マイ・フェア・レディ/ジョージ・キューカー監督
もともと舞台劇だったものの映画化ミュージカル。舞台の方は、あのジュリー・アンドリュースだったらしいが、映画では問題があり、それで主役をヘップバーンがやることになったという。
下町の下級階層出身のちょっと柄は悪いが美人の若い女を、社交界の人間に仕立てる試みを、お遊びでやってみようとする上流階級の(一種の貴族)教授たちの賭けのために、下品な女は振り回されながらもレディの学習をして社交界のデビューを果たす。
階級社会のある英国にあって、差別まで定着している社会そのものを描いたことで、上流の人たちには面白さがあったものだろうと思う。田舎者で粗野な人間が、上品で繊細な社会に入ると、何かと失敗することになる。それ自体がギャグとして楽しめるという安易な考えがあるのだろう。
要するに今現代から見ると、ちょっとあからさまな差別的に過ぎて、まったく笑えない。そればかりか、痛い、という感じだ。階級社会はいまだに存在するが、今はそういうあからさまなことはせずに静かに差別しているわけで、そういう意味では陰湿でないだけである。またヘップバーンのわざとらしいが溌溂とした若さのある演技に対して、教授のそれはいかにも中年の皮肉男で魅力が足りない。バランスが悪いので、ロマンスとしてもあまりときめかない。当時の人はよくもまあこんな作品で満足できたものだな、と感心してしまうレベルである。
見たことは無かったのだが、聞いたこともある音楽は多く、案外これが一世を風靡したらしいことは感じられる。いい時代だったというしかないのではないか。