1月5日夜、鳥瞰図研究の第一人者・藤本一美氏から電話があっ
た。私が昨年11月に尾道市周辺の吉田初三郎、前田虹映の原画
を探していて偶然、尾道市世界遺産推進の方が調べて教えてくれ
たのが、10代で初三郎の弟子となり、戦争を経て戦後は日本画
を本格的に学び院展に連続6年入選するなど活躍した、香川県
豊島出身の画家・寺本左近(本名:寺本郷史)の鳥瞰図肉筆原
画である「福山市鳥瞰図」だ。
藤本氏は私の情報を確かめに4日に原画のある福山市福寿会館
へ伺い、原画と対面したと嬉しそうに語ってくれた。藤本氏は
現在東京都立大の講師をしているが、郷里が鳥取なので里帰り
ついでに立ち寄ったという訳である。
左近は戦後、地元の銀行勤務を経て日本画家となるべく独立。
日本画を学ぶ傍ら、食べるためにと初三郎の弟子時代(15歳か
ら20歳まで青森県種差の工房)に身につけた鳥瞰図作成技術で
郷里に近い瀬戸内海沿岸の各地方都市から依頼を受けて食べ繋
いだ。昭和30年代前半まで、観光や産業のパンフレットには
鳥瞰図がつきもので、写真中心のパンフレットが主流になるに
つれて廃れたが、ひとつの日本文化であった。
藤本氏によれば左近の原画は日本画作品は屏風絵などが香川県
の博物館等に納められているが、鳥瞰図作品の原画は未だ見つ
かっていなかったとのこと。問題の「福山市鳥瞰図」は印刷物
は私も藤本氏も未見。藤本氏が現地で聞き取りしたところによ
れば、展示されている福寿会館を所有していた福山通運創業者
の渋谷氏が市へ建物ごと寄贈した際にあったそうで、福山市が
鳥瞰図作成を依頼した様子が無いことから、渋谷氏が直接依頼
したものではないかとのことである。
実は私も11月に現地を訪れ、玄関から入って正面に掲額されて
いる原画を観てきたのだが、美術館等ではないため保管状況は
あまり良くなく、今後の痛みが心配される。できれば美術館や
博物館に収めて保存してもらいたいものである。日本画家とし
て大成した左近の作品としても、初三郎鳥瞰図を継承する絵師
の作品としても、そして描かれた昭和27年当時の福山市の町並
の記憶としても大変価値のあるものである。
左近の原画は、前田虹映の「尾道市」原画を探す中で偶然発見
できたものだが、その虹映の「尾道市」原画もひょっとすると
発見できそうな雰囲気になってきた。虹映は高松市から福山市
に本拠を移した景勝出版社を舞台に昭和18年まで作品を発表し
続けており、この界隈をさらに調査する必要がある。今年は楽
しみが増えそうだ。
た。私が昨年11月に尾道市周辺の吉田初三郎、前田虹映の原画
を探していて偶然、尾道市世界遺産推進の方が調べて教えてくれ
たのが、10代で初三郎の弟子となり、戦争を経て戦後は日本画
を本格的に学び院展に連続6年入選するなど活躍した、香川県
豊島出身の画家・寺本左近(本名:寺本郷史)の鳥瞰図肉筆原
画である「福山市鳥瞰図」だ。
藤本氏は私の情報を確かめに4日に原画のある福山市福寿会館
へ伺い、原画と対面したと嬉しそうに語ってくれた。藤本氏は
現在東京都立大の講師をしているが、郷里が鳥取なので里帰り
ついでに立ち寄ったという訳である。
左近は戦後、地元の銀行勤務を経て日本画家となるべく独立。
日本画を学ぶ傍ら、食べるためにと初三郎の弟子時代(15歳か
ら20歳まで青森県種差の工房)に身につけた鳥瞰図作成技術で
郷里に近い瀬戸内海沿岸の各地方都市から依頼を受けて食べ繋
いだ。昭和30年代前半まで、観光や産業のパンフレットには
鳥瞰図がつきもので、写真中心のパンフレットが主流になるに
つれて廃れたが、ひとつの日本文化であった。
藤本氏によれば左近の原画は日本画作品は屏風絵などが香川県
の博物館等に納められているが、鳥瞰図作品の原画は未だ見つ
かっていなかったとのこと。問題の「福山市鳥瞰図」は印刷物
は私も藤本氏も未見。藤本氏が現地で聞き取りしたところによ
れば、展示されている福寿会館を所有していた福山通運創業者
の渋谷氏が市へ建物ごと寄贈した際にあったそうで、福山市が
鳥瞰図作成を依頼した様子が無いことから、渋谷氏が直接依頼
したものではないかとのことである。
実は私も11月に現地を訪れ、玄関から入って正面に掲額されて
いる原画を観てきたのだが、美術館等ではないため保管状況は
あまり良くなく、今後の痛みが心配される。できれば美術館や
博物館に収めて保存してもらいたいものである。日本画家とし
て大成した左近の作品としても、初三郎鳥瞰図を継承する絵師
の作品としても、そして描かれた昭和27年当時の福山市の町並
の記憶としても大変価値のあるものである。
左近の原画は、前田虹映の「尾道市」原画を探す中で偶然発見
できたものだが、その虹映の「尾道市」原画もひょっとすると
発見できそうな雰囲気になってきた。虹映は高松市から福山市
に本拠を移した景勝出版社を舞台に昭和18年まで作品を発表し
続けており、この界隈をさらに調査する必要がある。今年は楽
しみが増えそうだ。
『地図中心』no.415「寺本左近(郷史)の略年譜・作品譜」拝読させていただきました。
寺本左近(郷史)の郷里、香川県豊島には『豊島鳥瞰図』が2点あります。1949年(豊島公民館)と1974年(豊島小学校)の年代が記された作品です。一度豊島を訪問してみて下さい。
ふじいひろし拝
嬉しい書き込みありがとうございます。
讃岐方面へは秋に足を運ぶ予定です。
ぜひ時間を作って豊島まで伺いたいと思います。
それにしても74年の作品があるとは驚きです。
地図中心記事の執筆者・藤本氏にも伝えますね。
藤本氏が企画を手伝った鳥瞰図展は埼玉の博物館で開催中。
mapfan@ますだ
早速のお返事ありがとうございます。
ご存知の通り、豊島は日本最大規模の産業廃棄物不法投棄事件と闘ってこられた場所です。
この1949年の『豊島鳥瞰図』にはまだごみのこない時の産廃現場、島の呼び名では「水が浦」がまだ美しかった頃が描かれています。
こちらもとても貴重におもっております。
藤本さまにもどうかよろしくお伝え下さい。
藤井弘(福山の近くのおかやま人)拝
貴重な解説ありがとうございます。藤本一美氏へ伝えたところ、8月お盆の里帰り(鳥取)の折に立ち寄ろうとのこと。
豊島の原画はご遺族も把握されていないそうです。
作品目録の完成へ向け、瀬戸内海沿岸の他の作品も見つかる
期待が出てきました。
mapfan@ますだ
以下の展覧会で島の方々のご協力をえて、
豊島のことも発表致します。
http://www.city.kurashiki.okayama.jp/kcam/exhibition/exhibition.html
豊島では郷史画伯の弟さんご夫妻が事情をお詳しいです。
(わたしは奥さんとすこしお話をさせていただきました。)
じつはわたしは『豊島鳥瞰図』(1949)の現物を見るまで、
郷史画伯についてなにも知りませんでした。
しかし素晴らしい人がいるものだ...と感心しました。
ますださま、藤本さまのご研究のご盛栄、お祈りしております。
(ちなみにわたしは"空飛ぶ浮世絵師"
五雲亭貞秀が好きなものです 笑)
非常に勉強になる書き込みで驚きました。
寺本郷史にこれからも興味を持ってもらえたら
光栄です。
寺本郷史様は初三郎のお弟子さんの中でも特に「信念の人」
という印象を強く持ちます。画壇で大成される以前、下積み
時期の鳥瞰図作品発掘が少しでもできればと思っております。
瀬戸内海をはさみ香川・岡山を中心に予想よりもたくさんの
鳥瞰図を描かれているようです。
寺本さんの作品は展示しておりませんが、初三郎工房時代に
創作を手伝ったと思われる鳥瞰図も展覧会で展示しております。
美しき九州の旅展覧会案内サイト