2004年8月23日(月)
#236 フォリナー「ベスト・オブ・フォリナー」(ワーナー・パイオニア PKF-5352)
70~80年代、最も成功したバンドのひとつ、フォリナーのベスト盤。82年リリース。
原題の「RECORDS」はレコード(音盤)という意味はいうまでもなく、彼らの「(輝かしい常識破りの)記録」という意味も含んでいるのではないかと思う。それくらい、スーパー・ヒット揃いの一枚なのである。
いまではほとんど話題に上ることもないフォリナーだが、このアルバムがカヴァーしている77年から82年までに、2000万枚以上ものアルバムを売り上げている。当時は、とんでもない超人気バンドだったのである。
ひさびさにこの一枚を聴いて、その人気の秘密を探ってみた。
フォリナーは77年にアルバム「栄光の旅立ち」、シングル「衝撃のファースト・タイム」でデビュー。
以来、82年までに13枚のシングルをリリース、うち10枚をビルボードのトップ20に叩き込んでいる。
その記念すべきファースト・シングルにして最初のヒット「衝撃のファースト・タイム」だが、いま聴いてみると、ハードロック・バンドという彼らのイメージに反して、バンド演奏よりはむしろヴォーカルとコーラスに力点を置いた作りだなと感じる。
77年の2ndシングル「つめたいお前」や78年の5thシングル「ダブル・ヴィジョン」、あるいは79年の8thシングル「ヘッド・ゲームス」にしても、演奏はむろんハード&へヴィーなのだが、それ以上にヴォーカルの迫力、メロディの魅力を前面に押し出している。
ルー・グラムという実力派シンガーの、卓越した切れ味をいかに生かすか、そのへんを常に意識して練り上げられたサウンドだと思う。
当時のハードロックにおいては、楽器演奏の派手さで目立とうとするバンドが多かった中、これは少し異色だったかもしれない。
曲も極力長くなり過ぎないようにアレンジしており、ほとんどのシングル曲は3分~4分台とキャッチーにまとめられている。
半分イギリス人のメンバーだったこともあって「フォリナー」と名乗った彼らだが、アメリカ人の音楽の好みを実によくつかんでいたと思う。
音はあくまでもハードロックなれど、曲はきわめて覚えやすく、ヒット性の高い作り。高い人気の秘密はそのへんにありそうだ。
また、バラード・ソングも得意なのが、彼らのもうひとつの強みだろう。たとえば、81年の11stヒット、「ガール・ライク・ユー」がそうだ。もちろん、フォリナーなりのメリハリのはっきりしたヴォーカルとサウンドという味付けはあるのだが、メロディアスで非常にしっとりとした仕上がりになっている。
事実、アップテンポ系の曲以上に、この手の曲の人気は高く、「ガール・ライク・ユー」はチャート2位までクリアした。このときの1位はオリビア・ニュートン・ジョンの「フィジカル」というスーパーヒットだったため、惜しくも2位止まりだったが、彼らの底力を見せつけたヒットだったのは間違いない。
84年にも彼らは「アイ・ウォント・トゥ・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」というバラードでそれをしのぐヒット(唯一のチャートNo.1)を達成している。
決して派手さのないバラードで、それだけのセールス記録を打立てたこと。まさに実力の証明といえよう。
一方、ひたすらハードなドライヴィング・ナンバーのカッコよさも、忘れてはなるまい。
78年の4thシングル「ホット・ブラッディッド」はまさに、その手の曲の代表。へヴィーなリフが印象的なだけでなく、グラムの鋭い超高音ヴォーカルがキマっている。
79年の7thシングル「ダーティ・ホワイト・ボーイ」、82年の12ndシングル「ジューク・ボックス・ヒーロー」なども、ハード路線をひた走るナンバー。聴いているだけで、体中の血液が沸騰しそうな熱さだ。
レッド・ツェッペリン、バッド・カンパニーらの方法論を踏襲し、ブリティッシュ・ロックの香りを保ちながらも、アメリカのリスナーたちの好みにもピッタリとフィットしたサウンドで、大ブレイクした彼ら。
その一番「旬」のころの音がたっぷり楽しめる一枚。何十年経とうが、いいものはいい。ぜひ、再聴をお薦めしたい。
<独断評価>★★★★☆