「君の名は。」を観てきました。
気に入った映画は複数回観る派なので2回観ました。
まず抱いた感想としては「もっと早く、とっとと観ておけよ自分!」でした。
観る機会を得る前にどんどん人気が急上昇していき、とにかく「泣ける!」との大反響を絶えず様々なメディアやSNSなどで目にするようになってきました。
その上「カップルで観に行くと劇場を出た後そのまま役所に行って婚姻届を出したくなる」とか「恋人同士でなく友だちの間柄であっても見終わったときにはもう付き合って当然な雰囲気になる」等々そんな感想すらあればそこまで良いんだーと期待値も爆上がりになってしまうのも当然ですよね。
そこまで膨れ上がってしまった期待の中この作品を観てしまったんですよ。
絵も綺麗だしなにより三葉ちゃんかわいかった。
キャラデザ田中将賀さんのあの花、なつまち、ここさけとはまた違ったデザインの幅広さにも驚かされた。
ストーリーもまぁ良かったよね。
でも……泣けなかった……
「ラブライブ!」でも泣き「ガールズ&パンツァー」でも泣き「蒼き鋼のアルペジオ」でも泣き、もちろん「心が叫びたがっているんだ。」とアニメ映画でことごとく泣いてきたとても涙もろいこのぼくが泣けなかったんです。
もちろん泣ければ名作!ってわけでは無いにしてもどうしても拍子抜けの感も否めない。
やっぱり「これは泣ける!」とと評判で身構えていたせいもあるのかもね。
そういえばこんな感じ前にもあったな。
映画「アバター」(2009・米)がそうでした。
この映画も普段SFやアニメ等の映画を見ない人たちがこぞって観てそしてすごく良かったとの大反響でした。
そして自殺者が多数出たんです。
あまりに美しく素晴らしい世界だったのに観終わって現実世界に戻されそしてそのあまりの落差に絶望し自殺してしまうという事例がいくつも報告されたのでした。
その時に思ったこと。
「確かにアバター世界はとても美しかった。 でもこれが特別ってわけでもない。 もしかしてこの自殺した人たちって今までに同じくらいに美しく素晴らしい世界を描いた作品に出会っていなかったのかもしれない。 きっとSFや特撮CG作品を観ることなんて無いしゲームをすることだって無かったんだろうな」と。
今回の「君の名は。」それと全く同じで、普段アニメ作品を観ることが無い客層が他にももっと素晴らしい作品が山のようにあるにもかかわらずこれがオンリーワンのように感動してしまった結果なのかもしれないなと。
さっきも言ったようにとても素敵な作品ではあったんですよ。
でも、これが特別!とまでは思えなかった。
BDを買ってもこれだけをとっておきな場所に置くなんてこともなく今まで買った数多くのBDたちと一緒にしまわれる。
そんな作品でした。
そしてもちろんアニメオタ・ファン以外の一般の方々も観てヒットしていると言うことはもちろん喜ばしいのですが、それに伴って増える聖地巡礼でもゴミのポイ捨てや住宅地や地方での深夜徘徊など問題も多く噴出しているようですね。
聖地巡礼はアニメオタ・ファンにとってはおなじみの行為なのですが、そんなには(多少はあるかもしれませんが)こういった問題が出てきているようには感じません。
それは多分作品を愛しキャラクターに惚れているからなんです。
神田明神男坂を汚せば東條希ちゃんが悲しむし、沼津内浦の海を汚せば千歌ちゃんたちだってきっと怒る。
その舞台となった場所を汚せばそれは好きな作品自体を汚すことになってしまう。
そんな思いがあるからこそ作品で見たそのままであって欲しいと考えるのでしょう。
一般の方々はさすがにそこまで考えることはなく、逆にそこまで思入れてしまうオタ・ファンをキモいと蔑んでしまう。
結果その舞台を平気で汚してしまえるというこのなのかもしれません。
もちろんそれ以前にモラルとかってことなのですが……
一般にウケるということはそんな弊害も出てしまうとは思いもよりませんでした。
残念。
そして天文ファンとしてはどうしても見過ごせないものが彗星の描写があまりにも杜撰でザルだということになってしまいます。
もちろん何も無いところから世界を創造するアニメ作品はそれだけミスの数も膨大なものとなってしまいます。
ぼくが得意とする分野から見つけた事柄だけでもいくつもあるのだから、より多く様々な人が見ればそれだけ数多くのミスが発見されてしまうでしょう。
でも物語の根幹には繋がらない瑣末な物、総武線車両のヘッドライトが本来赤い尾灯であるはずのところまで白く光っていたとか、新幹線の座席配置が逆だとかその程度のことはどうだっていいのです。
別にB787型機の機内窓のシェードが可怪しい物であっても「ラブライブ!The School Idol Movie 」の魅力が損なわれる物ではありません。
でも、今回の「君の名は。」における彗星は物語を動かす一番のキーとなる要素なので調べて調べて調べまくっても余計とはならないはずなんです。
前回接近時にはまともな記録が残っていないであろう1000年という超超超長周期で、しかも地球最接近(それも月軌道の内側に入ってくる)のわずか1週間前でやっと肉眼でも観測可という小ささなのに、今までどうやってその1000年周期というとんでもない観測結果を得られていたの?
ニュースかなにかの画像では太陽ではなく地球をくるって回って戻っていく楕円軌道を描いていたよ。
別の画像では地球近傍を通過したときに地球を内側にしてスイングするのではなく反発したように外に逃げるのはどういうこと?
1000年周期というけれどそんな月より近い場所を通過して地球の大重力の影響を受けて尚も正規の軌道を描けるの?
それとも365日ちょっとの周期で公転している地球が1000年前の同じタイミングでも同じ位置に地球があったの?
分裂した時にはだいたい地平から40度くらいの低い位置にいたのに実際に突入したときにはほぼ直上からになっていたのはおかしくない?
バリンジャー並のあれだけ大きなクレーターを抉る突入体だったのだから相当な衝撃波だったはずで、あの町だけの被害っていうのも少なすぎるよね。
ツングースカのような広大なロシアの森林や恐竜絶滅の時代では無く、いくら田舎町とはいっても密集する日本では巻き上がった粉塵等で周辺の環境が一変してしまうくらいなはず。
そもそも彗星って見たイメージとは違って尾っぽが後ろでは無いのでビジュアルが根本からおかしい。
ダストテイルとイオンテイルがちゃんと描き分けられているのにどうして……
これらは何もそんなにはマニアックな物ではなくとても入門的な、ネットや図書館で1時間も勉強すれば分かること。
あるいは科学考証のポストをひとつ作ればそれだけで解決できた程度のことなのに。
大事な大事な要素であるのだから「天体警察ウザっ!」では済まされないはずなんです。
別に戦車を女子高生が操りしかも本来の2倍近い速度で疾走してしまうことやわずか半月ちょっとの間に6曲もの楽曲を作詞作曲し衣装までも作りダンスもするなんてことをやってもそれに対してつっこんだりはしません。
そここそがそれらのお話の魅力なのですから。
でもこの「君の名は。」では彗星の描写を正しくしてしまえば展開が破綻してしまうっていうわけでもないでしょう。
で、あればやっぱりちゃんとしてほしかった。
ほんと絵やストーリーがとてもよかっただけに返す返すも残念なんだよなー
やっぱり作家性が強いとその人が生み出す物が強すぎて回りでのフォローが疎かに(あるいは禁忌)となってしまうのかもなぁ……
残念で残念で悔しくて悔しくてモヤモヤモヤモヤと……
それに隕石が3度も同じ場所に落ちるなんて天文学的数字どころじゃないくらいにありえなさすぎて、それ隕石を引きつける何かがあそこにはあるはずとそっちのほうが気になっちゃうんだよなぁ。
あ、妻と観に行ったので当然見終わった後に役所に行くことはなかったですよ。
あと、やっぱりちゃんと本職の声優さんを使ってくれ。
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