人口減の波 大都市にも
国勢調査5年で94万人減 工場地帯、進む空洞化 増える単身高齢者
2016/2/27 3:30 日経朝刊
総務省が26日公表した2015年の国勢調査で、外国人を含む日本の総人口は
1億2711万47人と10年の前回調査に比べ94万7305人減った。大都市の人口減
が始まったことで生産や消費の担い手を膨らませた都市部が地方を補う日本経済の
構図に狂いが生じつつある。女性や高齢者の労働参加が進まなければ2030年の
日本の潜在成長率は0.6%分ほど下がるとの試算もある。初の人口減という新局面
への対応策は待ったなしだ。
「強い危機感を持っている。大阪が一つになって働く場をつくりたい」。1947年の
調査以来68年ぶりの人口減に直面した大阪府の松井一郎知事は語気を強めた。
人口の減少数が多かったのは、パナソニックのお膝元である門真市や町工場が密集
する東大阪市。東大阪市では大手企業の海外への生産移転による受注減や、後継者難
で工場の減少に歯止めがかからない。人口や企業の集積が弱まれば研究開発の力が落ち、
競争力低下にもつながる。
産業空洞化や人口減は大阪に限った話ではない。厚生労働省によると経済成長が
進まなければ14年時点で6351万人だった就業者数は30年時点で5561万人に減る。
この場合、内閣府が足元で0.6%とみている経済の実力を示した潜在成長率を30年時点
で0.5~0.6%分ほど押し下げるとの試算もある。
経済が成長し高齢者や女性の労働参加が進むと想定した試算でも30年時点の就業者数
は6169万人。14年より182万人少ない。労働力が減る中で潜在成長率を高めるには
技術革新などによる生産性向上が欠かせない。
経済界からは「外国人労働力の受け入れ拡大を早急に議論すべきだ」(化学大手)
との声も強い。法務省によると15年6月時点で在留資格を持つ外国人は約217万人。
12年末に比べ14万人ほど増え日本人の人口減少を一定程度和らげている。
もう一つ目を引いたのは、人口増加が続く東京の世帯当たり人数が、単身世帯の増加
などを受けて2.02と「2割れ」間近になったことだ。
「高齢化」と「単身世帯化」が同時に進む首都圏。厚労省によると東京、千葉、埼玉、
神奈川では75歳以上の人口が、10年から25年の間に6~10割増と地方を超えるペースで
急増する。
介護が必要な高齢者を家族だけでケアするのは難しくなる。地域全体で受け皿を整える
「地域包括ケア」の重要性が高まる。
世帯人員が1.65人の東京都豊島区は、特別養護老人ホームの入所待機者が15年末で568人
にのぼる。現在は埼玉県秩父市と連携し、特養の整備や高齢者が健康なうちに地方に移り
住む「CCRC構想」を進める。
高野之夫区長は「特養建設に必要な土地を区内で新たに確保するのは(適地が少なく)
難しい。秩父市と連携して区外での整備を検討する」と話す。首都圏と地方の連携は、
介護の受け皿確保の決定打になるのか。模索は始まったばかりだ。
国勢調査5年で94万人減 工場地帯、進む空洞化 増える単身高齢者
2016/2/27 3:30 日経朝刊
総務省が26日公表した2015年の国勢調査で、外国人を含む日本の総人口は
1億2711万47人と10年の前回調査に比べ94万7305人減った。大都市の人口減
が始まったことで生産や消費の担い手を膨らませた都市部が地方を補う日本経済の
構図に狂いが生じつつある。女性や高齢者の労働参加が進まなければ2030年の
日本の潜在成長率は0.6%分ほど下がるとの試算もある。初の人口減という新局面
への対応策は待ったなしだ。
「強い危機感を持っている。大阪が一つになって働く場をつくりたい」。1947年の
調査以来68年ぶりの人口減に直面した大阪府の松井一郎知事は語気を強めた。
人口の減少数が多かったのは、パナソニックのお膝元である門真市や町工場が密集
する東大阪市。東大阪市では大手企業の海外への生産移転による受注減や、後継者難
で工場の減少に歯止めがかからない。人口や企業の集積が弱まれば研究開発の力が落ち、
競争力低下にもつながる。
産業空洞化や人口減は大阪に限った話ではない。厚生労働省によると経済成長が
進まなければ14年時点で6351万人だった就業者数は30年時点で5561万人に減る。
この場合、内閣府が足元で0.6%とみている経済の実力を示した潜在成長率を30年時点
で0.5~0.6%分ほど押し下げるとの試算もある。
経済が成長し高齢者や女性の労働参加が進むと想定した試算でも30年時点の就業者数
は6169万人。14年より182万人少ない。労働力が減る中で潜在成長率を高めるには
技術革新などによる生産性向上が欠かせない。
経済界からは「外国人労働力の受け入れ拡大を早急に議論すべきだ」(化学大手)
との声も強い。法務省によると15年6月時点で在留資格を持つ外国人は約217万人。
12年末に比べ14万人ほど増え日本人の人口減少を一定程度和らげている。
もう一つ目を引いたのは、人口増加が続く東京の世帯当たり人数が、単身世帯の増加
などを受けて2.02と「2割れ」間近になったことだ。
「高齢化」と「単身世帯化」が同時に進む首都圏。厚労省によると東京、千葉、埼玉、
神奈川では75歳以上の人口が、10年から25年の間に6~10割増と地方を超えるペースで
急増する。
介護が必要な高齢者を家族だけでケアするのは難しくなる。地域全体で受け皿を整える
「地域包括ケア」の重要性が高まる。
世帯人員が1.65人の東京都豊島区は、特別養護老人ホームの入所待機者が15年末で568人
にのぼる。現在は埼玉県秩父市と連携し、特養の整備や高齢者が健康なうちに地方に移り
住む「CCRC構想」を進める。
高野之夫区長は「特養建設に必要な土地を区内で新たに確保するのは(適地が少なく)
難しい。秩父市と連携して区外での整備を検討する」と話す。首都圏と地方の連携は、
介護の受け皿確保の決定打になるのか。模索は始まったばかりだ。