記憶探偵〜益田啓一郎のブログ(旧博多湾つれづれ紀行)

古写真古地図から街の歴史逸話を発掘する日々。ブラタモリ案内人等、地域の魅力発掘!まち巡りを綴ります。

久々の船旅が悪夢に…

2006年12月14日 22時44分26秒 | 演劇・音楽
2006年11月17日、仕事を終え家族で小倉・砂津港へ向かった。
家族皆、映画や芝居好きで、玄人筋では大人気だった本広克行監督
「サマータイムマシーン・ブルース」や今年公開の「UDON」が
撮影されたロケ地巡りが目的の旅であるが、今回は関西汽船で小倉
から松山へ渡り、うどん店のハシゴや善通寺など名刹巡りも楽しみ
にしていた。

車での移動と利便性から船はよく使っている。今回もフェリーで早
朝に松山へ着けば、車での移動も楽なので選んだのだ。
せっかくの船旅であったが、この選択が悪夢へと繋がろうとは、こ
の地点では全く想像していなかった。
この日、私たち家族が見た光景はまるで映画「The有頂天ホテル」
そのものだったのだ(笑)。

夕食後の午後9時前、予定通り関西汽船「はやとも丸」に乗り込み
9時55分出航の予定であった。乗船し一等客室に入ると、先に乗
船した方々はすでにお酒を飲んだり歓談したりと賑やかな雰囲気。
私もいつもならすぐにお酒を飲むのだが、この日はほぼ徹夜明けで
少々きつかった事もあって「お茶にしよう」と自粛したのである。

出航直前の午後9時40分、船内アナウンスで「巌流島付近で船同
士の衝突事故発生。救助のため関門海峡は一時的に閉鎖されたため
出航が送れます」と流れた。
この時にはまだ船内も乗務員も和やかな雰囲気は残っており、「ど
うせすぐに出航だろう」と思っていたのであるが…

午後11時を廻った頃から船内の空気が変わる。「おい、明日の朝
7時には今治まで走らせないかんにゃが、いつ出るんや」と長距離
トラック運転手たちがまずイラ立ち始めた。早朝5時に松山へ着く
この船は、トラック運転手もたくさん載っている。

案内係の説明は「閉鎖が解除され次第出航しますので…」のみ。ど
うやらめったに閉鎖で出航できない事などは無いようだ。出航直前
の事故のため、すでに船内には満杯にトラックや自家用車が詰め込
まれている。時間が気になる乗客の中には「降りるから車を出させ
ろ」という方々も増えてきた。

午後11時40分過ぎ、館内放送で「明け方まで出航不能」のアナ
ウンス。船長らしきその声は震えていて、半分くらい何を言ってい
るのか判らないほど…。ベッドに横になり仮眠していた私も飛びお
き、案内所へと向かう。

すでに案内所には大きな人だかり。「どうするんだ」「早く車を出
させろ」「本当に朝になったら出航するのか」と怒りの声が飛び交
っている。船長は必死に「下船希望者はこれから下船準備をします
ので、しばらくお待ちください。お車で乗船の方は、下船される方
のために、このまま乗船待ちされる方も一旦、車を下ろしてくださ
い。ご協力お願いします」と説明を繰り返す。

下船が決まり、船の向きを反転して前から車を下ろすという。半数
以上の乗客が下船準備を始めた。そんな中、問題は大半の方々が酒
を飲んで酔っている事。本当に運転して大丈夫なのだろうか、と思
う状態の方も多い。

一種のパニックになっている船内には、観光バスで長崎から香川へ
向かう団体もいた。ツアーガイドやバス運転手も大変だ。早朝ゆっ
くりと観光地を巡る予定が、これから準備してバスで移動しても、
四国へ渡れるのは8時過ぎになりそうな時間である。

トラックの運転手の中には、肝を据えてそのまま居座る方も多い。
週末を郷里で迎えようと乗船している風のサラリーマンやOLの姿
も多いが、皆一様に疲れの表情が出てきている。

そんな中、自慢のデジタルカメラでその騒動を写真に納める無神経
な観光客。私も含め周囲にいる人間がしかめ面をしているにも関わ
らず、楽しそうに船内風景や苦悩する乗客や船員の表情をカメラに
納めている。どこにでもこういう輩はいるものである。

余談だが、私は仕事柄かこんな状態に陥っても客観的に物事を観察
する癖がある。妻も娘も疲れの表情、私自身もほとんど寝ておらず
このまま下船して四国へ自動車道を走るのか、それとも諦めて福岡
へ戻るのかの選択をせまられている。迷ったが、すでに18日の予
定で2件ほど現地で約束をしていたため、体力勝負になるのを覚悟
で山陽道を走ってしまなみ海道経由での四国行きを決めた。

時間はすでに18日2時。ようやく自動車の下船が始まり、順番待
ちの後で下船、ターミナルで運賃の払い戻しを受けたが、乗客は皆
疲れ切っていた。私たちは高速道をほぼ休み無しで走ったが、結局
今治へ渡った時には朝9時近くであった。ニュースで後で知った事
だが、結局18日は朝になっても船は出ず、それどころか18日も
欠航したそうだ。

関門海峡閉鎖の怖さと、いざという時の交通機関の危機管理能力を
あからさまに体験した夜であった。泥酔した方々はどうなったので
あろうか。無神経なカメラマンは?夜通しバスを運転する羽目にな
った観光バスの運転手は。ツアー客は?

私たち家族は善通寺市にある四国学院大の「サマータームマシーン
ブルース」ロケセットを予定通り見学したが、途中立ち寄る予定だ
った観音寺や金比羅山などは全て素通り。昼からは天気予報が外れ
て雷雨となったため、夕方早くに宿泊地である倉敷市へと渡った。

ロケ地巡りの話は次回。

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