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オーセンティックて何だ? 違うのが、正しい。


写真は旧第一銀行横浜支店の窓の脇ちょ、下のほうの拡大です。
この建物は、長らく横浜銀行の本店の別館として使われていて、営業室には中村順平のレリーフが飾られていたのですが、その話はおいておいて。

随分前に営業室部分は解体され、先っちょの丸い所だけが鉄骨で補強されて、半ば放置状態?見たいな感じで残されている姿を、あるいはご記憶の方もいらっしゃるかもしれません。でも、現在は少しの距離を曳き屋されて、
再生された営業室部分を介して高層ビルと一体化して、綺麗にお化粧直しをされて
おります。
そして、この窓はその再生された所と元の所のちょうど継ぎ目にあたるところにあります。

古いところは人造石で、新しいところは花崗岩です。ちょっと質感が違いますが、分かりますでしょうか?

新しいところを花崗岩で造った理由は「耐久性」と説明されていますが、この建物を設計した建築家は、槇文彦さん。素材の微妙な差異を繊細に扱って行くデザイン手法は、まさに槇さんの真骨頂といえる部分ですから、このテクスチュアの違いは、十分意識されていると思います。そこで、改めてこの再生建築を眺めてみると、オーセンティックなモノ(人造石で象徴)に対して、再生部分は「どこまで近づけられるか」、ではなくて、「どの様な距離がとりうるか」、という意識で解いている様に思えてきます。

そう、微妙に漂白され、結果、歴史性という重力からゆらっと、ほんの少しだけ浮遊させられた「歴史的建造物」。「再生」という、ある意味オーセンティシティへの挑戦ともとれる行為への批評性を確保することが、その狙いとすれば・・・。

・・・などと、建築家の歴史的建造物に対する感性のありかたをあれこれ推測するのも、秋の夜長にはまた、楽しいかも、でした。
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