犯罪都市/カン・ユンソン監督
地元組織の抗争のある中、中国からの新興勢力が現れ、その均衡が破れる。ヤクザ顔負けの力でねじ伏せる刑事の躍動があって、なんとかこの混乱を収めようと躍起になるのだったが……。
破天荒な刑事役をしているマ・ソンドクの魅力満載のバイオレンスアクション映画。もうはっきり言ってそれだけともいえる。対する中国系のマフィアは凶悪で、斧で腕を落とすなど、とにかく暴力が恐ろしい。地元の韓国マフィアも悪いのだが、数で圧倒しても次々にやられてしまう。そうして地元商店街のまじめに働いている人々まで苦しめることになる。
中国マフィアの台頭に、韓国の警視庁に当たる組織も黙ってはいない。そういう力関係もあって、地元の警察との政治的な軋轢も語られる。どちらが捜査に当たってイニチアチブを取るのかの争いもあるわけだ。こういう考え方そのものは、基本的にはヤクザと同じである。人間というのは主体性の問題にこだわるというか、基本的には誰かに使われることを嫌う生き物なのかもしれない。
とにかくバイオレンスが売りなので、強烈といえば強烈である。拳銃も使うが、ナイフや斧を使う人が多いので、切られる場面が痛たそうで困る。主人公も相当に切られるが、いわゆる強靭な肉体を持っているので、ちょっと顔をしかめて反撃する。やりすぎなのだが、それでいいのだ。なんだかよく分からないところはあるけど、とにかく事件はそうやって解決すると決めているので、それに突っ走ってやるしかないじゃないか。
ギャグではあるんだろうけど、やくざの側にも警察の側にも、情けないのが結構出てくる。そうやってダメぶりをみせているけれど、立場がちょっとでも強くなると一転して強気になる。面白いのだけど、なんだかアジア的な感じもして妙な感慨を抱いてしまう。外国映画だと、こういう人間から先に死ぬ。アジアだとこれが生き残ったりする。どこかこれは、共感のあるものなのかもしれない。ふつうの人間は、こういうものだという暗示なのかもしれない。それともあまりにスゴイ人間を描いているので、バランスを取っているということなのかもしれません。