ぼくがまだ小さかった頃、とんでもない事件が発生しました。
それは「ベレンコ中尉亡命事件」です。
ソビエト連邦の戦闘機「MIG25 フォックスバット(NATO名)」が日本の防空網をかいくぐって函館空港に強硬着陸をしたのです。
結果的に亡命意思があっての領空侵犯だったのですが、これがもし核を搭載した戦闘機だったら函館の町は壊滅していたわけですから、日本の防空体制が全く機能しなかったことが大問題となったようです。
幼いぼくにはバッジシステムとかはわからないけど、憶えているニュースとしてはこれが一番古い記憶かも知れません。
そのMIG25ショック以降ロシア/ソ連の戦闘機が日本の空を飛んだことは無かったし、これからも当分無いと思っていました。
ところがそれが来たのです!
それもロシア/ソ連を代表する戦闘機SU27(スホーイ) フランカー(NATO名)シリーズの機体が!です。
ウクライナ支援の立場をとっている日本とロシアとの関係が冷戦以来最悪といえる状態ではさすがにロシア軍の機体というわけではない(海軍艦艇は舞鶴に寄港したことがある)のですが、インド空軍が装備しているSU27シリーズの輸出ライセンス生産型であるSU30MKIが航空自衛隊との共同訓練を行うことになり、茨城県の百里基地に飛来することとなったのです。
今月の16日~29日予定で百里に滞在するとのこと。
これは行くしかないと言いたいところですが、毎日必ず飛ぶとも限らず当然基地祭やエアショーでは無いのですからタイムスケジュールが発表されるわけもありません。
一か八かになるのです。
マニアの中には毎日通う、地方の人はこの期間すべて休みを取っているようですが、ぼくはそこまでの根性はありそうもない。
どこか1日だけでも行ければ…………もしそこで飛んでくれればラッキーくらいに考えていたのですが…………
茨城空港から百里基地が望める臨時駐車場エリアにやってきました。
百里基地は茨城空港と滑走路と管制を共有する官民共用飛行場です。
マニア必須の脚立は持っておらず駐車場端の盛り土に立っているので余計に遠い。
でもこの1.2mほどの高さの上に持参した娘が小さい頃使用の踏み台を使えばフェンスを余裕でクリアできました。
うわーーーーっ
ホントにスホーイがいるよー
機首からコックピットまで赤いカバーがかかっちゃってるし逆光ではあるけれど、これを逃したらロシアンファイターなんて見ることは無かったでしょうからこれだけでも感動です。
前後の大きな飛行機はフランカーをサポートする整備兵やパーツや燃料等物資を運んできたインド空軍C17グローブマスターIIIです(これはアメリカ製)
航空自衛隊の国産輸送機C2もデカいけれどC17はずっと巨大ですごい存在感。
いまのところフランカーもグロマスも動きはないようですが…………飛んでくれるといいなぁー
午後になると雲が出て時間とともに天気が崩れるとの予報もでているのでどこかで踏ん切りをつける判断もしなきゃ。
一番フランカーとの距離が近い(とは言っても滑走路と誘導路にエプロンを挟んでいるので800mくらいは離れているのですが)茨城空港の展望デッキにも来てみました。
やっぱりガラスが反射してクリアに見えませんね。
建設当時は基地格納庫方向に視線を向けると白く曇る通称国防ガラスに阻まれていたのでこれでもマシになったとはいえるのですが……
昨夜の積雪から一転してお日様さんさんサニーデイなので雪解けで起こる像の揺らぎは距離が近い分こちらのほうが幾分少なくは見える。
ターミナルビルだけにトイレも飲食の確保も容易でこれは悩ましい…………
でも疲れたり眠くなったら車は目の前だしやっぱり駐車場に戻りましょう。
どう見てもすぐに動くことは無く長丁場になりそうですから。
ターミナルビル内セイコーマート(北海道のコンビニチェーンが茨城県内には多くある)で食料を調達して元の場所に戻ります。
フランカーおよび自衛隊機にまーったく動きはないのですが、1日に7往復ある旅客機が出発するのでまずはこのコを見てヒコーキ欲を満たしましょう。
おしり。
羽田や成田でB737シリーズを見るととても小さいとの印象ですがここ茨城空港ではけっこう大きく見えますね。
茨城空港は日中ほとんどが逆光となるのが残念ではありますが、離陸機をここまで近くで見れるというのはなかなか無いかもしれません。
いってらっしゃーい
札幌(新千歳)行のSKY791便が旅立っていきました。
んん⁉︎
キャノピーが開いてる!
これは飛ぶのか⁉︎
まだ飛行前点検をしている感じではないのですぐに動き出すことはなさそうですが。
そうこうしていると今度は札幌出発のSKY790便が降りてきました。
さっきの離陸便とは逆のランウェイチェンジがあったようですね。
制動用の逆噴射もこんなに近くて結構な迫力の音です。
到着してお客さんを降ろしたかと思うそんなに時間も空けることなくすぐに搭乗が始まりました。
スカイマークはLCCでは無いのですが、それでもひとつの機材を多くの便に投入してどんどん飛ばします。
タラップは大洗が近いのでガールズ&パンツァー仕様となっています。
主人公あんこうチーム5人に加えひとりいるのはここ茨城空港がある小美玉市出身の山郷あゆみちゃん(1年生ウサギチーム M3砲手)です。
ランウエイチェンジがあったのでさっきとは逆の離陸を見れて楽しい。
SKY531便として那覇に旅立っていきました。
いってらっしゃーい
でも相変わらずの逆光がなー
と、その直後に旅客機とは全然違う音。
スカイマーク機を待って空自の国産練習機T4が離陸をしていきます。
カワイイ
垂直尾翼前のドーサルフィンと後ろに突き出した水平尾翼が美しく、ブルーインパルスの使用機であります。
くいっとシャープに旋回をして鹿島灘の方に向かって行きます。
もう1機も上がって行きました。
この美しくも愛くるしい川崎重工製の練習機も退役が近づいており、どうやら次期機体は海外からの輸入となるようです。
予算とかいろいろあるのでしょうが、ということはブルーインパルスも輸入機になってしまうのはやっぱり残念です。
そしてこちらは三菱重工製のF2A戦闘機が離陸していきます。
続いて複座のF2Bも上がります。
訓練指導が後席に乗っているのでしょうか。
やっと百里基地が目覚めた感じですね。
まぁ首都圏防衛の基地でひっきりなしにスクランブル発進があったらそれはヤバいわけですが……
一方フランカーは……
動きがありません。
もうこれは午前中は無いかなー
今ごろ昼食にカレーを食べているのかもね。
実際インド料理店の「ムンバイ」が毎日デリバリーしているそうです。
デリバリーワゴン車が戦闘機が並ぶエプロンに直接乗りつけているそうなのでお店の人も驚いたでしょうね。
グロマスはエンジン部に脚立が立っているので整備中のようですが。
これ、ホントに明日帰るつもりあるんですかね?
なんか国民性の違いなのかのんびりしている気がするのですが。
さっき訓練に出た4機のF2が帰ってきました。
こうして基地上空を1周して滑走路に異常が無いことを目視してから着陸するのが手順となっています。
タッチダウンポイントは林の向こうで見えないのが残念。
近くまで来た時点ではもうすっかりスピードは落ちています。
次の2機は編隊で接近してきましたよ。
コンバットブレイクで間隔を空け
着陸。
やっぱり単座機はかっちょええーーーー
フランカーは……
前席の赤いカバーが外された!
飛ぶの?
今度こそ飛ぶの?
トラクターに牽かれたF2Aがフランカーの前を通過。
エプロンの列機よりだいぶんこちら側を走っているはずなのにフランカーと比べるととっても小さい。
SU27シリーズは戦闘機としては機体サイズが最大の部類にはいるのでF2どころかやはり大型戦闘機である空自主力のF15Jイーグルと比してもなお大きいくらいですから。
ってあれ?
滑走路脇で待機していた消防車がいつの間にかいなくなっちゃった。
ってことは離着陸機が当分無いってこと?
ではフランカーは???
♪ドナドナド~ナ~ドナド~ナ~
牽引されているあのF2Aは実戦用のサイドワインダーミサイルを装備しているのでスクランブ用のアラート機の交代なのでしょうか?
もうあきらめムードで車の中で少しだけ仮眠したり
H2Aロケット48号機打ち上げを宇推くりあちゃんのライブ配信で見ていたりしていたら爆音が聞こえ車を飛び出しカメラを構えると救難隊のSH60Jが訓練に出ていくところでした。
いや、SH60Jもカッコいいよ。
でもやっぱりフランカ~~~……
あっ⁉︎
消防車がまた滑走路脇に出てきました!
今度こそ⁉︎
林の向こうから姿を現したのは……
午前中と同じF2Aですね。
いや、
F2戦闘機の離陸が見れるので嬉しいのですが、やはり目的はフランカーとなっちゃうと…………
ねぇ?
でも積雪がどんどん日差しに溶けて水蒸気で像が揺らぎまくります。
まぁ午前中よりは日が当たり始めたので少しはマシな写真が撮れているかな。
もう時間も15時ですし、まわりの人たちも帰り始めました。
その中にはエアバンドを聞いている人もいるのでフランカーのフライトはもう無いのでしょう。
F2×4機とT2×2機で午前と同じフライトですね。
今出て行った機が帰ってくる頃にはだいぶん陽も陰る頃だろうし、フランカーが今からというのは考えられないのでここで決心します。
一生見ることないと思っていたロシアンファイターを見ることができたので良しとしましょう。
空振りとは言え楽しい1日でした。
結局来日してから離日までフライトしたのは2日のみ。
その間自衛隊員とヨガをしたり写真撮ったり、共同餅つき大会ではカレー粉かけて食べたりでもうこれは共同訓練というより政治的アピール目的ですね。
日本とインドにアメリカとオーストラリアの4国で「QUAD」が始まりましたし。
空港入口交差点のセイコーマートでガラナを飲んでこれにて終了。
離日も1日遅れとなったので最終(になるはずだった)日に行った人から阿鼻叫喚の怨嗟の声も。
”#フランカー被害者の会”なんてハッシュタグまでw
どうも後から考えてみると朝の時点でムンバイのワゴンがエプロン上で確認されていたのでその時点で「帰る気ないだろ?」というのが分かったはず……だそうです。
全天候型機でしかも着陸では無く離陸なのだからちょっとくらい天気が悪くてもなんで飛ばないんだろうね?
富士山をバックにした編隊飛行の広報用写真を撮るチャンスを狙っているのかな?
キャノピー開けたりカバー取ったりでもレドーム上のカバーは付けたままだったり、整備士が機体に取り巻いて今度こそ飛ぶ準備か!と思ったら格納庫に入っていったり……
6日間にわたって焦らしに焦らし時々それっぽい仕草をちょいちょいしてくる。
ポリネシアンセ〇〇スかっての‼︎(下ネタ~)
そのまた翌日は朝から快晴で、さすがに今度こそ本当に日本を離れることとなったのですが、グロマスは夜が明けきる前に、フランカーも朝9時とこれまた早い時間に出てしまったので何日も通ったのに総空振りな人も多かったみたいです。
さすがにこの日にムンバイワゴンは目撃されなかったようですw
離日を見には行けなかったけど地元幕張で「ムンバイ」のカレーを食べたよね。