NEST OF BLUESMANIA

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音曲日誌「一日一曲」#167 ジュニア・ウェルズ「Shaky Ground」(Everybody's Gettin' Some/Telarc)

2023-09-15 05:30:00 | Weblog
2011年4月2日(土)

#167 ジュニア・ウェルズ「Shaky Ground」(Everybody's Gettin' Some/Telarc)





早いもので、もう4月だ。新年度に入っての第一弾はこれ。ジュニア・ウェルズ、95年のアルバムより。ジェフリー・ボゥーエン、アルフォンソ・ボイド、エディ・ヘイゼルの作品。

ウェルズは98年に63才で亡くなっているから、これは最晩年の作品といえるだろう。この後、97年にライブ・アルバムを出してそれが遺作となったので、スタジオ録音としてはこれがラスト。

ボニー・レイット、カルロス・サンタナ、サニー・ランドレスら有名ゲストも多数よび、アル・グリーンのような他のアーティストのカバーを多数やっているのが、本アルバムの特徴。きょうお聴きいただく「Shaky Ground」も、オリジナルはテンプテーションズだ。曲を作ったのはPファンク軍団のエディ・ヘイゼルらの面々。

したがって、サウンドは極めてファンク。のっけからスラップ・ベースが景気よくはじけて、テンションが一気に上がる。

ウェルズの辛口でラフなシャウトが、またこの曲調にぴったり。お得意のハープ・ソロでもカッコいいところを見せてくれる。

ウェルズは活動期間が長かっただけに、サウンド的には相当幅が広いアーティストだ。アコースティックなブルースもやれば、もろファンクな音も聴かせる。

この曲の元ネタのテンプスだって、同様だ。多くの一般リスナーにとってみれば「マイ・ガール」のテンプスであって、甘甘なバラードばっかり歌っているような印象があるのだろうが、実際にはサイケデリックなサウンド、ファンクなサウンドなどさまざまな試みを60年代~70年代に行っている。

つまり、息の長いアーティストはたいてい、出世魚のように何回は作風の変化を見せるってことだ。何も変化できないようなら、時代に取り残されていく、そういうものなのだ。

ウェルズはジェームズ・ブラウン、スライ・ストーンなどと並んでブラック・ミュージックのパラダイムを大きく変えたひとと言われている。ブルースが出発点ではあったが、そのひとつのジャンルにとどまることなく、ジュニア・ウェルズ自身がひとつのジャンル、といえるような広がりを見せた。われわれ日本人にはピンと来ないかもしれないが、結構スゴい人なのだよ。

なお、余談だがこの曲、ウェルズに先立って94年、エルトン・ジョンとドン・ヘンリーがデュエットでカバーしている(「デュエット・ソングス」に収録)。聴き比べてみるのも一興でっせ。