ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

三春ダム

2015-12-22 12:00:00 | 福島県
2015年12月20日 三春ダム
 
三春ダムは福島県田村郡三春町西方の一級河川阿武隈川水系大滝根川にある多目的重力式コンクリートダムです。
阿武隈川は福島県中通りを北上して宮城県で太平洋に注ぐ南東北屈指の大河川ですが、本流にダム建設適地がないことから建設省(現国交省)は主要支流への多目的ダム建設による河川総合開発を進めてきました。
阿武隈川右支流大滝根川では1972年(昭和47年)に三春ダム(当初は大滝根ダム)建設事業が採択され1988年(平成元年)に本体着工、1997年(平成9年)に竣工しました。
三春ダムは国交省東北地方整備局が直轄管理する特定多目的ダムで、大滝根川および阿武隈川中流域の洪水調節(最大600立米/秒の洪水カット)、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給、郡山東部および三春南部への特定灌漑用水の供給、郡山市はじめ4市への上水供給、日本化学工業(株)への工水の供給を目的としています。
またダム竣工に合わせて利水放流を利用した三春ダム発電所(最大出力1060キロワット)も稼働しました。

三春ダムは建設途中の1993年(平成5年)に『地域に開かれたダム』の指定を受けました。
三春町は滝桜を中心に桜が有名ですが、ダム周辺も「日本一美しいさくらの里」をスローガンに環境整備が進められ、特に湖畔のさくら公園は県内有数の花見スポットになっています。
 
ダム下のアプローチはここまで。
放流設備としてクレストラジアルゲート4門、オリフィス高圧ラジアルゲート1門、放流バルブ3条を装備していますが、ここから全容はわかりません。
管理上の問題はあるんでしょうが、地域に開かれたダムなら全部見せてくれよ!と思うのが心情で・・・


右岸展望台から
やはり目が向かうのは評価が分かれる導流部扶壁の装飾
城下町である三春の石垣をモチーフにしたとのことですが、個人的にはヘビのウロコっぽい感じが…
本音を書けば『気持ち悪い』 スイマセン・・・・。


本体着工が1988年(平成元年)でバブル真っ盛り
化粧型枠の採用や凝ったデザインのゲートハウス、取水設備などは無駄なものにお金を使う余裕があった時代の産物ともいえます。


右岸上流から。
右から選択取水設備、ラジアルゲート4門が並び、ゲート中央にオリフィス予備ゲート。


武家屋敷をモチーフにしたっぽい管理所と資料館
右手は艇庫とインクライン。


ゲート越しの減勢工。


向って右手の建屋はバルブ室で脇から放流バルブが顔を出しています。
奥は河川維持放流を利用した三春ダム発電所。


国交省直轄ダムと言うことで天端は2車線幅
もちろん車は進入できず徒歩のみ開放。
向かいは建設時クレーン台座が置かれた展望台。
 

ダム湖(さくら湖)は総貯水容量4280万立米
湖畔にはさくら公園のほか水生生物観察園や野外劇場などが整備されています。
正面の端正なお山は福島百名山の移ヶ岳


左岸から
ここから見るとゲートハウスは一列に並んだ足軽にも見える。


左岸から上流面。


手前は郡山市上水道向け取水設備。
 

このほか、湖畔に郡山東部および三春南部向け灌漑用水の取水設備が設けられています。
 
(追記)  
三春ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

0526 三春ダム(0132)
福島県田村郡三春町西方 
阿武隈水系大滝根川
FNAWI
65メートル
174メートル
42800㎥/36000㎥
国交省東北地方整備局
1997年
◎治水協定が締結されたダム

犬神ダム

2015-12-22 09:00:00 | 福島県
2015年12月19日 犬神ダム
 
犬神ダムは福島県白河市表郷金山の一級河川阿武隈川水系社川右支流黄金川にある灌漑目的のアースフィルダムです。
ダム便覧には福島県の事業で1971年(昭和46年)に竣工と記されており、県営かんがい排水事業等で建設されたものと思われます。
管理は社川沿岸土地改良区が受託しています。
白河市表郷の国道289号線から黄金川沿いの市道を南下し犬神集落を抜けると犬神ダムが現れます。
 
基部は石積みの擁壁、堤体は犬走を挟んだ2段構成で奇麗に草が刈られています。
堤高32.4メートルとアースフィルにしてはなかなかの高さで、溜池ではなく立派な農業ダムと言った風。


左岸ダム下には隧道から二つの吐口が並んでいます。
右手は洪水吐導流部、左手は斜樋からの底樋樋門。


アングルを変えて
農業用ダムで洪水吐と底樋の隧道の吐口が並列するのは非常に珍しい。


左岸の横越流式洪水吐。

 
洪水吐導流部の隧道呑口。
ここから上記2枚目、3枚目の写真へと続きます。


天端直下は犬神の集落。
もとは茅葺と思しき赤いトタン屋根が並び、『犬神』という地名や黄金川と言う河川名が何やら横溝正史のおどろおどろしい世界を髣髴させます。


貯水池は総貯水容量120万6000立米
本州の農業用アースフィルダムとしてはなかなかのサイズ。


未舗装の天端と下流面。

 
上流面はロック材で護岸
左岸に管理事務所で斜樋があります。


管理所と斜樋。

 
(追記)
犬神ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え 事前放流を行う予備放流容量が配分されました。

0513 犬神ダム(0129)
福島県白河市表郷金山
阿武隈水系黄金川
32.4メートル
128.8メートル
1206㎥/1087㎥
社川沿岸土地改良区
1971年
◎治水協定が締結されたダム

四時ダム

2015-12-21 16:00:00 | 福島県
2015年12月19日 四時ダム
 
四時ダムは左岸が福島県いわき市川部町、右岸が同市山玉町の二級河川鮫川水系四時川にある福島県土木部所管のロックフィルダムです。
鮫川水系では1962年(昭和37年)に本流に高柴ダムが完成しますが、1964年(昭和39年)にいわき市が新産業都市に指定されて以降、勿来地区への工場集積や人口増加が進み都市用水需要が一気に高まりました。
県土木部は『鮫川総合開発事業』の一環として鮫川左支流四時川への多目的ダム建設を採択し、建設省(現国交省)の補助を受けた補助多目的ダムとして1983年(昭和58年)に四時ダムが竣工しました。
四時ダムは四時川の洪水調節(最大350立米/秒のカット)、いわき市への上水道用水及び工業用水の供給を目的としています。
さらに2015年(平成27年)には河川維持放流を利用した日本工営傘下の工営エナジー四時ダム発電所(最大出力470キロワット)が稼働しました。
この発電施設は19年間の契約期間経過後は福島県に無償譲渡されます。

四時ダムは国道289号線からダムに通じる管理道路が夜間施錠され、午前8時から立ち入り可能です。
左岸高台から俯瞰。
左岸にバスタブ型洪水吐があり管理事務所の先にアーチ状の堤体が続きます。
堤体左岸側には地山があり、小河内ダムのような堤体と洪水吐が離れた構造です。


バスタブ型洪水吐をズームアップ
昭和50年代設計と言うことで、バスタブ型洪水吐としては珍しく巨大なゲート操作室があります。
上流側に常用洪水吐の予備ゲート2門が待機。


洪水吐導流部
下流にわずかに見える白い建屋が小水力発電所。


常用洪水吐として珍しい高圧バーチカルゲートを2門装備。


このタイプのゲートは他所では記憶がないなあ。


天端は徒歩のみ開放
堤体は緩やかなアーチ状。


上流面。

天端からは海が見え、海が見える展望広場と命名されています。


総貯水容量1210万立米のダム湖(四時湖)。
右手に艇庫とインクライン。


右岸から下流面
管理事務所に下に地山が見えます。

ダム下は立ち入り禁止ですが、ダム下へ通じる管理道路入り口の門扉が開いておりそのまま進入してしまいました。(事後承諾済み)
地山のせいで提体は見えません。
実はこの右手に発電所と利水放流設備があるのですが写さず終い。


(追記)  
四時ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。 

0521 四時ダム(0123) 
鮫川水系四時川
FWI
83.5メートル
300メートル
12100㎥/10100㎥
福島県土木部
1983年
◎治水協定が締結されたダム

高柴ダム

2015-12-21 15:21:01 | 福島県
2015年12月19日 高柴ダム

高柴ダムは左岸が福島県いわき市山田町、右岸が同市田人町旅人の二級河川鮫川本流にある福島県土木部所管の重力式コンクリートダムです。
事業は1937年(昭和12年)の河水統制事業に遡りますが、戦後鮫川下流で化学工業の集積が進み利水需要が高まったことを受け、1957年(昭和32年)に『鮫川総合開発事業』が着手され1962年(昭和37年)に高柴ダムが竣工しました。
建設省(現国交省)の補助を受けた補助多目的ダムで鮫川の洪水調節(最大440立米/秒のカット)と常磐及び小名浜への工業用水の供給を目的としています。
1985年(昭和60年)には利水放流を利用した高柴ダム発電所(最大出力1600キロワット)が稼働しました。

下流からダムと正対できる場所がない上に天端の立ち入りが制限されており、撮影ポイントは限られます。
右岸から下流面
放流設備としてはクレストラジアルゲート3門のほかコンジットバルブを装備。
豪雪地帯ではありませんがゲート操作室は被覆されています。



1985年(昭和60年)に稼働した高柴ダム発電所
利水放流を利用した小水力発電所で県土木が管理用発電として利用しています。


天端は立ち入り禁止(現在は開放されています)。


六角形の取水設備。


ダム湖(たかしば湖)は総貯水容量1270万立米。
小ぶりなダムにしては意外に大きなダム湖と言う印象。


説明板。


(追記)  
高柴ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。 

0501 高柴ダム(0122)
左岸 福島県いわき市田人町旅人井戸沢
右岸      同市山田町 
鮫川水系鮫川
FI
59.5メートル
163.5メートル
12700㎥/8600㎥
福島県土木部
1962年
◎治水協定が締結されたダム

堀川ダム

2015-12-21 11:00:00 | 福島県
2015年12月18日 堀川ダム
 
堀川(ほっかわ)ダムは左岸が福島県西白河郡西郷村真船横川、右岸が同村小田倉の一級河川阿武隈川水系堀川にある福島県建設部所管のロックフィルフィルダムで、建設省(現国交省)の補助を受けた補助多目的ダムとして2000年(平成12年)に竣工しました。
堀川の洪水調節、安定した河川流量の維持と不特定灌漑用水(既得灌漑用水)への補給、白河地方広市町村圏整備組合を通じた1市4町4村への上水道用水の供給を目的としています。
 
減勢工直下まで立ち入ることができます。


こんなアングルで写真を撮れるダムはなかなかありません。


堤頂長390メートルのリップラップ
ロックフィルダムとしては珍しい丸石
下流の農地に埋没していた旧阿武隈川砂礫が使われています。


天端から
ダム下には広大な芝生の公園が広がっています。
ダム建設に合わせて公園が整備されケースは多いのですが、補助ダムの場合維持費の問題等もあり時間とともに荒れてしまうところが多々あります。
しかし、当ダムは驚くほどきれいに維持されています。

ダム湖(まぶね湖)は総貯水容量500万立米
天端からは茶臼岳、朝日岳、三本槍岳と那須連山主峰が一望できます。

 
天端は徒歩のみ開放
左岸に管理事務所があります。


減勢工と利水放流設備。


導流部上段にはスリットが入っています。


常用と非常用を兼ねるバスタブ型洪水吐。
常用洪水吐から越流しています。


洪水吐と堤体上流面。


上流から遠望。


2000年竣工の比較的新しいロックフィルダムで、天端から那須連山が一望できるほか、ダム周辺の整備も素晴らしいダムです。
時節柄人気はありませんでしたが、観光スポットとしてもっと人気が出てもおかしくないダムです。

(追記)  
堀川ダムには洪水調節容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。
 

0537 堀川ダム(0118)
左岸 福島県西白河郡西郷村真船横川 
右岸         同村小田倉 
阿武隈水系堀川
FNW
57メートル
390メートル
5500㎥/5200㎥
福島県土木部
2000年
◎治水協定が締結されたダム