ダムの訪問記

全国のダムと溜池の訪問記です。
主としてダムや溜池の由来や建設の経緯、目的について記述しています。

庭木ダム

2019-05-30 00:35:08 | 佐賀県
2019年5月23日 庭木ダム
 
庭木ダムは佐賀県武雄市西川登町神六の六角川水系庭木川源流部にある灌漑目的の重力式コンクリートダムです。
農水省の補助を受け1985年(昭和60年)に着手された佐賀県営かんがい排水事業庭木地区の中核施設として1994年(平成6年)に竣工しました。
運用開始後は川登土地改良区が受託管理し、231ヘクタールの農地に灌漑用水を供給しています。。
ダム湖畔には間断なく桜が植えられ、武雄市では知る人ぞ知る桜の名所となってります。
 
農水省のダムらしく洪水吐は自由越流式クレストゲート2門のみ、V字の斬縮型堤体導流壁を備えています。
 
右岸から。
 
右岸の竣工記念碑
文字は金箔です。
 
ダムサイトには古い石樋が置かれています。
もともと当地には溜池があり、かんがい排水事業で再開発ダム化されたようです。
しかし、コンクリがない時代の人々の水を得るための努力には頭が下がります。
 
上流面
クレストゲート2門と右手に取水設備。
 
減勢工
右奥は配水設備、左手前は放流設備。
 
アングルを変えて
ちょろちょろと河川維持放流が行われています。
 
ダム湖は総貯水容量60万立米。
湖畔には桜が植えられ春には見渡す限りの桜の饗宴となります。
 
天端は車両通行可能。
焼き物が盛んな佐賀らしく親柱には陶板の装飾がはめ込まれています。
 
左岸上流から
右手は管理事務所。
 
ダム便覧にはダム下からの写真が掲載されていますが、堤体と正対する場所は草が深く立ち入れませんでした。 
 
(追記)
庭木ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
 
2557 庭木ダム(1435) 
佐賀県武雄市西川登町神六
六角川水系庭木川
26.2メートル
130メートル
600千㎥/557千㎥
川登土地改良区
1994年
◎治水協定が締結されたダム

横竹ダム

2019-05-29 14:00:18 | 佐賀県
2019年5月23日 横竹ダム
 
横竹ダムは佐賀県嬉野市嬉野町吉田の塩田川水系吉田川上流部にある佐賀県県土整備部が管理する治水目的の重力式コンクリートダムです。
塩田川水系では出水が多く、1962年(昭和37年)7月豪雨で甚大な被害が発生したことを受け、県は1973年(昭和48年)に岩谷川内川に岩屋川内ダムを建設しました。
しかし、1976年(昭和51年)に再び大きな洪水被害が発生したことを受け、新たに吉田川への治水ダム建設事業に着手し2001年(平成13年)に竣工したのが横竹ダムです。
建設省(国交省)の補助を受けて建設された補助治水ダムで、岩谷川内ダムと連携して塩田川水系の洪水調節を行うほか、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補強を目的としています。
 
横竹ダムは県道289号線沿いにあります。
非常用洪水吐として自由越流式クレストゲート8門、常用洪水吐として自然調節式オリフィスゲートを1門を装備しています。
 
ダム下には桜が植えられ公園になっています。
県ダムのこの手の公園は荒れていることが多いんですが、ここはきれいに手入れされています。
ちなみにこの日はコンビニで買ったおにぎりをこのベンチで頂きました。
 
右岸から上流面
ダム下だけじゃなく天端両岸も公園になっています。
 
減勢工と副ダム
副ダムの下流には洗掘を防ぐためにブロック工が敷かれています。
さらに橋のすぐ下流には灌漑用の固定堰があります。
 
アングルを変えて
放流設備から河川維持放流が行われています。
 
総貯水容量429万立米の貯水池には特に名前はありません。
 
左岸の管理事務所
手前に艇庫とインクラインがあります。
 
ダム下流には肥前吉田焼の窯元があり、天端高欄には各窯元で焼かれた陶板がはめ込まれています。
 
天端は徒歩のみ立ち入り可能です。
 
管理事務所前の竣工記念碑。
金箔仕様です。
 
2551 横竹ダム(1434) 
佐賀県嬉野市嬉野町吉田
塩田川水系吉田川
FN
57メートル
249メートル
4290千㎥/3950千㎥
佐賀県県土整備部
2001年

万才溜池

2019-05-29 08:30:08 | 佐賀県
2019年5月23日 万才溜池
 
万才溜池は佐賀県鹿島市山浦の石木津川石木津川源流部にある鹿島市多良岳土地改良区が受託管理する灌漑目的のアースフィルダムです。
佐賀県の有明海沿岸では温暖な気候と地味豊かな地質を活かし昭和30年代より丘陵地でのミカン樹園地開発が進められます。
鹿島市から太良町にかけての多良岳北東山麓では1964年(昭和39年)に約630ヘクタールの樹園地開発・収穫量9000トンを目的とした『国営多良岳農地開発事業』が着手されその灌漑・防除用調整池として1969年(昭和44年)に竣工したのが花取溜池です。
事業全体も1981年(昭和56年)に竣工し、当池のほか花取溜池笹原溜池七曲溜が築造されるとともに延長123キロの配分水路網が整備され、当地域は佐賀県屈指のミカン生産地となりました。
しかし1991年(平成2年)のオレンジ輸入自由化により、ジュース向け原液がほぼ輸入品にとって代わったことで汎用ミカン価格が急落し全国のミカン農家は大打撃を受けます。
当地域でも離農や耕作放棄などが相次ぎましたが、現在は最高級品質の『祐徳ミカン』のブランド化に成功したほかレモン等への品種転換などにより生き残りを図っています。
なお、名称に『溜池』がついていますが国営事業で建設された農業用調整池ということで『農業ダム』の扱いとなりため池データベースにも記載がありません。

今回は中木庭ダム下流の本城集落から隘路の市道を南下して万才溜池に至りました。
標高約440メートルの山中にひっそりと佇む溜池と言いたいところですが、溜池すぐ下で伐採作業が行われておりずいぶん見通しがよくなっています。
手前の道路は伐採のために作られたブルドーザー道です。
堤高17.5メートルですが、見た目はもっと高く見えます。
 
天端から海は見えませんが、溜池の少し北側からは有明海越しに佐賀平野が遠望できます。
 
ダム下に下りてみます。
錆びついたトタン張りの施設、水がごぼごぼなっていますがこれが調圧水槽(減圧水槽)。
ここから専用の配分水路で受益農地に用水補給します。
 
左岸の洪水吐導流部
この穴の元がどうなっているのか?
 
天端は市道で車両通行可能です。
林業従事者の車だと思いますが、1時間ほどの見学中に数台の車が通りちょっと意外な感じ。
 
上の写真のガードレールから見た洪水吐導流部。
 
総貯水容量11万3000立米と小ぶりな貯水池
右手は横越流式洪水吐。
よく見ると貯水池中央に橋が見えます??
 
左岸の斜樋。
 
上流面はコンクリートで護岸。
 
さて気になった橋を見に行きます。
池の中央に掛かる謎の橋。
通りがかった林業関係の方に話を伺うと、もともとここには10軒程度の集落がありこの橋はその集落の名残だそうです。
 
2531 万才溜池(1433) 
ため池コード 412070020
佐賀県鹿島市山浦
石木津川水系石木津川
17.5メートル
128メートル
113千㎥/109千㎥
鹿島市多良岳土地改良区
1973年

中木庭ダム

2019-05-28 20:00:04 | 佐賀県
2019年5月23日 中木庭ダム
 
中木庭ダムは佐賀県鹿島市山浦の鹿島川水系中川源流部にある佐賀県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、中川及び鹿島川下流部の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、鹿島市への上水道用水の供給を目的として2007年(平成19年)に竣工しました。
その後2016年(平成28年)に河川維持放流を活用した小水力発電所が増設され、九州電力のグループ企業である西技工業(株)の運用により最大出力196キロワットの発電を行っています。
 
中木庭ダムは鹿島と長崎県大村を結ぶ国道44号線沿いにあります。
ダム湖畔には約7000株のアジサイが植えられ、開花期には県外からも多くの観光客が訪れる花の名所です。
 
ダム下は放流設備の手前から立ち入り禁止となっており全景はこれが精いっぱい。
非常用洪水吐として自由越流式クレストゲート10門、常用洪水吐として自然調節式オリフィスゲート1門を備えています。
 
左岸ダムサイトの竣工記念碑
文字は金箔仕様です。
 
天端は車道になっていますが、右岸から左岸への一方通行
左手はエレベーター棟、右手は取水設備操作室。
 
右手で放流しているのが利水放流設備、左手の白い建屋が増設された小水力発電所。
 
減勢工を真上から
副ダムの下流側は洗掘を防ぐために石が敷かれています。
山向こうの長崎県の萱瀬ダムでも同様に石が敷かれていましたがちょっと形状は異なります。
左岸のコンクリートの上の石は落石ではなく、佐賀県を象って並べられたようですがわかりづらい。
 
ダム湖に名前はありません、総貯水容量は680万立米。
 
下流面
両岸に堤趾導流壁があります。
 
上流面
手前は取水設備、奥がオリフィスゲート。
 
アングルを変えて上流面。
 
インレットから
ダム湖上流湖畔には約7000株のアジサイが植えられ、九州では有名なアジサイ鑑賞スポットになっています。
見ごろは6月上旬から下旬で、アジサイ祭りの開催に合わせてダム見学会なども行われるようです。
アジサイを見るには半月ほど早すぎたようで・・・・。
 
2552 中木庭ダム(1432) 
佐賀県鹿島市山浦
鹿島川水系中川
FNW
69.5メートル
265メートル
6800千㎥/6300千㎥
佐賀県県土整備部
2007年

天ケ瀬ダム

2017-10-16 19:15:24 | 佐賀県
2017年9月22日 天ケ瀬ダム
 
天ケ瀬ダムは左岸が佐賀県多久市多久町、右岸が同市南多久町長尾のの六角川水系牛津川右支流瓦川内川源流部にある灌漑用目的のアースフィルダムです。
現地案内板によれば農水省の補助を受けた佐賀県のかんがい排水事業により1982年(昭和57年)に完成しました。
運用開始後は多久市が受託管理を行い多久市南多久町地区のみかん果樹園337ヘクタールに灌漑及び防除用水の供給を行っています。
 
多久市南多久町長尾の県道25号線長尾交差点を南に折れ瓦川内川沿いを南下すると天ケ瀬ダムに到着します。
まずはダム下から
堤体直下には揚水機場があり、堤体は犬走りを挟んだ2段構成で基部は石積みの擁壁です。
 
左岸に洪水吐があります
もろ逆光で洪水吐導流部はこれが精いっぱい。
 
右岸高台から
このアングルも逆光、手前の棚田の稲穂が黄金色に輝いていました。
 
上流面はコンクリートで護岸。
 
天端は車両通行可。
 
天端から。
棚田が広がるのどかな風景。
 
下流面。
 
ダム湖は総貯水容量53万2000立米。
 
左岸の横越流式洪水吐。
 
アングルを変えて。
 
新規開拓されたみかん果樹園向けの貯水として建設されたアースダムですが、1990年代のオレンジ輸入自由化で佐賀のミカン農家は大打撃を受け、ダム周辺のミカン農地も放棄されるか畑地に転換されていました。
 
追記
天ケ瀬ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに1000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2541 天ケ瀬ダム(1157)
佐賀県多久市多久町
六角川水系瓦川内川
39.4メートル
270メートル
532千㎥/504千㎥
多久市
1982年
◎治水協定が締結されたダム

本部ダム

2017-10-16 16:38:45 | 佐賀県
2017年9月22日 本部ダム 
 
本部(もとべ)ダムは佐賀県武雄市若木町本部の松浦川水系川古川源流部にある佐賀県県土整備部が管理する多目的重力式コンクリートダムです。
建設省(現国交省)の補助を受けて建設された補助多目的ダムで、川古川の洪水調節、安定した河川流量の維持と既得取水権への用水補給、武雄市への上水道用水の供給を目的として1988年(昭和63年)に竣工しました。
 
県道25号に本部ダムの標識がありこれに従うとダムに到着します。
ダム手前で川古川右岸の道路に入るとダム下に着きます。
自由越流式クレストゲート7門、自然調節式のオリフィスゲート1門のゲートレスダムです。
河川維持放流が行われていますが、ダム下から放流設備は見えません。
 
ダム左岸県道沿いに管理事務所があり、ダムサイトは両岸ともに小さな公園となっています。
こちらは左岸にある建設当時の写真が埋め込まれたモニュメント。
 
左岸から下流面
堤趾導流壁の形が特徴的。
 
上流面
九州北部豪雨の際の水痕が残っていますが、本部ダムではオリフィスからの放流で支え切りクレスト放流には至らなかったようです。
 
減勢工
右岸に放流設備があり河川維持放流が行われています。
 
総貯水容量114万立米と小さなダム湖
上流の棚田が牧歌的。
 
左岸上流側にあるインクラインと艇庫。
地下格納式です。
 
天端
右手は管理事務所、左手は取水設備操作室。
 
右岸から減勢工と堤趾導流壁
左右非対称で波返しがついています。
 
右岸上流から。
 
追記
本部ダムには34万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに14万1000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2555 本部ダム(1156
佐賀県武雄市若木町本部
松浦川水系川古川
FNW
42.1メートル
130メートル
1140千㎥/1090千㎥
佐賀県県土整備部
1977年
◎治水協定が締結されたダム

岸川防災ダム

2017-10-16 15:10:29 | 佐賀県
2017年9月22日 岸川防災ダム
 
岸川防災ダムは佐賀県多久市北多久町多久原の六角川水系今出川左支流岸川にある農地防災目的の重力式コンクリートダムです。
農林省(現農水省)の補助を受けた佐賀県の防災ダム事業によって1962年(昭和37年)に建設され、運用開始後は多久市が管理を受託しています。
洪水時に最大毎秒95立米の水量を調節し今出川下流域154ヘクタールの農地を洪水被害から守ります。
 
厳木多久道路小侍インターから県道338号線を北上、岸川集落の先でダムへの取り付け道路を右にとるとダムに到着します。
ダム右岸高台の竣工記念碑があります。
 
高台から俯瞰。
 
右岸から
堤体の苔が時代感を醸し出しています。
 
上流面。
ゲートハウスが2段に重なる珍しい作り。
 
さらに上流から
写真では分かりませんがクレストに2門のローラーゲートがあり上段のゲートハウスはこの操作室です。
一方常用洪水吐となるコンジットには放流管となるコンジットパイプがありこちらもローラーゲート1門を装備。
下段のゲートハウスはこのローラーゲートの操作室になります。
2017年(平成29年)7月の九州北部豪雨の際に貯め込んだ痕が上流面にくっきりと残っています。
 
天端はゲート部分だけ前面に張り出しています。
一方ピアには上のゲートハウスに上がる螺旋階段がついています。
 
クレストのローラーゲート。
 
導流部には苔。
苔が生えるということはここから放流されることは少ないのでしょう。
一方、平時はコンジットパイプから流入量がそのまま放流されています。
 
有効貯水容量すべてが農地防災容量なので、平時はダム湖は空っぽ。
 
左岸から下流面。
 
昭和30年代のダムということで立派なゲートを装備しています。
上流面の汚れからもわかるように2017年(平成29年)7月の九州北部豪雨の際には貯水容量いっぱいに水を貯め込み、下流の農地を洪水被害から守りました。

(追記)
岸川防災ダムには農地防災容量が配分されていますが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行うための予備放流容量が配分されました。

2527 岸川防災ダム(1155) 
佐賀県多久市北多久町多久原
六角川水系今出川
26.5メートル
66メートル
330千㎥/306千㎥
多久市
1962年
◎治水協定が締結されたダム

厳木ダム

2017-10-16 12:46:18 | 佐賀県
2017年9月22日 厳木ダム 
 
厳木ダムは佐賀県唐津市厳木町広瀬の松浦川水系厳木川上流部にある国交省九州地方整備局が直轄管理する多目的重力式コンクリートダムです。
松浦川水系一帯での洪水や干ばつ被害、高度成長による都市用水増加への対処として1973年(昭和48年)に建設省(現国交省)は松浦川右支流厳木川上流部への多目的ダム建設を採択します。これに新たな揚水式発電所建設を模索していた九州電力が発電事業者として事業参加し1986年(昭和61年)に竣工したのが厳木ダムです。
厳木ダムは国交省が直轄管理する特定多目的ダムで、厳木川および松浦川の洪水調節、安定した河川流量の維持および既得取水権としての灌漑用水の補給、唐津市および多久市への上水道用水の供給、唐津市沿岸部への工業用水の供給を目的とするほか、揚水式発電により最大60万キロワットの発電を行う九州電力天山発電所の下部調整池となっています。
 
厳木多久道路牧瀬インターから県道37号を北上すると厳木ダムに到着します。
ダム下から
非常用洪水吐として自由越流式クレストゲートを5門クレスト、常用洪水吐として高圧ラジアルゲートを装備したオリフィスゲート1門とコンジットゲート2門を備えています。
また写真では見えませんが左岸(向かって右手)に利水放流バルブがあります。
 
右岸から
正面が管理事務所。
 
右岸展望台から俯瞰。
右岸がわずかに屈曲しています。
 
天端高覧にはみかんを模した装飾が施されています。
オレンジ自由化により廃れましたが、ダム周辺はかつて佐賀を代表するみかんの産地でした。
 
天端は車両通行可能。
 
減勢工
減勢池は逆L字の独特の形状
減勢工左手は利水放流設備、右手の芝生にダム湖名の『さよのうみ』の植栽が見えます。
 
ダム湖は『さよの湖』と命名され総貯水容量は1360万立米。
揚水式発電所である九州電力天山発電所の下部池となっています。
 
インクラインはなく左岸上流面に浮桟橋が設置されています。
 
建設記念碑。
 
上流から遠望
左から取水設備、オリフィスおよびコンジットゲートの予備ゲート、自由越流式クレストゲート。
 
国交省直轄ダムらしくダム湖周辺やダム下は公園として整備され見学ポイントは多彩です。
ただどの公園もちょっと荒れ気味であまり利用されていない雰囲気なのは残念です。
 
追記
厳木ダムには620万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに668万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2545 厳木ダム(1154
佐賀県唐津市厳木町広瀬
松浦川水系厳木川
FNWIP
117メートル
390.4メートル
13600千㎥/11800千㎥
国交省九州地方整備局
1986年
◎治水協定が締結されたダム

厳木川調整池(下田ダム)

2017-10-14 02:00:25 | 佐賀県
2017年9月22日 厳木川調整池(下田ダム)
 
厳木川調整池は佐賀県唐津市厳木町天川の松浦川水系厳木川上流部にある九州電力が管理する発電目的の重力式コンクリートダムです。
1930年(昭和5年)に東邦電力厳木発電所の取水ダムとして建設されました。1942年(昭和17年)の配電統制令により九州配電に接収されたのち、1951年(昭和26年)の電気事業再編政令により九州電力が事業継承しています。
ここで取水された水は厳木発電所に送られ最大出力5230キロワットのダム水路式発電を行っています。
1957年(昭和32年)にはダム直上に厳木第二発電所が建設され、第二発電所放流水の逆調整池としての機能も併せ持つことになります。
ダム便覧では厳木川調整池となっていますが、現地の案内板には厳木発電所取水ダムと書かれています。
一方地元ではダムのある小字名から下田ダムの呼び名が一般的です。
 
厳木ダムから県道37号を北上すると左手に厳木川調整池が現れます。
左岸県道から。
小規模な発電用取水堰でよく見られる全面越流式ダムです。
 
右岸に取水口。
 
ダム直下に管理橋があり開放されています。
ダムとの距離が近いので持参した24ミリ広角には収まりきりません。
右岸寄りに扶壁があり堤頂部にはゲート開閉用と思われるハンドルが、扶壁下部には放流口が見えます。
たぶん排砂ゲートかと思われます。
 
右岸擁壁は竣工当時と思われる練石積。
主堤体も竣工時は石張堰堤だったような雰囲気。
 
排砂ゲート。
 
ダム下流の管理橋
除去したゴミを県道まで運搬するモノレールが設置されています。
 
右岸取水ゲートにはゴミ除去用のスクリーンがあり、自動で排出されます。
 
周辺には戦前に作られた厳木発電所のほか、厳木第二発電慮、揚水式発電の天山発電所が密集しています。
 
追記
厳木川調整池は洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに4万1000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2515 厳木川調整池 (1153)
佐賀県唐津市厳木町天川
松浦川水系厳木川
15.5メートル
59.8メートル
84千㎥/41千㎥
九州電力
1930年
◎治水協定が締結されたダム

天山ダム

2017-10-13 15:17:56 | 佐賀県
2017年9月22日 天山ダム
 
天山ダムは佐賀県唐津市厳木町天川の六角川水系天川源流部にある九州電力が管理する発電目的のロックフィルダムです。
オイルショックを契機に電力各社は火力偏重の発電体制を見直し、火力や原子力との連携が図れ余剰電力を有効利用できる揚水発電に着目します。
福岡市周辺への人口集中や沿岸各所への工場進出などで電力需要のピークが上昇していた九州電力も1980年代より積極的に揚水発電所建設を進め、同電力2番目の純揚水発電所として1986年(昭和61年)に天山発電所が建設されました。
天山ダムは同発電所の上部調整池として同年竣工し、下部調整池である国交省管理の厳木ダムとの有効落差520メートルを利用して最大60万キロワットの揚水式発電を行っています。
上部ダムの天山ダムは有明海に注ぐ六角川水系、下部ダムの厳木ダムは玄界灘に注ぐ松浦川水系となっており、上部ダムと下部ダムで水系を超える揚水式発電となっています。
さらに天山ダムは九州電力、厳木ダムは国交省と異なる事業者によるダム間での揚水式発電も全国で二箇所に留まっています。
 
県道37号線を北上し厳木ダム、厳木川調整池をやり過ごし唐津市厳木町天川地区に入ると天山ダムを示す標識が現れます。
これに従って右折すると天山ダムに到着します。
天山ダムはダム右岸が公園になっていますが、堤体へは立ち入りできずフェンス越しに眺めるのみです。
おまけに訪問時はガスに包まれ堤体も見ること叶わず・・・。
 
ガスの切れ間に・・・・。
 
上流にあるこの施設は余水吐でしょうか?
 
水利使用標識。
 
天山ダムの案内板。
 
追記
天山ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに300万立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2550 天山ダム(1152)
佐賀県唐津市厳木町天川
六角川水系天山川
69メートル
380メートル
3270千㎥/3000千㎥
九州電力(株)
1986年
◎治水協定が締結されたダム

嘉瀬川ダム

2017-10-13 13:21:37 | 佐賀県
2017年9月22日 嘉瀬川ダム 
 
嘉瀬川ダムは左岸が佐賀県佐賀市富士町小副川、右岸が同市富士町畑瀬の一級河川嘉瀬川本流上流部にある国交省九州地方整備局が直轄管理する多目的重力式コンクリートダムです。
一級河川嘉瀬川は古くから九州最大の穀倉地帯である佐賀平野の水源となってきましたが、集水域が小さいため水量の季節変動が大きく、また中流平野部は天井川となっているため少雨による渇水と豪雨による洪水が頻発していました。
一方高度成長による都市用水需要の増加や農水省の農業水利事業の採択などにより新たな水源確保も切迫した課題となっていました。
そこで1973年(昭和48年)に建設省九州地方建設局(現国交省九州地方整備局)は嘉瀬川上流部への多目的ダム建設を軸とする『嘉瀬川総合開発事業』を採択しまが、用地買収交渉に20年以上の歳月を要し2005年(平成17年)にようやく本体工事に着手し2011年(平成23年)に嘉瀬川ダムが竣工しました。
 
嘉瀬川ダムは国交省が直轄管理する特定多目的ダムで、嘉瀬川の洪水調節、安定した河川流量を維持と既得取水権としての流域農地への灌漑用水の補給、農水省による『国営筑後川下流白石平野土地改良事業』による9180ヘクタールに対する新規灌漑用水の供給、佐賀市への上水道用水の供給、王子製紙への工業用水の供給、九州電力嘉瀬川発電所での最大2800キロワットのダム式水力発電を目的としています。
しかし、事業着手から完成までに40年近い年月を要し、この間に高度成長の終焉とバブル崩壊、人口減少時代への突入など経済・社会情勢が大きく変化したことで利水需要は当初見通しを大きく下回ることになります。
皮肉なことに嘉瀬川ダム竣工前年より国交省は全国のダム事業見直しを進め多くの事業が縮小・廃止となっています。
 
長崎自動車道佐賀大和インターから国道323号線を北上、古湯温泉を過ぎると右手に嘉瀬川ダムが現れます。
下流から
21世紀のダムらしくクレストには自由越流式洪水吐が並び、さらにオリフィスゲートが1門、コンジットゲートが2門設置されています。
 
右岸から下流面
両岸には堤趾導流壁。
 
天端は車両通行可能
今どきのダムらしく各種建屋はコンクリート打ちっぱなし。
 
減勢工
副ダムが2基あります。
 
左岸には九州電力嘉瀬川発電所と放流設備、ポンプ設備が並びます。
 
ダム湖は『富士しゃくなげ湖』と命名されています。
総貯水容量7100万立米は佐賀県では最大の貯水池です。
訪問時は貯水率30%、水位が非常に低くなっていました。
 
上流面と取水設備。
 
上流から遠望
取水設備の右手にコンジットゲートの予備ゲート、その間にオリフィスゲートがあります。
 
水位が低いため、普段見れない水没した施設が顔を出しています。
こちらはダム建設で水没した九州電力川上発電所の水圧鉄管。
 
道路とガードレール、そして橋梁。
 
ダム湖上流には副ダムがあります。
堤高29.5メートルで型式は台形CSG
ダム湖上流部の湖面水位維持を目的としています。。
 
追記
嘉瀬川ダムには1750万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに2977万7000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2553 嘉瀬川ダム(1151)
佐賀県佐賀市富士町小副川
嘉瀬川水系嘉瀬川
FNAWIP
97メートル
454.5メートル
71000千㎥/68000千㎥
国交省九州地方整備局
2011年
◎治水協定が締結されたダム

北山ダム

2017-10-13 02:31:21 | 佐賀県
2017年9月22日 北山ダム
 
北山(ほくざん)ダムは左岸が佐賀県佐賀市富士町関屋、右岸が同市富士町藤瀬の一級河川嘉瀬川本流上流部にある灌漑・発電目的の重力式コンクリートダムです。
佐賀平野は古くから九州有数の穀倉地帯となっていましたが、主要水源である嘉瀬川は天井川のためたびたび渇水による干ばつ被害が発生し安定した灌漑用水源の確保は流域農民の悲願でした。
一方戦後の食糧難に対処するため農林省(現農水省)は各所で『国営農業水利事業』を着手します。嘉瀬川流域でも1950年(昭和25年)に『国営嘉瀬川農業水利事業』が採択され、その中核施設となったのが北山ダムです。
一方戦後の電力不足を打開するために新たな電源開発を進めていた九州電力は同事業に電気事業者として事業参加、北山ダムは灌漑・発電目的の重力式コンクリートダムとして1955年(昭和30年)に竣工しました。
ダム湖の北山貯水池は総貯水容量2225万立米の規模を誇り、農業用ダムとしては九州最大、2012年(平成24年)に嘉瀬川ダムが完成するまでは佐賀県最大の貯水池となっていました。
北山ダムは運用開始後は佐賀土地改良区が受託管理を行い、管内9248ヘクタールの農地に灌漑用水を供給するほか、九州電力小関発電所で最大5600キロワット、鮎の瀬発電所で1万7600キロワット、南山発電所で4300キロワットと計2万7500キロワットの発電を行っています。
またダム湖周辺は県立脊振北山自然公園に指定され北山国民休養林や北山少年自然の家、21世紀県民の森などが整備される一方、ダム湖は有名な釣りスポットとなっており佐賀県有数のレクリエーションエリアとなっています。
 
嘉瀬川ダムから富士しゃくなげ湖に架かる銀河大橋を渡りそのまま県道を進むと北山ダムを示す標識が現れます。これに従って右折すると北山ダムが見えてきます。
クレストにラジアルゲート2門を装備。
 
右岸から
扶壁上にゲート操作室が乗るスタイルは中国電力のダムでよく見られる形状です。
扶壁のコンクリートが白く、最近ゲート部分の改修があったようです。
 
 
上流面
竣工から60年以上経過した年月を感じさせます。
対岸の塔は少年自然の家の展望台です。
 
灌漑用取水設備は半円形でいかにも戦前から昭和20年代のダムらしいデザイン。
有名な釣りスポットということで湖畔には貸しボートが並んでいます。
 
こちらは九州電力の発電用取水口。
これも昭和20年代らしい大掛かりな設備。
 
現在はゲート工事中ですが天端は歩行者・自転車が通行可能。
 
減勢工。
奥は放流設備からの水路。
 
どうやらダム下にも行けたようです。
後の祭り。
 
ダム湖の北山貯水池
総貯水容量2250万立米と佐賀県第二位の規模で、ダム湖の周囲すべてが公園となっています。
 
追記
北山ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により新たに279万4000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2524 北山ダム(1150)
佐賀県佐賀市富士町関屋
DamMaps
嘉瀬川水系嘉瀬川
AP
 
59.3メートル
180メートル
22250千㎥/22000千㎥
佐賀土地改良区
1956年
◎治水協定が締結されたダム

神篭池

2017-10-12 17:19:53 | 佐賀県
2017年9月22日 神篭池
 
神篭(こうご)池は佐賀市久保泉町川久保の筑後川水系巨勢川右支流(河川名未確認)にある灌漑目的のアースフィルダムです。
1929年(昭和4年)、1934年(昭和9年)と九州北部を立て続けに襲った大干ばつにより、佐賀県各所で溜池築造の機運が高まります。
神篭池も昭和10年代から建設の動きが出ますが土地買収に手間取ったうえ、戦争による人員・物資不足などから工事は遅延し、結局戦後復員兵や引揚者を動員して1948年(昭和23年)に竣工しました。
溜池名の神篭池は工事中に見つかった神籠石(古代山城の遺構)に由来しています。
完成後は受益者で組織される神篭池水利組合が管理を行っています。
その後国営筑後川下流土地改良事業により佐賀導水路からの受給が始まり安定した用水供給が可能となっています。
 
佐賀市中心部から県道51号を北上すると長崎自動車道の手前で右手に神篭池の堤体が見えてきます。
 
堤体を左手に回り込むと写真のような施設が現れます。
池のほぼ真下を佐賀導水城原金立線が通っており、需要期にはここからの補給を受けます。
奥に見える高架橋は長崎自動車道。
 
池の西側に天端に向かう道があります。
関係者以外立ち入り禁止と書かれたゲートがありましたが、たまたま水利組合の方がおられ許可を得て立ち入ることができました。
右岸湖畔にある取水設備
2008年(平成20年)の改修で設置されたものです。
 
堤体右岸上流側に橋が架かっています。
実はこれが洪水吐。
 
洪水吐導流部。
 
貯水池は総貯水容量31万7000立米。
奥の山は帯隈山で神篭池建設の際に古代山城跡らしき遺跡が発見されました。
池の名称はこの遺跡に由来します。
 
コンクリートで護岸された上流面。
 
 
天端。
 
天端から取水設備を望みます。
周辺にはミカン果樹園が広がりますが、1990年代のオレンジ輸入自由化によりこのあたりのミカン農家の多くは廃業したようです。
 
普段は関係者以外立ち入り禁止ですが、関係者の方がおられ池を見ることができました。
加えて佐賀導水からの補給やオレンジ輸入自由化によるミカン農家の苦境など詳しいお話を伺うことができました。
 
2523 神篭池(1149)
ため池コード 412010022
佐賀県佐賀市久保泉町川久保
筑後川水系巨勢川
16メートル
100メートル
316.8千㎥/285千㎥
神篭池水利組合
1948年

河内防災ダム

2017-10-10 02:51:32 | 佐賀県
2017年9月21日 河内防災ダム
 
河内防災ダムは佐賀県鳥栖市河内町の筑後川水系宝満川右支流大木川源流部にある農地防災及び灌漑目的のアースフィルダムです。
現地案内板によれば農林省(現農水省)の補助を受けた佐賀県の農地防災ダム事業により1971年(昭和46年)に竣工しました。
河内川流域の農地防災と流域農地への灌漑用水の供給を目的としており、運用開始後は鳥栖市が受託管理を行っています。
ダム湖右岸には鳥栖市が運営する温泉施設『とりごえ荘』があるほか、鳥栖市民の森や河川プールやキャンプ場などが整備され市民の憩いの場となっています。
 
鳥栖プレミアムアウトレットから県道329号線を西進すると左手に河内防災ダムが見えてきます。
堤高35メートルの立派な堤体。
 
天端は車止めがあり徒歩のみ通行可
ダム湖を周回する遊歩道の一部ですが、右岸の遊歩道はかなり荒れています。
 
右岸にある不思議な施設
たぶん放流施設の空気抜きだと思います。
 
ダム湖は総貯水容量119万5000立米
農地防災ダムですが灌漑用水容量があるため空っぽではありません。
上流の吊橋は『風の見える橋』。
 
左岸管理事務所。
 
右岸の横越流式洪水吐。
 
上流面は石張りで護岸。
 
白い設備が取水ゲート
普段は灌漑用水容量を確保した上で流入量をそのまま流下させています。
 
階段でダム下に降りました。
 
放流設備
上の取水口からの水がここで放流されます。
 
洪水吐と下流面。
堤体に一本だけ残る栗の木が印象的。
 
追記
河内防災ダムには農地防災容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流により併せて110万4000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
 
2528 河内防災ダム(1140)
佐賀県鳥栖市河内町
筑後川水系大木川
FA
35メートル
153メートル
1195千㎥/1102千㎥
鳥栖市 
1971年
◎治水協定が締結されたダム