マンク/デビッド・フィンチャー監督
ゲイリー・オールドマンが終始タバコをふかし酒を飲んでいる。マンクというのは、マンキーウィッツという著名な脚本家の愛称である。あんまりおもしろい映画とは言えないが、アメリカではダントツに批評家からの評価が高い「市民ケーン」の脚本を書いたことで伝説となっている。映画の大筋は、その市民ケーンの台本を書いた舞台裏が描かれているようだ。この台本には、その当時メディア王として大きな権力を持っていた実在の人物であるハーストを揶揄する内容でもあった。映画化に当たっては、このハーストから様々な妨害があったとされる。しかし同時にマンクはハーストとも交友のある人間で、この映画の脚本の依頼主でもあり監督でもあるウェルズとももめていたらしい。さらに当時マンクはアル中でもあり、人間関係はグダグダだった。そういう様々な問題の舞台裏をズバリと描いている、という事になるんだろう。見た感じ実話かどうかは怪しかったが……。
とにかくプロットは入り組んでいて、当時のハリウッド社会のでたらめさも暴いている。あえて白黒映像で、当時をリアルに振り返ったということかもしれない。しかし妙な科白回しと、核心がよくわからない背景ばかりなので、いったい今マンクは何をやりたいのかよくわからない。狂気をやっているらしいのだが、だからそれが何なのだ、という感じもする。正義漢のようなところもある人だったのかもしれないが、実際周りの人は迷惑だっただろう。
映画として評価が高い様だが、いわゆる西洋人が好む演技の上手さがこういうものであるという事である。出来栄えがいいのかどうかさえ、よくわからなかった。だいたい「市民ケーン」という映画がそんなシロモノであって、だから面白くないのである。それを再現したものがたいして面白くないのも、
仕方が無かろう。
そういう訳で、もの好きな人はどうぞ、という映画である。まあ、たばこや酒は控えたほうがいい、という教訓にはなるかもしれない。