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明治国家が求めた訳は。

小沢朝江氏の「明治の皇室建築」を読む。
以前ワタリウムの「庭園倶楽部」で面白いレクチュアをお聞かせいただいた記憶があり、
本屋で見かけて速攻で購入(そういう本に限って図書館にあったりするんだけど)。

明治の皇室建築―国家が求めた“和風”像 (歴史文化ライブラリー)明治の皇室建築―国家が求めた“和風”像 (歴史文化ライブラリー)
小沢 朝江

吉川弘文館 2008-10
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で、期待に違わず、なかなか面白いです。
明治天皇巡幸時に各地に建てられた建築や、今でも各地に残る旧○○宮邸、
そして東宮御所(赤坂離宮、現迎賓館)などを縦横に論じ、

近代の住宅建築、すなわち「中流階級」における<和風>:
・近世から連続するもの
・<洋風>との共存のなかで次第にきえていくもの

近代の皇族のすまいにおける<和風>:
(一見近世と連続しているように見える「和」館も、断絶しているように見える「洋」館も)
・近代に誕生した、近代独自の建築様式
・自らの身分を示す表象として、意思を持って選択した様式

との結論を鮮やかに導き出しています。
特に、近代皇族の<和風>は「七宝文に鳳凰牡丹文様のテーブル掛け」一枚で
それを表象することが可能なまでに様式としての強度を持っており、
「金屏風と椅子とこのテーブル掛けをかけたテーブルだけ」というシンプルな室礼であっても
十分「天皇の空間」を現出することが可能であった、との指摘は刺激的です。

あえて無いものねだりをいたしますれば、なぜにこのような<和風>を明治国家は要請したのか、
といった辺りを建築史の道を踏み外してでも論じて頂けるとうれしかったかも、ですが、
それを始めたら新たに丸々一冊分書くことになっちゃうか。
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