いつもの深夜業務終わりの寄り道散歩。
ぼくは東京湾フェリー乗り場の久里浜港にいました。
寄り道?
緊急事態宣言下なので先週土曜日は我慢をしたのですが、見なきゃいいのに様々な方々の報告を漁ってしまい喉を掻きむしる思いをしていました。
頭が沸騰しそう。
もう耐えられない。
もうかれこれ横須賀には1年7カ月行ってないし、あれだけ参加していたライブイベントも昨年1月のラブライブ!フェス以来現地参加は一切を断ち断腸の思いで配信参加に切り替えている。
もちろんこれは誰かに言われたお願いされたからでは無く「自分が感染したくないから」ではあり自身の判断なのですが、それでももう身が千切れてしまいそう。
よくこれまで頑張ったよ自分。
平日だから……
人がいっぱいいる所に行くわけじゃ無いから……
と心の中の誰かに言い訳しながら反対方向の電車に飛び乗りました。
いや、飛び乗るってのも言い訳くさいな。
バックの中にはカメラにレンズが入っていて計画的だもの。
今年7月にヨーロッパを離れ現在アジア周辺海域で多国軍と共同演習を繰り拡げているイギリス海軍クイーン・エリザベス打撃群。
海上自衛隊もその訓練に参加しており、先週の土曜日にその旗艦である空母「HMSクイーン・エリザベス」やいくつかの艦艇が横須賀に入港しました。
9日木曜日までいるとのことなので、せめて深夜業務明けの平日朝に横須賀駅裏山の一國坂階段を登り海上自衛隊逸見桟橋に接岸している蘭海軍フリゲートF105「エファーツェン」を見てこようか。
「クイーン・エリザベス」も遠く建物の向こうに艦橋くらいは見えるらしいし……と思っていたのですが、その「エファーツェン」は早々と月曜日に出港しちゃった。
英給油艦A136「タイドスプリングス」も一緒に出て行ってしまったしやっぱり土曜に見に行ってればこんな苦しい思いはしなかったのにーグギギギぃっー!
と、身悶えしていると東京湾航路を管制している東京マーチスの一般公開サイトに「クイーン・エリザベス」が1日早く8日の14時に浦賀水道に入航すると情報が上がったんです。
これなら見に行けるんじゃないか?
これはあくまで仕事終わりの寄り道だし……といちいち言い訳しないと出かけられないのももどかしいのですが、煮え切りそうな頭を抑えることが出来ずに行くことに決めました。
だって、これを逃したら次はいつ……
アメリカ以外の空母が日本に寄港する自体がはじめての事なのです。
相変わらず天候は悪いようですが、逆にその方が人が少なくて良いかも知れない。
仕事終え、京急に乗りいつもの汐入駅や追浜駅では降りずそのまま久里浜駅まで行きそこで下車。
横須賀港軍港めぐり遊覧船が現在運行休止中に加え、入出港を見渡せる横須賀市ゴミ処理施設「アイクル」前の海釣りエリアも台風の被害により閉鎖されているのです。
あとは観音崎か……
ならばとオタクたちの間で「東京湾フェリーチャレンジ」と呼ばれているものに挑戦してみましょう。
東京湾の出入り口に近い房総半島の金谷と三浦半島の久里浜を40分ほどで結んでいる東京湾フェリーは浦賀水道を横断するので、運が良ければ航走中の艦艇と航路が交わり近くで見ることができる(かも知れない)のです。
ではなぜ"チャレンジ"なのかと言うと、これは定期便のフェリーであって観光船では無いので対象船の通過に合わせて走るわけではありません。
もし、両端の港あるいはその近辺にいる間にその見たい船が通ったら観音崎から見るよりも遥かに遠方となってしまうんです。
では完全に運ゲーなのかと言うと、その運を引き寄せる為の下調べやある程度の知識が必要ではある。
そこが「東京湾フェリーチャレンジ」と言われる所以です。
間近では無いけれど確実に(天候という要素はあるけれど)見れる観音崎か、ミラクルが起きる"かも知れない"フェリーを選ぶか。
やはりこの博打を打つ人はそう多くは無いようで俄然燃えてきました。
昼前に着いたので時間も余裕があり、隣の「海辺の湯」で女王陛下への謁見前に身を整えましょう。
海が見える露天風呂でゆっくり仕事明けの体を癒やして……と言いたいところですが、なにせスマホで情報を受け取れない風呂の中。
予定が早まりいつクイーンが姿を見せるかと気が気ではありません。
いっそ海が見えないところで落ち着こうとサウナにも入ってみます。
蒸し暑さには極端に弱くサウナはこの世の地獄と思っているのですが、TVで放送中の「孤独のグルメ」を見たそのままに次の番組の「サ道」も見ているうちに少しだけ興味が湧いてきているのです。
…………………
狭くとんでもなく蒸し暑い部屋(サウナだから当たり前)に先客がふたり。
雛壇の上の難しい顔をしたおじさんと一段下に座っているもうひとりの若い衆にじろりと一瞥される。
なんだ?
牢名主か?
「へへっ、ちょいとつまらない事でとっ捕まりまして…… お世話になりやす」って挨拶すべきか?
と、その間たったの5秒でギブアップ。
「ととのったー」には程遠いサウナ初体験でした。
結局温泉に浸かりながらも気が急いてしまい随分早くにフェリー乗り場に行くことに。
一応待合室はあるようだし。
でもこの"ととのわなかった"ことが後の運命を変えることに。
この時点ではまだ悩んでいました。
クイーン・エリザベスが浦賀水道に入るのは14:00予定。
そこからフェリー航路と交わる所までは30分を費やすことは昨日出港した海自艦艇のAISでチェックしてある。
久里浜港を14:20に出る便が順当と思えそれに乗るつもりではあるのですが、13:20の便で浜金谷に渡り、折り返しの14:25発で狙うという手もあります。
横須賀を出た船は久里浜寄りの航路を取る可能性が高いので実際にクイーンの航路と交差するのはフェリー出発時間の5分の違いよりもっと大きな時間差となるはずです。
より接近できるタイミングなのはどちらの便か。
また、スケジュールがズレた場合、金谷港ならば入港中のフェリー船上から遠くに見ることはできるのですが、久里浜港は位置の関係からあまり見えなさそう。
そのへんもどう考えるか……
あたまがグルグルグルグル。
AISを切っているようでMarine Trafficの地図上には未だクイーン・エリザベスを示すポイントは現れていないけれど、タグボートがその周辺に集まっているのは確認できたので出港が近いのは間違いないでしょう。
心にGOサインを出し往復のフェリーチケットを買います。
行った先では下船せずそのまま戻ってくる遊覧チケットが安いのでそれをチョイス。
チケットを握りしめ様子を伺う。
でっかいカメラバッグを持った人に長いレンズを着けたカメラを肩からぶら下げた同好の士と見られる方が13:20発に乗り込みました。
次の14:20発に乗る人はまだ来てはいないだろうからどちらが多いのかはこの時点では判断つきませんが、ぼくは咄嗟に彼らに続くことに決めました。
その御二方に(勝手に)運命を託します。
当然船室には目もくれず、
デッキ上に身を落ち着けました。
もうここまで来たらあれこれ悩んでも仕方ありません。
中1でのバス遠足で乗って以来の東京湾クルーズを楽しみましょう。
海面上はどんよりと靄がかかり晴れやな船旅とはいかないところは残念。
陸地の上はまだ視程もそれなりにあるのですが、
海上ではこの通り、靄がかかっています。
それでも対岸の房総半島が見えるのはまだ救いはあるけれど。
出港してすぐに米海軍の高速輸送艦T-HST1「グアム」が南下して行くのが見えました。
横浜港瑞穂埠頭にある米軍施設ノース・ドックでの物資の積み下ろしを大桟橋客船ターミナルから眺めることができる船ですね。
ウォータージェット推進らしい派手な航跡です。
海上自衛隊の水中処分母船「YDT03」が前方を横切り北上して行きます。
水中で作業を行うダイバーの母船で、訓練の帰りでしょうか?
全長204mのシンガポール船籍コンテナ船「WAN HAI 323」の向こう側を「そうりゅう」型潜水艦が横須賀に向かい北上しているが見えました。
港外を走っている潜水艦を見るのは初めて。
もうクイーン・エリザベスが不発でも悔い無いやー
DDG68「ザ・サリバンズ」が北上しています。
このイージス艦は米海軍の駆逐艦ですが、今回のクイーン・エリザベス打撃群に参加している一隻です。
久里浜に向かう「かなや丸」とすれ違い。
デッキに出ている数人の中には長いレンズを着けたお仲間っぽい姿も見えます。
であれば、折り返しの久里浜14:20発狙いとなるのでしょう。
お互い笑って終えるか敗北に沈むかはたまたどちらか一方だけの勝利となるかはまだ神のみぞ知るところ。
千葉県の浜金谷港に入港。
イカ焼きのいい匂いが漂っていますが往復遊覧きっぷでは下船ができないのでがまんがまん。
くちょー
美味そうだなぁー
久里浜港では船首に接岸だったのに対して浜金谷では船尾に接岸するんですね。
船首に接岸だと出港後に180°回頭を行うので3分くらいの差ができますね。
考えてみれば当然のことながらこれは考えていなかったなぁー
いくつかの艦艇や多くの貨物船を見ることができて満足……と自分に言い聞かせてはいるのですが、やはり本命の動向がわかるまでは落ち着くことはできません。
相変わらずAIS波を発信をしていない「クイーン・エリザベス」ですが取り巻くタグボートが横須賀港を出た模様。
ツイッターでも出港の目撃情報が上がり始めます。
遠くに目を凝らしてみると……
観音崎の向こうに特徴的な艦影が薄らと見え始めました。
どうやら数分遅れで浦賀水道入航となりそう。
こちらが浜金谷を出る時刻まではあと20分。
航路が重なる予想地点での両船はどういう位置関係になるか。
船影さえ見れれば良いやーと考えてはいてもやっぱりドキドキ。
岬の上に立っているのが東京マーチスですね。
いつも入出航情報ありがとうございます。
先程の「ザ・サリバンズ」と、右にいるのは海上自衛隊護衛艦DDH182「いせ」
そして真ん中に英海軍空母「HMSクイーン・エリザベス」
日英米三国防衛同盟の図ですね。
横須賀入港に舵を取った「ザ・サリバンズ」と入れ替わりに南下を始めた「クイーン・エリザベス」
まだこちらのフェリー「しらはま丸」との距離は遠く、このままではかなり離れた位置で横切ってしまいそう。
この写真はズームの300mmいっぱいでその上トリミングをしているので肉眼ではまだまだ遠く、2km近くはありそうなのです。
でも、視程が低い中ここまで見れたんだから良いでしょう。
相変わらず悲観に苦しまないよう自分にはそう言い聞かせていますが……
東海汽船のジェットフォイル船「セブンアイランド友」がばびゅーんとまさに飛ぶように突っ走っていきます。
あれくらい早く来てくれれば……
無茶なことを考えながら見ていると、ここまで歩みが遅かったクイーンがみるみるうちに増速しており船首が立てる波もはっきりと見えるほどに。
距離がどんどん近づいてきます。
ところが前を走る自動車運搬船「神北丸」の影に入っちゃったぁー!
いやーぁぁぁぁーーー‼︎
こちら「しらはま丸」デッキ上での十数人のうめきが聞こえたのか(そんなわけない)
急に左に転舵。
どうやら「神北丸」はこちらの前を横切らず船尾側から抜ける選択をしたようですね。
上北丸船長グッジョブ‼︎(もちろんこっちの思い込み)
クイーンのお姿がクリアになりました。
航路が交わる数分前に久里浜14:20分発とすれ違い。
おおっ!
あの姿はあきらかにお仲間だ。
こちらの20人足らずに比べあちらは結構な大人数。
やはり14:20久里浜発にかけた人の方が遥かに多かった。
直後にはこちら「しらはま丸」の影に入る「かなや丸」
全長79m程度のフェリーなので邪魔になっているのはせいぜい10秒ほどでしょうがこれからどんどんクイーンから遠ざかって行く側にとっては貴重な15秒間。
なんだか彼らの心の中の怒号が聞こえてくるようです。
あのサウナでととのっていたら……
湯上がりにビールを呑みながら刺身定食に舌鼓を打っていたら……
デカいカメラを担いだ2人組に倣い13:20出港便に乗ったりしていなければ……
今ごろぼくもあちらで怨嗟の言葉を吐いていたでしょう。
あちらにしてもこれだけ「クイーンエリザベス」の姿を見れたのだから「東京湾フェリーチャレンジ」は成功と言えるでしょうけれど、こちらの方が更に最接近できるタイミングとなり、勝ち負けを分けるとすればこちらの大勝利となりそうです。
!!!!!!!!!!!!!!!!
ヤバい!
全身が沸騰しかけている!
今の自分、無茶苦茶興奮している!
正面ドーンだYO‼︎ 頂きました‼︎
他国の軍用艦の進路をこんなに近距離で交差して怒られない?と心配しちゃうほど。
クイーンエリザベス打撃群との共同訓練に参加している「いせ」がエスコート。
両艦の間に見えるヘンな物体は富津岬ですね。
天候が悪いなりにそこそこの視程は保たれているようでよかったぁー
先頭を行くタグボートに加えPC32「はたぐも」ほか3隻の海上保安庁巡視艇が周りをガードしています。
こちらのコースとは直角ではなく50°程で交わっているので双方の距離は開くどころか進行するにつれむしろ近づいてさえ見え、正面から横に移ることで艦容がより大きく見えてきます。
女王陛下のドレスの裾を踏まないよう静々とお供に徹する護衛艦「いせ」が最高にエモい!
全体像は望遠ズームの70mm側でも収まり切らなくなっているのでスマホのカメラを併用。
まさか広角側が必要になるなんて思ってもみなかったよ。
艦載機のF35B戦闘機と、その機が駆け上がり離陸する特徴的な所謂スキージャンプ台がよく見えます。
離陸機のブラストを浴びて煤がかなり付着していますね。
これはプラモを作る時に活かせそう…………と言いながらまた積みプラになる未来しか見えない。
前部の航海艦橋に
後部の航空管制塔とアイランドがふたつに分かれているのがもうひとつの特徴です。
まぁぶっちゃけカッコいいとは言い難くはありますが……
「HMS クイーン・エリザベス」の艦章がでっかく掲げてられてるのはカッコいい。
「いずも」「かが」「ひゅうが」「いせ」もそうしよ? ね?
航空管制からフライトデッキ上に指示する為に使うのかでっかいモニターが設置されているんですね。
被弾機が降りてくるとか、敵性飛行物体を感知した際に真っ赤や真っ黄色な警告表示が出てくるとか?
地方球場の電光ビジョン位はありそうな大きさ。
このF35Bは日本も採用を決めており、護衛艦「いずも」「かが」に搭載予定な他、陸上基地で運用するF35Aが現在航空自衛隊での配備が進んでいます。
ぼくはこのB型どころか空自A型もこれまでに見たことは無く、「ライトニングII」初見物です。
地上展示用のモックアップ機ならコックピットに座ったことがあるんですけどね。
(東京ビッグサイトで開催された国際航空宇宙展2018)
この時ロッキード・マーチンのおっちゃんにB型のステッカーを貰った。
この2機は米海兵隊のF35B。
結構派手なカラーリングをしている機体もいますね。
これなら空自もオジロワシをカラーで復活させても良くない?
短距離離陸、垂直着陸を行う際に使用するリフトファンのドアを開いて整備中の機体も見えますよ。
F35B「ライトニングII」のお尻と格納庫内にはAW101「マーリン」
格納庫の縁からなんかこっち見られてる?
艦尾にも「マーリン」が2機。
全長284m 満載排水量67669トン
スマホのカメラでも1倍画角で前後がギリです。
影だけでも拝めれば満足、でも少しは接近できるといいなぁーと思っていましたが、まさかこんなに舐め回すように見ることができるなんてこの「しらはま丸」船上の誰もが考えもしなかったに違いありません。
そしてお供の護衛艦「いせ」です。
これだけでも東京湾チャレンジは大成功な結果となるのでしょうけれど今回ばかりは……ねぇ……
更に後ろには米海軍の音響測定艦AGOS20「エイブル」が続きます。
日本近海を離れたクイーン・エリザベスをピッタリとそして密かに追尾するであろう中国やロシアの潜水艦のデータを採るために共に行動するのでしょうか。
クイーン・エリザベスが東京湾の出口に差しかかりました。
女王陛下のご安航をお祈りするとともにいつかまたの来日を心よりお待ちしております。
直後にとうとう雨が降り始めクイーンは霞の中へと消えていきました。
なんてドラマチックなんでしょう。
快晴であればと希望を言えばキリがないのですが、それでもここまでタイミングがバッチリ合うとは思いませんでした。
大満足な結果に力が抜けデッキ上のベンチに座り込む。
海を渡る風は冷たく、雨粒さえも興奮した体には心地良く……
身体の内側から多幸感が溢れ全身に染み渡るこの感覚。
ぐぐぐぐぐぐぐぐーーーー
こ、これは……
ととのったぁぁぁぁぁー
サウナ初体験は5秒終了でととのうどころではなかったけれど、ぼくのととのいはここにあったんだ。
船上で会話を交わした方と下船時に別れの挨拶。
「じゃあ、またどこかで」
再び会えるかどうかも分からず、会えたとしても顔を覚えている気もしないけれど久しぶりのこの「現場の雰囲気」がとても嬉しい
帰りの横須賀線〜総武快速線直通列車では勝利の美酒(ビールを飲んだら最後、成田空港まで行ってしまうこと間違い無しなのでいちごミルク)に酔いしれ、
横須賀駅を発車してすぐのトンネルを抜けた数秒間だけ見える吉倉桟橋を雨の車窓から見た後はもう記憶が無くなり起きたのは1時間30分後の市川駅でした。
横須賀を出て再び多国軍との共同訓練を続けるためにまだ暫くはクイーン・エリザベス打撃群は西太平洋海域にいる模様。
参加国も多く、中国艦艇も監視と牽制の為に出てくるかも知れません。
そこで女王陛下が「この通信を聞く全ての者に告げる。 我らの敵はただひとつ。 中○共○党を倒し、(ここで握りこぶしをぎゅっ) 再び自由を取り戻すのだ‼︎」と力強く演説。
すると中○艦艇も反転してこの自由同盟艦隊に加わり共にペ○ンを目指すんですよ。
♫おぼえていーますかー 目と目があーった日ーをー♫