2004年8月8日(日)
#232 エアロスミス「HONKIN' ON BOBO」(COLUMBIA 515447.2)
エアロスミスの最新作。2004年4月リリース。
収録曲を見ていただけるとすぐにわかると思うが、今回は一曲を除き、すべて過去のブルース、R&B、黒人系ロックンロールのカヴァー。
ひたすら、黒い一枚なのであります。
オープニングは「ロードランナー」。おなじみ、ボ・ディドリーのナンバー。
ひたすらやかましく、派手なエアロサウンドが全開。
続くはスマイリー・ルイスの「シェイム、シェイム、シェイム」。ピアノにジョニー・ジョンスンを起用して、オールド・タイミーな雰囲気を出している、ジャンプ・ナンバー。シブ~い。
「アイサイト・トゥ・ザ・ブラインド」はもちろん、サニーボーイIIのカヴァー。
ジョー・ペリーのアグレッシヴなスライド・ギター、そしてスティーヴン・タイラーのハープが聴きもの。
ビッグ・ジョー・ウィリアムスの代表曲「ベイビー、プリーズ・ドント・ゴー」。
速いテンポで、グイグイと押しまくるブーギ。ゴリゴリのディストーション・ギター。中間部には「トレイン・ケプト・ア・ローリン」を思わせる展開も。
原曲のイメージはあとかたもなく、もう完全に、エアロ流ハードロックに消化されている。
最近のエアロは、ステージでもこの曲をレパートリーにしているらしい。
アレサ・フランクリンの「アイ・ネヴァー・ラヴド・ア・マン」をカヴァーした「ネヴァー・ラヴド・ア・ガール」もなかなか。本盤では珍しいバラードだが、そこはさすがタイラー、しみじみとは歌わず、ひたすらフル・テンションでシャウトしまくっている。いや~、ド迫力。バックのメンフィス・ホーンのサポートも◎。
「バック・バック・トレイン」はミシシッピ・フレッド・マクダウェルの作品。
重ったるいビートに、ペリーが弾くハーディ・ガーディ、ドブロのドヨヨ~ンとしたサウンドがじつにマッチして、気分はまさにディープ・サウス。
「ユー・ガッタ・ムーヴ」はCFでもおなじみのナンバー。同じくマクダウェルの作品。
以前、ストーンズがアルバム「スティッキー・フィンガーズ」でこの曲をカヴァーしていたが、それに比べるとパワフルで、攻撃的な音がいかにもエアロっぽい。
ボ・ディドリー風のジャングル・ビートに乗って吹かれる、タイラーの泥臭いハープも、キマってます。
「ザ・グラインド」は彼らのオリジナル。R&Bを基調とした、粘っこいバラードに仕上がっている。
続くは、マディ・ウォーターズでおなじみの「アイム・レディ」。
マイナーにアレンジし直し、スロー・テンポでねちこく演奏される。ペリーの泣きのギターもしっかり聴けます。
「テンパラチュア」は、リトル・ウォルターのナンバー。ピアノは再び、ジョニー・ジョンスン。
うめくような声で歌うタイラー。ふだんのシャウトとは全く趣きが違って、おもしろい。
リトル・ウォルターばりにブロウをきめるタイラー。カッチョえ~。
「ストップ・メッシン・アラウンド(モタモタするな)」は、カヴァー曲中では一番最近の時代に作られたもの。
ピーター・グリーン率いるフリートウッド・マックのナンバー。
原曲のわりとジミな雰囲気とは裏腹に、ハードにドライヴする仕上がり。ペリーが乗りまくってリードを弾いとります。
本ヴァージョンではタイラーが歌っているが、過去のステージでは、ペリーがヴォーカルも担当していたとか。そのくらい、ペリーはマック・フリークだったんですな。
「ジーザス・イズ・オン・ザ・メイン・ライン」は、前出のマクダウェルのレパートリーだが、元々はトラディショナル。
その雰囲気を出すために、すべてアコースティック楽器で演奏。バック・ヴォーカルにはタイラーの次女、チェルシーも加わってレコーディング。この曲については、ライヴ感を出すために、一発録りの方法を使ったようだ。
このアルバム、昨年アメリカが「ブルースの年」だったことから、その一連の企画かと思われやすいのだが、そうではなく、5、6年以上前からあたためていた企画。
やはり、エアロスミスにとっては、ブルース、R&Bは自分の父親、祖父のようなもの。それらなくしては、彼らも存在することさえなかった。
ブルース、R&Bへのリスペクトを常に忘れず、その上で前向きに自分たちの音楽を生み出していく姿勢は、まことに素晴らしい。
エアロファンのみならず、ひとりでも多くの人に聴いてもらいたいものである。
<独断評価>★★★★