2017年1月28日 作名ダム
2024年1月27日
作名ダムは千葉県館山市作名の汐入川水系作名川にある三芳水道企業団が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
館山市では1938年(昭和13年)に房州水道(株)により市街中心部での近代水道が開設されました。
戦後、市営水道として郊外で6簡易水道が逐次整備されますが、1973年(昭和48年)にうち4簡易水道を統合して館山市水道事業が開設され、その際新たな上水用水源として建設されたのが作名ダムです。
1979年(昭和54年)には房州水道及び残り2簡易水道を統合、1996年(平成8年)には南房総広域水道事業団からの受水が始まり水道水供給の安定化が図られました。
さらに1998年(平成10年)に館山市水道事業と市北部の水道事業を担っていた三芳水道企業団が事業統合し現在に至っています。
作名ダムでは一日最大6500立米の水を取水し、直下にある作名浄水場を経て市内に給水しています。
作名ダムには2017年(平成29年)1月に初訪、2024年(令和6年)1月に再訪しました。
当ダムはダムサイトおよび天端は開放されていますがダム下は立ち入り禁止です。
再訪時は許可を得てダム下に立ち入りました。
また掲載写真はすべて再訪時のものとなります。
立入禁止のダム下へ
堤高24.5メートル、堤頂長145メートル
放流設備はクレスト自由越流頂のみ。
堤体直下まで接近。
奥に見えるのは作名配水場。
二つのハンドルは取水設備から浄水場へ送る導水管の 水量調節用。
普段水量を変えることはほとんどないそうです。
左手は監査廊入り口。
監査廊を覗いてみます
奥に漏水計が見える。
天端に向かう途上で
房総の上水ダムではおなじみ、ゲート部分だけ天端が高くなっています。
この位置からは葉が茂ると視界は遮られそう。
ちょっと見づらいですが、副ダムの右手から水が漏れています。
こちらは河川維持放流で、取水口から浄水場への導水管から分水されます。
右岸から
高欄が下流側にせり出した独特の作り。
右岸ダムサイトに立つ建設記念碑。
当ダムの完成により館山市の水道事業は従来の簡易水道から本格的な市営水道へ進化しました。
天端から減勢工を見下ろす。
落葉しているのは桜ですが、幹が白化しておりそろそろ寿命か?
左岸からさらに林道が続き天端は車両の通行が可能です。
奥は作名配水場で浄水場からここにポンプアップされたのち市内各地に給水されます。
取水設備の操作機器
4段の多段式取水口と土砂吐ゲートの操作機器が並びますが、現在は一定の比率で取水しているためこれらの機器を操作することはないそうです。
中央の筒状のものは空気孔。
左岸はわずかに屈曲しカドになっています。
カドといえばこのショット。
ダムの上流面
取水設備は半円形で貯水池に突き出ているのは水位計。
総貯水容量は63万立米で貯水容量の約半分は山の東向こうの汐入川本流からの導水に依ります。
そのせいか?他の南房総の貯水池に比べ水の濁りは少なく感じます。
ダム直下の作名浄水場
ここからいったん高台の作名配水池に送られたのち給水されます。
南房総地域では、昨今の人口減少や水道施設の老朽化等に対処するために2015年(平成27年)に千葉県が示した「県内水道の統合・広域化の進め方(取組方針)」に従い、安房地区の鋸南町・三芳水道事業団・南房総市・鴨川市各水道事業者の事業統合に向けた調整が進められており、早晩事業の統合が実施される見込みです。
0674 作名ダム(0817)
千葉県館山市作名
汐入川水系作名川
W
G
24.5メートル
145メートル
630千㎥/590千㎥
三芳水道企業団
1973年
実際に見るのと
画像で見るのとではきっと違うのでしょうが
ダムの竣工によって簡易水道から
本格的な市営水道になる
きっとダムや水道関係に詳しい人なら当たり前の知識なのかもしれませんが
私なんぞは、素直に「ああ、そうなんだ」と頷かされます。
バブル崩壊以降の景気の低迷と人口減少時代の到来で地方の水道事業はどこも苦しい経営を余儀なくされています。
基本的には給水量の増加増加=収入増という構図なんですが、限りある水資源の元「節水」を呼びかける手前、水をもっと使ってくれとは言えないジレンマ。
この辺が水道事業者の苦しいところですね。
多くの自治体は水道開設から50年以上経過し施設の老朽化も大きな課題。
人の口に入るものですから、民営化による効率化はそぐわない。
結局事業の統合、広域化による効率化しか手がないのが実情です。