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音曲日誌「一日一曲」#168 グレイトフル・デッド「Walkin' Blues」(Without a Net/Arista)

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2011年4月10日(日)

#168 グレイトフル・デッド「Walkin' Blues」(Without a Net/Arista)





アメリカのロック・バンド、グレイトフル・デッド、90年リリースのライブ・アルバムより。ロバート・ジョンスンの作品。

グレイトフル・デッドは65年サンフランシスコにて結成、95年に解散している。30年の歴史を持つ、老舗バンドだった。

グループの中心だったのが、ギター、スティール、ボーカル、作曲をつとめたジェリー・ガルシア。95年の彼の急死により、その活動は幕を下ろさざるをえなかったのである。

グレイトフル・デッド、通称デッドといえば、カントリータッチの曲調でよく知られている。彼ら自身の曲ではないが、ガルシアがペダル・スティールで参加したCSN&Y「Teach Your Children」みたいなカントリー調の印象が強い。彼ら自身の曲でいえば「Till The Morning Comes」「Sugaree」とか。たしかに、白人バンドだけに、その傾向は間違いではない。

とはいえ、デッドにはもうひとつの側面もある。彼らはもともとはジャム・バンド、すなわちブルースロックのバンドの性格も濃かった。デッド、バッファロー・スプリングフィールド、CSN&Yといった西海岸のバンドに共通していえることだが、黒人音楽やラテン音楽などに強い影響を受けて、白人音楽との融合を試みたバンドが多かった。

で、きょうの一曲も、デッドの「ジ・アザー・サイド」的なサンプル。89年から90年にかけてのライブを収録した、デッド活動期中のライブアルバムとしては最後のものからだが、ロバート・ジョンスンの代表曲を取り上げているのだ。

これを聴いてみると、他アーティストの同曲のパフォーマンスをなんとなく思い出す。そう、ポール・バターフィールドである。

バターフィールド・ブルース・バンドがセカンド・アルバム「East - West」においてこの曲を取り上げたのが、66年。白人がこの曲をカバーした、ハシリだったといってよいだろう。

それ以後、西海岸を中心に、この曲はジャム・バンドの定番になっていったといえる。バターフィールド後年のバンド、ベター・デイズ、先日も当欄で取り上げたクイックシルバー・メッセンジャー・サービス、そしてこのデッド。いずれもバターフィールド・ブルース・バンドの演奏スタイルを基本にして、それぞれの個性を加味した演奏を聴かせてくれる。

ことにデッドはライブバンドとしての評価が高いだけに、このライブ・バージョンは非常に見事な出来ばえだ。

スライドと手弾き、2本の達者なギターを主軸に、オルガンがからみ、奥行きの深いサウンドを構築している。

ボーカルにしても、演奏にしても、黒人のブルースとはまたひと味違った、繊細な味わいがある。

デッドは、同時期の、もう少しテンポの遅いバージョンの演奏を「Dozin' at the Knick」(96)というライブ・アルバムにも残している。ギター・アレンジとか微妙に違っていて、興味深い。

ロックというフィルターを通した、白人バンドならではの解釈、アレンジから逆に、黒人ブルースの本質がかいま見えてくるように思う。ぜひ聴いてみて。