決戦は日曜日/坂下雄一郎監督
地元ではゆるぎない力を持つ衆議院議員のじいさんが、病に倒れた。そんなときに議会は、解散総選挙になってしまう。そこでじいさん議員の娘が担ぎ出されることになったが、この娘が気は強いが世間知らずで向こう見ず、政治基本を何も知らない女性だった。事務所で働く秘書たちは、なんとかなだめすかしながら候補者を扱おうとするが、失言暴言など問題を次々に起こす上に、支持者である地元の有力者との関係も、どんどん悪くなってしまうのだった。それでも強固な基盤のある陣営であり、無難に行けば勝てなくはない。そんな中過去の政治スキャンダルが表に出て、思わぬ逆風に政治的な基盤自体が揺らいでいくようになるのだったが……。
基本コメディなのだが、なんとなく中途半端かもしれない。今の時代にありがちなネットスキャンダルを利用して、騒ぎは連鎖するが、まあ、いったんこうなると、事実上お終いであろう。それでもそれ自体が自分らにも有利に働くことがある。そこにはある種の単純さがあるものの、幻想である。
また、そういう騒動を経て政治に失望し、今度は落選するために自ら失態を演じることになるのだが、そういう騒動がコメディであることも分かるが、あんまり上手くいってるとは思えない。秘書は大変だけど、そういうものだからと説得するだけの大人としてのメタ視点も、なんだかそれで根本的にいいとも考えられない。もう少し政治を支える上で、大衆構造に問題がある日本社会の、裏での利権争いなど空想上のあれこれをちゃんと描かないと、基本的な構造コメディに行きつかないのではないか。選挙あるあるは少しあるが、これも極めて表面的なものである。もう少し実態を取材するなど、すべきだったのではないだろうか。
もっともそういった表面的な政治のあれこれというのは、やはり政治の在り方の分かりにくさにもあることとも思われる。表面的な政治参加しかしない一般の人たちと、実際に政治がどうこうという内容については、かなりの乖離がある。知っているのは選挙の表面だけで、政治家が日頃何をやっているのかなんてことは、基本は地味なんで知られても興味も持たれることなんてない。政治家が諦めてしまうのも無理も無いだろう。努力しても報われることなんてないのだから。
それにしてもこの事務所は、国会議員のものとはいえ、秘書がたくさんいるのである。要するに金がかかっているわけで、そういう政治には何が必要か、という事でもある。もっと勉強が必要なのは間違いなかろう。