カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

二人のミニマニズム

2021-08-30 | 音楽

 ジャクソン・ブラウンが新譜を出している。曲がかかると、ジャクソン・ブラウンが歌う前からジャクソン・ブラウンであることがわかる。なんというか古臭い雰囲気。しかしちょっとゴージャスでタイミングがいい。要するに僕らが青春時代を過ごした80年代の青臭いままだ。歌詞もまだまだ青臭いんだそうで、かれももう70歳を超えているはずで、やっぱり老人というのは、青臭いことを言い続けることくらいしかできないのかもしれない。もちろんこれは誉め言葉で、そういうことを信じて生きてきたんだろうから、それでいいのである。僕らはもうまっすぐ歩けなくて、別の道に行っているだけのことだ。
 僕はあんまり彼のファンとは言えなかったはずだが、何しろヒットソングが多いので、検索してみたら結構曲を知っている。あの頃はあちこちで曲が流れていたし、プリテンダーはひょっとするとレコードかCDは持っていたかもしれない。いや、確かにこれは繰り返し聞いた覚えがある。なんだ、それなりに好きだったんじゃないか。恥ずかしくてそれを人に言えなかっただけのことだろう。何しろ僕はロック少年であって、こんな軟弱なロックを聴いていると思われたくなかった。そうしてこういう曲の流れる青春映画も好きじゃなかった。でも今見ると、結構面白いので、観るべきだったかもしれないけど。そうしたら、もっとジャクソン・ブラウンも聴けたことだろう。
 それにしても、これは一種のミニマニズムではある気がする。音数はそんなに多くなくて、ギターも鳴っているが、いつもではない。もっと弾いてもいいくらいだけど、印象的なくらい出てきて、ピタっと止まる感じ。でも、それしかフレーズがないような気もする。歌だってメロディアスであるとは思うけど、しつこくない。声は若々しいままで凄いけど、でもぜんぜん頑張ってない感じである。
 そういえばプリンスも新譜を出している。これは10年も前にアルバムは作っていて、時代に合わないか何か考えがあって、発表を控えたのだという。いわゆるアルバム一枚お蔵入りさせていた訳で、ちょっと考えられない。でも聴いてみるとこれが、やはりミニマニズムなんである。何か足りないわけではない。ものすごく凝っているくせに、音を少なくしている。でもゴージャスで重厚だ。スライ&ロビーのようなソウルフルな系統も受け継ぎながら、しかしプリンスでしかありえない。
 そういうものが並んで現代で同時期に発表される。なんだか本当に不思議な感じがするのだが、でも同時にまた、当然のような気もする。長く生きていると、いろんなことがあるもんだ。
コメント
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