ひねもすのたりにて

阿蘇に過ごす日々は良きかな。
旅の空の下にて過ごす日々もまた良きかな。

千里走単騎

2010年04月08日 | 中国を思う
先日、阿蘇のレンタルショップでやっと見つけて借りてきた。
「網走番外地」時代からの高倉健ファンとしては、
ほとんど唯一見逃していた映画だった。
見てどうだったかって。もちろん涙しました。
年を取ると、本当に涙もろくなると言うことを実感した。

題の「単騎千里を走る」は、中国仮面劇で演じられる演目の一つで、
それに関わっていく親子を中心に描いた映画である。
もともと、「千里走単騎」は三国志に由来するもので、
劉備元徳の義弟、関羽が宿敵曹操の手に落ちるが、
劉備の妻子を伴い曹操の下を脱出し、劉備のもとへ帰還するという話から来ている。

ジョン=ウー監督で大ヒットした「レッドクリフ(赤壁の戦い)」も三国志が題材で、
その中では、関羽や張飛は戯画的に扱われているが、
関羽は沈着冷静で、義に篤く、中国でも人気の高い人物であり、
そのためか、商いの神様としてあがめられている地方もあるらしい。

さて、映画の内容はともかく、注意してみたのは画面、と言うか、その中の風景である。
夜の麗江の町を歩く高倉健もさりながら、むしろ麗江の町並みの懐かしい香り。
長街宴などの撮影場所となった、束河村の通りや、人の息づかい。
上から見下ろす、昔風の瓦葺きの屋根々々。
郊外の遙か彼方に冠雪した高峰。

それら全てが、旅心をこよなく刺激するのだ。
この映画は、一人の日本人が、
中国の地方に根付いて生きていく人々の親切に出会う数日間を描いた作品でもある。
そういう意味では、関口知宏の中国列車大紀行に通じるものがある。

かっての(いや今でもそうか)日本人のように、
拝金主義者が横行する中国で、急速に失われる人の絆。
主役の日本人親子もさりながら、中国人の親子、そこに住む人々を題材に、
人と人との結びつきを、素朴に結びつくことの大切さを描いた映画でもある。
監督のチャン=イーモウの狙いはともかく、この映画から私が一番感じたのはそこだった。

旅をすると、よく感じることがある。
人と人は、こんなにも率直に話し合え、仲良くなれるのに、
何故、国という衣を身に纏うと、人はそうなれないのか。
人は、国民である前に、人間であるのに。

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