2023年11月24日 木曽川大堰
木曽川大堰は左岸が愛知県稲沢市祖父江町馬飼、右岸が岐阜県羽島市桑原町前野の一級河川木曽川本流にある水資源機構が管理する灌漑・上水・工水目的の可動堰です。
木曽三川下流域の濃尾平野は古くから国内有数の穀倉地帯となってきましたが、感潮区域が河口から26キロにも及ぶため木曽川や長良川に設けられた85か所の取水口での取水は困難を極めました。
当初は農林省(現農水省)により85か所の取水口の合口と灌漑用水路の整備を軸とした木曽川用水事業が着手されますが、1965年(昭和40年)に木曽川が『水資源開発基本計画(フルプラン)』の指定を受けたことで水資源開発公団(現水資源機構)による河川総合開発が進められることになり、1969年(昭和44年)に同公団による木曽川総合用水事業が着手されました。
同事業は1976年(昭和51年)に木曽川水系馬瀬川に竣工した岩屋ダムを水源とし、岐阜県南部の木曽川右岸地帯を受益地とした上流部事業と濃尾平野南部や愛知県・三重県を受益地とした下流部事業に大別され、木曽川大堰は下流部事業の取水堰として1974年(昭和49年)に竣工しました。
木曽川大堰は木曽川下流域約7900ヘクタールの農地への灌漑用水の供給、三重県北部3市3町への上水道用水の供給、愛知県及び三重県への工業用水の供給を目的としています。
また隣接する木曽川用水総合管理所では木曽川大堰の管理のみならず、上流部事業・下流部事業・長良川河口堰を取水堰とする長良導水事業を統合管理するほか、発電や愛知用水等他の利水事業者と綿密に情報交換を行い適正な配水管理を行っています。
木曽川用水下流部事業概要図
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なお、木曽川大堰の堤高は4.2メートルでダムの要件を満たしていませんが、水資源開発公団法(現水資源機構法)によって建設されたため堤高如何に関わらず河川法上のダムとなります。
また、当初農林省により事業着手されたこともあり現地では『馬飼頭首工』の名で呼ばれることもあります。
今回は水資源機構の職員様による解説・案内で木曽川用水総合管理事務所や大堰を見学することができました。
見学の詳細は『木曽川大堰ダム研見学会』をご覧ください。
見学の詳細は『木曽川大堰ダム研見学会』をご覧ください。
木曽川大堰を管理する水資源機構木曽川用水総合管理所の玄関。
通常ここから先は関係者以外立ち入り禁止となります。
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敷地にある木曽川用水通水20周年記念碑。
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同じく敷地内のモニュメント。
水資源開発公団時代のシンボル。
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まずは職員様による木曽川用水のレクチャーから。
木曽川用水総合管理所では木曽川大堰の管理のみならず、上流部事業・下流部事業・長良川河口堰を取水堰とする長良導水事業を統合管理するほか、発電や愛知用水等他の利水事業者と綿密に情報交換を行い適正な配水管理を行っています。
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管理所屋上から木曽川大堰を望みます。
堰長587メートル、堤防間距離735メートルで木曽川を締め切ります。
堰には土砂吐ゲート2門、調節ゲート3門、洪水吐ゲート9門、舟通し2か所、魚道3か所を備えてます。
また管理橋は県道134号線馬飼大橋となっています。
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同じく屋上から
右手の白い建屋が木曽川左岸取水ゲート
中央は静水池。
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木曽川大堰左岸袂に移動します。
下流から
右手から土砂吐ゲート、舟通し、調節ゲート、洪水吐ゲートという並び。
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越流しているのは調節ゲート。
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舟通し
他所では閘門と呼ばれることが多いですが、木曽川大堰では舟通しと呼びます。
右手は土砂吐ゲートでゲート下部から放流しています。
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左岸の魚道
ほかにも2か所、計3か所に魚道があります。
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取水ゲート
最大毎秒41.83立米を取水します。
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水利使用標識。
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こちらは流量計。
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こちらは管理所裏手にある利水神社。
もともと当地にはかつての主要灌漑用水路である佐屋用水取水口があり、海部幹線水路の大半は佐屋用水を辿って設置されました。
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本来なら木曽川大堰の管理橋であるま馬飼大橋も歩いて見学すべきところですが、ゲート補修工事が行われ交通量も多かったことから今回は自重しました。
工事の終了後に改めて訪問したいと思います。
木曽川大堰は木曽川最下流の河川構造物であるにもかかわらず、ダムカードがないこともありダム愛好家の中では軽視されがちな存在であることは否めません。
しかし、今回の見学において、利水のみならず木曽川全体の管理においても非常に重要な役割を果たしていることを認識できました。
対応していただきました水資源機構木曽川用水総合管理所の職員様には厚く御礼申し上げます。
1228 木曽川大堰(2028)
左岸 愛知県稲沢市祖父江町馬飼
右岸 岐阜県羽島市桑原町前野
北緯35度15分08秒,東経136度41分19秒
DamMaps
木曽川水系木曽川
AWI
DamMaps
木曽川水系木曽川
AWI
MB
4.2メートル
586.2
---㎥/---㎥
水資源機構
1974年
586.2
---㎥/---㎥
水資源機構
1974年
「ダムカードがないこともありダム愛好家の中では軽視されがち」
の下りには驚かされました。
言い換えれば、カード発行にはそれだけの理由があるということなんですね。
もちろん個人の嗜好は人それぞれ、そこに善悪や優劣はありません。
でも、管理所や道の駅などでカードもらったらダムの写真も撮らずましてや見向きもせずに次のダムのカードを求めるコレクターの多いこと。
たぶんマンホールでも同じ状況だと思います。
ダムカードはダムに来るきっかけとしては素晴らしいツールですが、実際にはダム愛好家の数十倍ものカードコレクターや転売ヤーを生み出しています。
さらにダム愛好家の大半もカードのあるダムを優先して回る。
こういう人たちをいかにしてもっと深い『沼』に引きずり込むのか?
それが私たちダムマイスターの役目の一つだと思っています。