仁、そして、皆へ

そこから 聞こえる声
そして 今

割れ目に落ちて4

2012年01月12日 17時11分55秒 | Weblog
夜になっても帰って来なかったから外に出た。
鍵も掛けなかった。
広い道路に出るとごみ収集の看板があった。
その周りにゴミ袋がたまっていた。

部屋とそこを何度も往復した。

ゴミがなくなった。
畳が見えた。
殺風景な部屋だった。

小さな円卓とラジカセがあった。
壁一面に食い込んだような台所に、調理器具あるいは食器らしきものはなかった。
押入れを開けてみると、上の段に外出用の衣装がつるされていた。
下の段はなんだかわからない状態だった。
ゴミの下に隠れていた布団はかび臭かった。
押入れに入りそうな場所はあったが窓際に畳んで置いた。
中がグチャグチャの化粧品の入ったボックスを円卓の上に置いた。
カセットをまとめてラジカセの脇に置いた。
掃除器具が見当たらないので、押入れの下の段からグチャグチャに丸まったキャミソールを取り出して雑巾にした。

自分が何をやっているのか、わからなかった。

何の許可もなく、汚れているものはすべて捨てた。

窓を開けた。
隣の木造アパートの壁がすぐそこにあった。

窓を閉めた。

その夜は帰ってこなかった。