだけれど、周りにも気に入られるために努力や地位を保っている人々だっている中でのことだ。そういうバランスの中にあって、どのような生き方を人間はすべきなのだろうか。ほとんどホラー映画みたいな緊張感がある。しかし勝負の行方も気になるところではないだろうか。
 「フレンチアルプス」は、気まずいコメディである。夫婦という他人を見事に描いてはいるんだろうが、実際は単なる個人のエゴだ。それもきわめてヨーロッパ的な、他人が悪いというエゴだ。胸糞が悪くなり、せっかくのパーティがすべて台無しになる。そんな感じ。そういうのを楽しめる人種がいるらしく、こういう映画がある。普通なら勧めないけど、大人ならば観てもいいかも、という思いで紹介するのである。
 「ファントム・スレッド」は、僕はいい映画だと思うが、さて、そう一般的にそう思われるのかどうか自信がない。ラストも愛があれば当然、と思う。それは神風を生んだ日本男児の末裔だから? まさかね。でも本当に、僕なら同じようにしますとも。仕事のために選んだ女性に愛が無いとでも思ったんでしょうか? 女の人というのは欲張りだと、僕は思います(まあ、そういう話だから仕方ないんだけど)。

牯嶺街(クーリンジエ)少年殺人事件/エドワード・ヤン監督
誰もがそれを知っている/アスガー・ファルハディ監督
甘い生活/フェデリコ・フェリーニ監督
女王陛下のお気に入り/ヨルゴス・ランティモス監督
フレンチアルプスで起きたこと/リューベン・オストルンド監督
ファントム・スレッド/ポール・トーマス・アンダーソン監督
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする