電影フリークス ~映画のブログ~

電影とは、映画のこと。その映画を一緒に楽しみましょう。

埋伏

2019-02-22 07:50:26 | 七十年代作品【1971】

 

 

こんにちは、醒龍です。

レコード・コレクターズ誌2月号はYMO特集ですよ~。昨年40周年を迎えたYMOですが、続々と復刻盤がリリースされるのはうれしいですね。今月も残りの復刻盤が発売されますね。これで寝ても覚めてもテクノですよ!

さて、今回はあの怪作『液体人間オイルマン』(コレ好き)や76年版キングコングに肖った香港&日本コラボの特撮スペクタクル『北京原人の逆襲』、デイビット先生が至善禅師に扮した『少林寺英雄伝』、そしてカンタイの『空とぶギロチン』などで知られる何夢華(ホー・メンファ)監督が71年に撮った『埋伏』です。これはもちろんSBマークでおなじみの邵氏作品です。

ホー・メンファと言えば、あの『Black Magic』シリーズなんかもありますが、そのホー監督がいわゆる降頭系列電影に開眼してしまう前、当時誰もが通ってきた道でありました武侠片を撮っていました。その中の1つがこの『埋伏』なんですね。そうだ忘れてました。カンフー全盛期の『マッドカンフー地獄拳』なんかもそうでした。これは監督らしさ(?)があまり感じられないのでここでは触れませんが、後年はカンフー映画も当然のように撮ってましたね。

同じホー監督の『金毛獅王』(71)にはジェームス・ナムがいましたが『埋伏』とほぼ同じスタッフ、キャストでしたので立て続けに監督は2本の映画を撮っていたんですね。『埋伏』のパッケージ解説によれば"イースタン・ミステリー・ムービー"だそうですので、ただの武侠片とはひと味違う様ですね。

ミステリー要素のある武侠片って珍しいですよね。確か『金毛』は小説でこの『埋伏』の方が引き込まれやすく単純に面白そうですよね。(詳細はのちほど)この映画は71年5月には『埋伏』の新作紹介記事が出てましたので撮影はこの頃ですね。但し、劇場公開は出遅れてしまっているという良くあるパターンです。

この映画の胆、実は悪役のイメージが強烈な趙雄(チャオ・ホン)さんの何と準主演映画なのです。(あくまで表記上の話。。)例えばジミーさんの『吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー』のあとなんかに見ると悪役映画の方がしっくり来るチャオさんのちょっといいトコが見れます。非常に味のある俳優さんなんですよね。彼については『金毛獅王』の回でまた詳しく触れてみたいと思います。

主演の李菁はお人形さんみたいにかわいらしい女優さんでしたね。その通り"娃娃影后"と呼ばれた彼女は昨年惜しくも亡くなってしまいましたが、羅烈の初期のマスターピース『鐵手無情』、あれに若い頃出演してたんですよね。ちょっと古い映画だとあれがダントツに好きでした。ジミーさんとの共演なんかもあったと思いますが、この『埋伏』とかホー監督の映画に出演することも多く、気に入られていたかも知れませんね。

オープニングには前年に公開されたイタリア映画『夕陽のギャングたち』より、そのサントラの中からテーマが選曲されていますね。(曲名は"Rivoluzione Contro")この曲は功夫片のオープニング曲としてよく使われてました(流用)。こっちの西部劇も最高なのですが、コバーンの映画はやっぱり渋くていいですよね。

とにかくモリコーネの楽曲は癒されますよね。心地よい曲が揃ってて疲れた時なんかにゆっくり聴いているとジワーっときて、ついでに映画のシーンなんかも浮かんできて、とってもリラックス出来て最高な気分になりますよね!現代劇になるとまた格調高くなり、必ずと言っていいほどヘビロテしちゃいます。

音楽の話であれば、この映画の題名は当初『十面埋伏』であったのですが、同名で十面埋伏という曲がありますね。有名な中国の古い楽曲の1つですが功夫片でもたまに聴く機会があるかと思います。映画の中でこの曲が使われると非常にドラマティックなシーンとなります。西楚の覇王・項羽と、漢の劉邦の両者の戦いをテーマにしたのが十面埋伏ですね。戦争の最中、漢軍が待ち伏せするのです。しかも怒涛の攻撃で。("十面埋伏"より"四面楚歌"の方が有名ですね。)激戦の末、項羽軍は漢軍に包囲されてしまいます。この琵琶曲は本当に素晴らしい完成度でダイナミクスをしっかり感じさせてくれます。しかし、残念ながら本編では使われることはありません。タイトルが変わってしまったからでしょうか。

では、映画の筋を追ってみましょう。 

ここは鏢頭・樊芝龍(楊志卿)が取仕切る鎮北鏢局である。
威遠鏢局の萬恭武(李鵬飛)と手下の2人(元華、徐忠信)が遠方からやって来た。
萬鏢頭は従弟の樊鏢頭に鏢師を数名貸して欲しいと依頼しに来たのだ。
理由を説明し、樊は承諾した。
そして杜槐(李廣)、雷強(小麒麟)、郭勤の3名が選ばれ鏢頭に同行する事に。

荷車に宝石箱を積んでおり、一行は厳重な体制で宝物を運んでいる。
千絶谷にさしかかると、物陰に隠れて待ち伏せしていた驚くべき者たちがいたのだ。

次の瞬間、その中の一人が矢を放つ。
矢は命中した!敵の奇襲である。
隠れていた者たちは一気に表に出て襲撃を開始した。
この襲撃で萬鏢頭は赤い羽の暗器によって刺され、あえなく倒れてしまう。

やがて、捕頭の萬超凡(趙雄)たちが事件の現場であるへ検証にやって来ていた。
無残な光景だった。無数の死体が横たわり、片足だけ残っていたりもした。

すると超凡は見事な刀を発見する。それは超凡の父が持っていた"金臂刀"であった。
しかし父・萬恭武の死体は無く、行方もわからない。

戸惑う超凡に李都頭(李笑叢)は疑いをかける。
それは萬父子の犯行であるとのダイイング・メッセージが残っていたからだ。

・・・なかなかの展開ですね。

現場検証でチャオさんが真剣に芝居しているうしろで何かしゃべってるのが誰あろう若い頃のサモハンです(笑)。なんかサモハンらしくていいですね。この官服らしい群衆の中には、サモハンや錢月笙、唐偉成(!)、そしてジャッキーの顔が確認できるのはDVDならではですね。古いVHSしかないようなケースだったら顔は絶対にわからんでしょう。

はっきりジャッキーと判るのは冒頭のシーン、王俠や西門三虎と一緒に弓持って待ち構えているのがジャッキーでしたね。珍しくかなりのアップで映るのですぐ判ります。他にも中盤のシーンで超凡を包囲して李都頭の一員として斬りかかる場面、最前列で火鉢が当たる位置にいた人物がそうです(他のアクション場面にも登場します)。これらを見ていると危険なシーンなどを買って出るという感じですよね。

要するにサモハンたち七小福メンバーも参加していた映画ってことですね。当時、徐二牛のグループに属していたのですが、その徐二牛のアクションで忘れてならないのが、ロープ・アクションです。ジャッキーもおそらく影響を受けたらしく以降の映画でも何度か見ることが出来ます。この頃の経験を活かしてその技術を応用したという話になりますね。映画の中でどんなアクションを構築するか。当時からメンバーで考えてそれを実践していたんです。

ロープアクションのシーンは、おそらく設定が日没に近い時間のシーンとなりますが、フィルターがかかっているので見た目は暗くなっています。しかし、よく見れば顔を確認することができます。一人を取り囲んでロープで縛りあげてその周りを回るのですが、下っ端の十数名が囲ってサモハンはロープを持たずに立って様子を監視しているような立場であった事が確認できますね。

では、再開。 

李都頭は超凡を捕らえようとするが無実の超凡は抵抗し、その場を切り抜けることに成功する。物陰からその様子を冷面劍客・康烈(石天)が見ていた。

ここで登場する男前の石天がまたいいですね!!そしてコミカルな役ではなくシリアスな役なのです。この映画での彼のアクションは非常にいいものを出しています。誰のおかげかなと考えると、武師たちの協力があってこそですね。

超凡はとある客棧へ逃げ込んだ。給仕が注文を取り、料理と酒が運ばれてくるが、どうも様子がおかしい。

ワナだ!酒には毒が盛られていたのだ。
回りにいた客たちも超凡を襲う。

序盤の客棧でのバトル・シーン。やっぱり客棧アクションは面白いですよね。『大酔侠』をはじめとしてキンフーの作品群など、要するにハン・インチェの影響があるかと思います。

番頭に扮装していた賊のリーダー・韓沖を演じた詹森(チャン・シェン)はすぐに正体をばらしますが、坊主頭の彼がまた楽しいですね。彼もなくてはならない存在ですよね。ここでまた七小福メンバーが登場します。派手な青い服を着た人物は1階のみで途中から元奎にバトンタッチし、舞台は2階へ移りますが以降その人物は登場しません。元奎は、チャオさんが蹴っ飛ばした刀が刺さって倒れるという大役を果たします。

多数の敵を相手にして苦戦するが何とかその場を脱した超凡だった。 

その後、超凡は敵に囚われてしまうが、康烈に助け出された。息も絶え絶えのまま何とか超凡が鏢局に帰ると、父親の幻影が現われた。怪奇!!


ここでようやく李菁が登場する。
 
実は赤い羽の暗器を使っていたのが父・樊芝龍であった。
樊芝龍は何者かに殺されてしまう・・。
 
洞窟に不気味な姿が!
超凡は従妹の秀秀(李菁)と不気味な地下室に入って行く。
棺を開けて死体を確かめる。

その時、入り口で人影が見えた!すぐ超凡が追いかける。
残された秀秀は、しばらく様子を見ていたがやはり怖くなって逃げようとする。
しかし、中に閉じ込められてしまった。そして、死体が動き出す・・・。

超凡に救出される秀秀。たまたま通りかかった片足が義足の男を目撃する。
超凡の脳裏には即座に千谷で斬られて残された片足が浮かんだ。何と、秀秀はこの男の顔を知っていたのだった。
 
この男の家へ尾行し、事件の真相を追及する超凡。
しかし、白状する前にまたしても赤い暗器によって阻止された。
康烈が現れ、超凡に協力しコンビを組む。暗器それはある高名な3人が使う武器・追魂鏢だった。西門三虎の本拠地へ乗り込んで行く超凡。
 
西門三虎の一人が火星(マース)です。彼はいつもの通りセリフもあるような目立った役をこなしています。また、3人衆のトップが実は程寶山(チン・ポーサン)です。70年代後半のカンフー映画全盛期では、その彼は脇役として顔を出す人ですので、覚えておいて損はないです。
 
ラストは、チャオさんとベテラン俳優・楊志卿(ヤン・チーチン)との風車小屋での8分間の大詰めバトルです。このどこかで見たような機械仕掛けの小屋。ちょっと思い出せませんが、大きな歯車を使ったダイナミックなラストに相応しいセットですね。その後、ミステリーらしく意外な人物が登場し、映画は想いもよらぬ結末を語っていきます。
 
やっとの思いで、宝物箱を取り戻した超凡だった。

が、瀕死の彼の前に秀秀を従えたある人物が現れる。
彼が黒幕だったのか!

 

という訳で今回はミステリー武侠片でした。そして、若きジャッキーカメオ出演のおまけ付き。もう言うことありませんね。(終)



「埋伏」(71) Ambush 

邵氏出品
監督:何夢華
脚本:江揚(江洪)

音楽:周福良 

武術指導: 徐二牛

 

出演者:
李菁 趙雄 楊志卿 王俠 佟林 
江玲 石天 李鵬飛 詹森 陳濠 李廣 彭鵬 

※以前の記事を一部加筆訂正しています。(環境によっては繁体字が文字化けしますのでご注意を。)

 

【サントラ】

Giu' la testa (Edizione speciale 35 anniversario)
クリエーター情報なし
Cinevox

【関連DVD】

夕陽のギャングたち [Blu-ray]
クリエーター情報なし
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

 

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