2005年2月5日(土)
#259 リッチー・ヴァレンス「LA BAMBA」(STARLITE CDS 51021)
夭折のロックンローラー、リッチー・ヴァレンスのコンピ盤。90年リリース。
41年LAに生まれたヴァレンスは、メキシコ人とインディアンの血を引いている。本名リチャード・ヴァンスウェイラ。
いわゆる「チカノ」である彼は、非アングロサクソン系の白人ロッカーのハシリ的な存在といえる。
デビュー・シングル「カモン・レッツ・ゴー」(58年)がスマッシュ・ヒット。続く「ドナ/ラ・バンバ」が両面ヒットして、人気を不動のものとする。
しかし、翌59年2月、バディ・ホリーらと共にツアー中、飛行機の墜落事故で急逝。なんと17才の若さであった。
本盤はそんな彼の、少数民族出身としての個性が発揮されたナンバーを20曲収録。彼のレコーディングした曲の大半がカヴァーされている。
同題映画の主題歌ともなった「ラ・バンバ」を聴けば、彼の音楽がいかにユニークな存在だったかがよくわかる。
ハイトーンで高らかに歌い上げるそのヴォーカル・スタイル、ラテン風リズム、あるいは非英語による歌詞。ロックンロールとラテン・ミュージックの見事な融合といえるだろう。
循環コードのシンプルな繰り返し、ストレートなビート。根っから陽性なそのサウンドは、現役のティーンエージャーならではのものだ。
「ドナ」や「イン・ア・ターキッシュ・タウン」「ウィ・ビロング・トゥゲザー」のようなバラードで見せるリリシズムもまたいい。そのなめらかな美声に、正統派ポップシンガーとしてのヴァレンスの顔を見出すことが出来るだろう。
だがやはり、彼の本領は「カモン・レッツ・ゴー」「ザッツ・マイ・リトル・スージー」「ドゥービー・ドゥービー・ワウ」のような、威勢のいいアップテンポのロックンロールだろうね。
筆者が個人的に気に入っているのは、アルバム最後の「ボニー・モロニー」だな。そう、ラリー・ウィリアムスの大ヒット曲のカヴァーだ。
白人のヴァレンスには、R&B臭がさほど感じられないが、この曲は別だな。うねるようなグルーヴが最高である。
バックもノリがすごくいい。特にブリブリにドライヴするベースとか。ジョニー・ウィンターのヴァージョンあたりと並んで好きである。
もし彼が(バディ・ホリーもそうだが)、事故に遭わず生き続けていれば、どれだけ名曲を送り出せたことだろう。想像もつかない。
返す返すも残念だが、彼の音楽はビートルズをはじめとする、後の多くのビート・グループ、ポップ・グループに有形無形の影響を与えているように思う。いまだって、彼の「遺伝子」は生き続けているのだ。
ティーンエージャーが、自らの生活実感をそのまま曲に書き、自らがギターを弾いて歌う。今日ならしごく当たり前のことだが、そういうスタイルは白人ではヴァレンスやホリーらによって、ようやく一般的なこととなったのだ。
偉大なる先駆者、リッチー・ヴァレンスの残した数少ない遺産。それらを聴くたびに、僕らはそこに、凝縮されたロックンロールの本質を感じることだろう。
<独断評価>★★★★