カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

まさになんてことしてくれるんだ、の世界   バビロン

2024-10-01 | 映画

バビロン/デイミアン・チャゼル監督

 ハリウッドの初期の全盛時代と言われる、サイレントからトーキーに様変わりする頃の業界の喧騒と狂気を描いたもの。大変な栄華を極めたハリウッド村の中にあって、毎晩酔狂に明け暮れ、湯水のように金を使い、またその取り巻きの渦の中で泳ぎまわる人々の、いわば群像劇のようなものになっている。サイレントの見た目だけ美しい俳優たちの、科白まで覚えなければならない次の時代の演技への戸惑いと葛藤と挫折を中心に、世代交代の中でひときわ精彩を放つ女優の破天荒な暴走に翻弄される映画会社の男の行動が中心に据えられている。表と裏のごった煮の中にあって、生き延びていくために奔走するが、それでも思うように動いてくれない才能あるジャンキーに振り回される訳だ。まさにゲロまみれのグロテスクな世界なのである。オエっと来ること請け合いである。
 基本的には彩り豊かだが下品そのものの栄華を、これでもかというようにぶち込んだ世界になっている。尺も長くてどうしたものか、という感じだが、ちゃんとした締まりのある作品でもない。頑張りすぎて空回りしているのだが、時折なるほどもあるので、この監督も暴走してしまったのかもしれない。まあ、これまでが良すぎた、ということもあるのかもしれないが、気負いすぎて名作になり損ねた感がある。何も面白いものばかりが映画じゃないので、たまにはそんな作品を作ってしまったとしても、仕方ないことなのかもしれないが……。
 ハリウッドの女優目指してパーティにやって来た奔放な女性がいて、実際彼女は機転も聞いて、人々を引き付けるものがある。新人の映画会社の助手のような男がこれに魅せられ、実際に彼女がハリウッドで力をつけてくるそのものの様子を追っかける形になる。そうして彼自身も成長し、映画会社の中では重要な位置を占めるようになっていく。一方でサイレントの大スターで、この喧噪の中心人物だった俳優は、次の世代になじめないばかりか、自分の衰退をなかなかに認めることができない。しかしながら、もう元のような大作映画からのオファーが来ることは、無くなってしまうのだった。
 基本には悲しいトーンがあるのだが、この題材ははっきり言ってもう出尽くしているのではないか。これまでの数々の映画の中で語られてきた文法と、なにか目新しい視点がある訳ではない。もちろん見た目には非常に豪華だが、そこに仕掛けれれているもので特異なものと言えば、ゲロををはじめとするおぞましい下品さだ。まあ、良くも悪くもそれが、現代風という訳なのかもしれない。
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