SEIBU プリンスラビッツ #18 鈴木貴人。 もうこの姿を見られないのは本当に残念です。
けれど、帰ってきてくれました。 日光アイスバックス #8 鈴木貴人として。
8の背番号。 昨年度まで敵として戦ってきたアイスバックスの、ピンクのゾウさんがついたホッケーパンツを着用してプレーしている鈴木選手をなかなか信じられない気持ちで見ていましたが、試合が進むにつれ、そこで鈴木選手ほかSEIBUからの5人の選手達がプレーしていること自体がうれしくて、ホッとして、気分も盛り上がってきました。
私、8月30日に日光まで アイスバックス対東北フリーブレーズのプレシーズンマッチを見に行ってきました。 相手チームは今期から新規参入のチーム。 監督は元SEIBUプリンスラビッツの監督、クリス若林です。
昨年12月、日本のアイスホッケー界名門であった西武がそのアイスホッケー部を廃部すると発表しました。 世界的金融危機の影響があるとは言え、突然の発表にファンのみならず、アイスホッケー界も揺れました。 もともと一時期のアイスホッケーブームは去り、国内で企業が保有するアイスホッケー部はたった三つ。 クラブチームとして貧窮の活動を続けているチームが1つ。 このたった4チームしかないアイスホッケーチームの1つ、それも西武が撤退するのです。 日本のアイスホッケー自体が無くなるのではないか、という話もありました。 いや、まだそうならないとは言えない状況です。
私は昨年9月ごろからアイスホッケーを見始めたにわかファンです。 自宅から車で20分程度の東伏見にアイスアリーナがあり、そこで西武の選手達が活動をしていました。 もちろんアジアリーグの試合も行われます。
試合はルールがわからないので、見所はよくわかりませんが(未だに)そのスピード、パワフルな中にある軽やかさに、なんだか惹かれました。
日本のトップアイスホッケープレーヤー達ですが、圧倒的な人数のファンを持つわけではないので(というよりかなり寂しい)、お正月のイベントやアリーナ周囲で選手達に会えば気軽に話をしてくれるし、サインも写真もOK。 ただ、結局これがあだになったわけです。
西武の廃部を聞いて、あらためて経済状況の悪化を感じました。 周囲でもご主人のお給料がカットになった、残業できなくなった、などの話は聞きましたが、会社自体がつぶれたり、やめさせられた人は幸いいません。 もちろん現実にはそういう方もたくさんいらっしゃるでしょうし、就職もかなり困難な状況です。
けれど、彼らは仮にも日本のトッププレーヤー達です。 そんな彼らがあっという間に職を失うのだ、という現実を見るとなんだかショックでした。 「アイスホッケーじゃ、しょうがないよ」と言わないで下さい。 私には同じスポーツ選手として野球の西武ライオンズとなにが違うんだろう、という感じです。
西武新宿駅や池袋駅に貼ってあるライオンズの選手達の大きなポスターを見ては「なんという待遇の違いだろう。。。」と恨めしく思いました。
けど、西武のアイスホッケー部廃部を一番ショックに感じていたのはやはり選手達でしょう。
そのショックは「職を失う」ということからだけではないはずです。 むしろ職と言うことであれば、廃部後普通に西武の社員として働く道はありました。 なんだか私みたいな運動音痴でもガッカリしてしまうのは、「夢を持って生きてゆくことの難しさ」みたいなことを選手とともに感じたからではないでしょうか。
私の家の近くには先ほど言った東伏見のアイスアリーナと、同じく西武が経営する東大和のアイスアリーナがあります。 そこには結構多くの子供達がアイスホッケーを習いに通っています。 アイスホッケーは北米で盛んなので、プロのプレーヤーたちは英語が堪能な方が多いです。 そのせいか、このアリーナ付近の私が勤める会社関係の英会話教室にはホッケーを習っている子達も数多く通っているそうです。 「そんな子達の夢まで消してはいけない」となんだか人事に感じられなくなりました。
そんな中、西武の選手たちがなんとか今後もアイスホッケーを続けられるように、と強く願うようになりました。 なかなか発表されない移籍先にイライラする日々が続きました。
しかし、ひとり、ふたりと移籍先が決まり始めとうとうビッグニュースが。 6月29日SEIBUから鈴木選手を含む6名の選手が日光アイスバックスへの移籍を決めました。
先にも述べたとおり、日光アイスバックスは企業が保有しないクラブチームです。 有志の複数企業とファンのサポートにより成り立つチームです。 経営状況はかなり良くありません。 選手たちへの給与支給も遅れるような状況です。 さらに、昨年度のアジアリーグでは国内外あわせた7チームで最下位の実力です。
しかし、古河電工が手放したこのチームを支えてきたのは地元栃木県民です。 日本一熱いファンを持つチームであることは間違いありません。 このチームに今必要なのはリーグに勝ってより多くのサポートを得ることです。 SEIBUから有能な6名の選手が移籍すれば、夢は更に強くつながれてゆくのではないでしょうか。 企業に頼ることなく、ファンとチームが作り上げてゆく、この不況下に生き延びてゆく道を切り開く可能性を秘めた唯一のチームと言えるでしょう。
西武が手放したチームから、同じように古河電工が手放し、ファンによって再建された、そんなチームに移籍を決めた鈴木選手他5名の選手の心の葛藤、夢をあきらめない姿勢を見て、なんだかとても胸がいっぱいになり、心から応援してゆきたい気持ちになりました。 私もファンクラブに登録してきました。
これからもずっとこんな笑顔でいてほしい。
他のチームに移籍した選手、これを機に引退を決めた選手。 どの選手にも今後明るい未来が待っていることを望んでいます。 また、夢を海外で果たすべく旅立っていった選手もいます。 特に SEIBUのエースだった田中豪くんにはドイツでがんばって、子供達のヒーローになってくれたら、と願います。 大きな選手相手にぶつかり合いのアイスホッケーですから、怪我に気をつけて元気でいてほしいです。
アイスホッケーの2009-2010シーズンがいよいよ開幕です。
勢いでグダグダ書いてしまいましたので、わかりにくい部分ご容赦下さい。