カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

何が謎で、誰が手を引いているのだろうか   ゴーストライター

2021-06-05 | 映画

ゴーストライター/ロマン・ポランスキー監督

 元英国首相のゴーストライターの仕事を請け負って、その元首相とともに米国の島の別荘のようなところで取材を兼ねて執筆することになる。そもそも前任者が謎の溺死を遂げており、問題はあるものの、大体の原稿は既に出来上がっている。その最後を書き上げるために、残された時間は一か月と少ない。
ところが原稿を書こうにも、元首相は情報を聞き出すためにテロリストを拷問にかけた疑いで英国に追われる身になってしまう。しかしアメリカは英国の元首相を匿う覚悟はあるようで、米国内なら身柄は安全である。そういう背景はあるが、前任者が元首相のことを調べている過程で、ずいぶん過去にさかのぼって何か秘密を握っていたらしいことに気づく。わずかだがその資料の断片が手元にあり、それを調べるために記載の番号に電話するのだったが……。
 そもそも元首相は、自叙伝で語った政治家になるいきさつにおいて、時系列に齟齬があるようだ。それは彼が学生時代までさかのぼることになる。もともとはノンボリ学生だった元首相だったが、どうして急に政治家の道を志すようになったのか。その頃の友人たちとの写真はあるが、その後その人たちとのつながりはどうなっているのか。ライターは、そのような謎を調べていくうちに、何か国家機密のようなことと結びつくようなことにも足を踏み入れていくようなことになっていく。謎の車に追われたり、英国の政府の人間とかかわりを持ったりする。どちらがどちらの味方なのか、それすらも混乱して分からなくなる。ただし、前任者は間違いなくこのこととの関連で殺されてしまった。自分もかなりやばい状態になっているようなのだったが……。
 そのサスペンスの描き方がなかなかに見事で、観ていて引き込まれていく。もう少しで謎に手が届くような気もするが、何か確信が持てない。いったい誰が何のために嘘をついているというのかさえ分からないのである。そうして最後になってやっと核心にたどり着くと……。まあ、よく出来ているし、これでいいのかよく分からないながら、妙な余韻も残る。名作映画とまで言えないまでも、なるほどな、という感じなんだろうか。できればこんな仕事なんてやりたくないものだが……。
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