ひねもすのたりにて

阿蘇に過ごす日々は良きかな。
旅の空の下にて過ごす日々もまた良きかな。

中国列車大紀行

2010年04月07日 | 中国を思う
関口知宏という一人の青年が、
春と秋、数ヶ月をかけて中国の列車に乗り継いで旅をする。
彼は、旅の先々で印象に残った風景や出会いをスケッチブックに残していく。
一見漫画的だが、その絵の才能は常人を遙かに超えている。

ギターを持てば、弾き語りで日本の歌を紹介したり、
多方面にわたる彼の才能には羨望を抱いてしまう。
そして、何よりもこの旅を魅力的なものにしているのは彼の感性である。

旅をすれば実に様々な人との出会いがある。
その出会いを、どのようなものにするかは、旅人の心持ち次第なのである。
楽しいものにするのか、気まずいものにするのか、
特に、中国という、日本とはある意味、歴史的認識が微妙に異なる国では殊更に。

日本人と会うのは、彼が最初で、多分最後になるであろう人たちと、
彼はたくさんの出会いをし、
最初は幾分の警戒心を抱かれても、いつか打ち解けていくその様は、
ああ、旅人の有様こそが、旅のあり方を決めるのだと悟らせてくれる。

この旅の最後に、綿花畑の収穫を一人でしている女性がいて、
その収穫を夕暮れになるまで関口は手伝う。
その作業の中で、女性が、
「私は幸せよ。去年より綿花の値段が少し上がったから。」と言う。

彼女が収穫できるのは日に2袋。金額で120元(約1,800円)。
やがて夕暮れになって、夫が迎えに来て、女性は関口に、
「今日は本当にありがとう。」と、はにかみながら別れる。

関口のスケッチブックに、こう書かれていく。
「私は幸せよ、と言える幸せ。」
そう綴ることのできる彼の感性に、私はこの旅以上に惹かれるのだ。

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