marcoの手帖

永遠の命への脱出と前進〔与えられた人生の宿題〕

坂口安吾と矢田津世子

2022-07-26 16:25:18 | #日記#手紙#小説#文学#歴史#思想・哲学#宗教

 このくそ暑い今日の日、短パンひとつで二階の本を整理していたら坂口安吾の「堕落論」の文庫が出て来た。なぜに彼の本があるのか。書き損じの原稿を丸めて周辺に沢山ちらかし、丸眼鏡をかけ飯台の前で頭を掻きむしりながら煩悶している安吾の写真を見てから、どうも僕の心情とはまったく違う作家だと思っていたので。彼の本は買った記憶がないが、堕落という表題に引かれたのだろう。栞が挟まれた箇所を見ると・・・

”戯作者文学論”という項目の7月14日(晴)と15日(晴)に津田津世子のことが書かれていた。その日も猛暑で水風呂に何度も入った、という記事から始まっていた。

僕の田舎の山手に、ひそやかな誰も来ない川の流れる避暑地にいく途中や、五月には山菜取りの途中に昼食に立ち寄る五城目町の五城館というレストランの中に矢田津世子文学記念館が併設されている。若い時の写真で秋田美人である。そこには坂口安吾からの葉書も展示されている。・・・文庫本の安吾のその個所を読んでみる。(素子という名前は、安吾が自分の作中の女の名。)

*****

◆7月14日(晴)・・・この素子に私は、はっきり言ってしまおう。矢田津世子を考えていたのだ。この人と私は恋こがれ、愛し合っていたが、とうとう結婚もせず、肉体の関係もなく、恋こがれながら、逃げあったり、離れることを急いだり、まあ、いいや。だから、私は矢田津世子の肉体などは知らない。だから、私は、私の知らない矢田津世子を創作しようと考えているのだ。私の知らない矢田津世子、それは私の知らない私自身と同様にたいせつなのだと思うだけ。私自身の発見と全く同じことだ。私はしかし、ひどく不安になっている。どうも荷が重すぎた。私は素子が恋をするような気がするのだが、それを書けるかどうか、私は谷村の方を主人公にして、それですませたい。私は素子がバカな男と恋をするような気がして、どうにも、いやだ。こんなことが気にかかるというのは、いけないことだと考えている

◆7月15日(晴)・・・昨日、私は、素子は矢田津世子だと言った。これは言い過ぎのようだ。やっぱり素子は素子なのだ。手を休めるとき、あの人を思い出す、とても苦しい。素子はあまり女体のもろさ弱さみにくさを知りすぎているので、客間で語る言葉にはならないのではないか、と書いた。あの人の死んだ通知の印刷したハガキをもらったとき、まだ、お母さんが生きていられるのがわかったけれども、津世子は「幸うすく」死んだ、という一句が、私はまったく、やるせなくて、参った。お母さんは死んだ娘が幸うすく、と考えるとき、いつも私を考えているに相違ない。私はもちろん、葬式にも、お悔みにも、墓参にも行かなかった。

今から10年前、私が31のとき、ともかく私たちは、たった一度、接吻ということした。あなたは死んだ人と同様であった。私も、あなたを抱きしめる力など全くなった。ただ、遠くから、死んだような頬を当てあったようなものだ。毎日毎日、会わない時間、別れたあとが、悶えて死にそうな苦しさだったのに、私はあなたと接吻したのは、あなたと恋をしてから5年目だった。その晩、私はあなたに絶縁の手紙を書いた。私はあなたの肉体を考えるのが恐ろしい、あなたに肉体がなければよいと思われて仕方がない、私の肉体も忘れて欲しい。そして、もう、私はあなたに二度と会いたくない。誰とでも結婚してください。私はあなたに疲れた。私は私の中で別のあなたを育てるから。返事もくださるな、さようなら、さようなら、そのさようならは、ほんとにアデューという意味だった。そして、それから私はあなたに会ったことがない。・・・・私はあなたが死んだとき、私はやるせなかったが、爽やかだった。あなたの肉体が地上にないのだと考えて、青空のような、澄んだ思いもありました。・・・・

私は筆を休めるたび、あなたを思い出すと、とても苦しい。素子の肉体は、どうしても、汚い肉欲の肉体になってしまう。素子は女体の汚さ、もろさ、弱さ、みにくさを知りすぎているので、客間で語る言葉にならないのではないか、と書いて、筆を投げ出したとき、私はあなたの顔を切なく思い続けていた。あなたは時々、横を向いて、黙ってしまうことがあった。あのとき、あなたは何を考えていたのですか。

素子は矢田津世子ではいけない。素子は素子でなければいけない。素子は素子だ。どうしても、私は、それを、信じなければならない。私は4枚書いた。筆を投げ出してしまう方が多いのだ。

*****

◇注釈:矢田津世子・・・明治40年ー昭和19年(1907-1944)。小説家。秋田県南秋田郡五城目町生。私立麹町高女卒業。『日暦』『人民文庫』の同人となり、「神楽坂」が『人民文庫』創刊号に載って出世作となった。代表作に「茶粥の記」「家庭教師」などがあり、『文学界』『改造』などに作品を発表。『中央公論』から原稿の依頼があった時には、もう肺患がつのって執筆不可能となり、38歳で死んだ。彼女は凝り屋で、繊細な感情と技巧を持ち、文芸復興の掛け声の高かった時勢に、市井を描いて客観的な作風を志した。戦争中『婦人倶楽部』の特派員として、大陸にも出かけている。坂口安吾は片思いで彼女に恋をし、悶々とした一時期を持っている。

今度、田舎にいったら又、立ち寄ってみよう。・・・


(その2)善👽のセンターができるまで:神、悪魔と人の原罪のお話

2022-07-26 10:16:28 | #日記#手紙#小説#文学#歴史#思想・哲学#宗教

 人がこの地上に創造され、適応させるためにずいぶん長い時間を要した。試験期間、宇宙船のラボ(実験室)では実にうまくいった訳だったのだが。創世記1:1には、”・・・天地を創造された。” とあるでしょう。これは、アクアリウムやテラリウムという具合に実験場ではうまくいったことを示している。しかし、それから、この星(地球)に適応するかどうかの試験期間がこれまた、とほうもなく必要だったわけだ。

宇宙歴時間の6日目に人をこの地球に、神の似姿に創造されたわけだが、地球内で自己完結するようにそのシステムを構築するにあたっての手順が、第一日目から象徴的にシンボライズされて書かれている訳。

創世記の1章から2章までのところにおいても、いろいろ想像を掻き立て多くの書物が書かれて、本当に今の人間界の一週間であるとか、人はサルから進化したものであるなど、進化論はあるやなしやが大きな問題となったりする。

人は、創造者から鼻に息を吹き込まれ生きる者になった。で、この星は実にまれな貴重な星なのだ。この途方もなく広い宇宙に、自己完結型にアクテラリウムが存在しえる実にユニークな星だったから。それで初めての地上の人、アダムに助け手としてエバを与えて地上に住まわせたときに、創造者は忘れてはいけない約束を与えられた。

それが住まわせられた園の中央の木で、”命の木” と ”善悪の知識の木” を生えていたんだが、”善悪の知識の木”の実を食べてはいけないと仰せられた、という。死んでしまうから・・・・。ところが、エバは悪魔(天上から地上に落とされた天使で、悪い宇宙人と一応書いておく)にそそのかされて、その実を食べてしまう。

そもそも、善悪の知識の木の実を食べてはいけない、と言われたのは、初めの人アダムだけだったのだ。このとき、エバはまだ、いない、と創造の順番ではそう書かれている。きっと、エバはアダムから神からの禁止事項を聞いていたんだな。

しっかり、エバに話していなかったのか、頼りないと思われたアダムより狡猾な蛇の方がそれは魅力があったのだろう、その蛇にエバはだまされてしまう。「死ぬことなんかないよ。神様のように目が開かれて賢くなる。」と。・・・それでアダムも勧められて一緒に食べてしまう。人の命に死が介入した。・・・

人を創造した神と創造された人と、神相当の役割を持っていた天使の長(まったく神と同等の権威、権限を持たんとして嫉妬し堕天使となり地上で悪魔となった)のこの話が、地上のドラマのすべての始まりとなっている。その部分を読んでみよう。

*******(創世記3:9-19)

主なる神はアダムを呼ばれた。

「どこにいるのか。」

彼は答えた。

「あなたの足音が園の中に聞こえたので、恐ろしくなり、隠れております。わたしは裸ですから。」

神は言われた。

「お前が裸であることを誰が告げたのか。取って食べるなと命じた木から食べたのか。」

アダムは答えた。

「あなたがわたしと共にいるようにしてくださった女が、木から取って与えたので、食べました。」

主なる神は女に向かって言われた。

「何ということをしたのか。」

女は答えた。

「蛇がだましたので、食べてしまいました。」

主なる神は蛇に向かって言われた。

「このようなことをしたお前は

 あらゆる家畜、あらゆる野の獣の中で

 呪われるものとなった。

 お前は生涯這い回り、塵を食らう。

 お前と女、お前の子孫と女の子孫の間に

 わたしは敵意を置く。

 彼はお前の頭を砕き

 お前は彼のかかとを砕く。」

神は女に向かって言われた。

「お前のはらみの苦しみを大きなものにする。

 お前は、苦しんで子を産む。

 お前は男を求め

 彼はお前を支配する。」

神はアダムに向かって言われた。

「お前は女の声に従い

  とって食べるなと命じた木から食べた。

 お前のゆえに、土は呪われるものとなった。

 お前は、生涯食べ物を得ようと苦しむ。

 お前に対して 

 土は茨とあざみを生え出でさせる

 野の草を食べようとするお前に。

 お前は顔に汗を流してパンを得る

 土に返る時まで。

 お前がそこからとられた土に。

 塵にすぎないお前は塵に返る。」

*******

この会話の中にすでに既に キリストが痛手を負うが、悪魔の考えは粉砕され抹消されるのだ ということが書かれているのだ、という。お分かりか。

それから・・・善良なBig Boss の管理センターの設置まで、実に多くの時間が費やされたのだ。

次回は、ずぅ~と昔の善なる宇宙人の心の管理センターともいうべき、Big Bossを紹介しようと思う。・・・つづく