2016年2月21日 安房中央ダム
2024年1月28日
安房中央ダムは左岸が千葉県南房総市川谷、右岸が同市御子神の丸山川水系丸山川にある安房中央土地改良区が管理する灌漑目的のアースフィルダムです。
房総半島南端、館山市から南房総市にわたる安房中央地区は地味豊富ながら大河がないなど水利に乏しく安定した水源確保は地域農家の悲願となっていました。
これを受け1961年(昭和36年)に千葉県営かんがい排水事業安房中央地区が着手され1978年(昭和53年)に完了。
これにより灌漑用貯水池である安房中央ダムや基幹幹線水路が建設され、さらにその後の圃場整備事業により1988年(昭和63年)には1000ヘクタールを超える土地改良区域内全域の農地整備が実現しました。
安房中央ダムには2016年(平成28年)2月に初訪、2024年(令和6年)1月に再訪しました。
ダムの天端は関係者以外立ち入り禁止となっており下流から見学するのみですが、再訪時はダムを管理する安房中央土地改良区に立入をお願いし、職員様の案内で見学が叶いました。
掲載写真はすべて再訪時のものです。
ダム下から
堤高32メートル、堤頂長110メートルの均一式アース
洪水吐導流部は隧道のため斜水路はありません。
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下流面はきれいに草が刈られています。
人手不足の中、草刈ロボットを使っているそうです。
ロボットが草を刈る様子を見てみたい。
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貯水池は総貯水容量211万3000立米
農業専用ダムとしては千葉県内3番目の規模
手前のプールは堆砂を排出する際の乾燥用。
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天端からの眺め
ダム下に民家が一軒。
ダムができる前はここが丸山川の流路でした。
ダム下には排出した土砂が積まれています。
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インクライン
今は使っておらず正式にはインクラインの遺構。
右手に横越流式洪水吐、貯水池には取水塔。
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改修工事が終わり貯水池は湛水中。
取水設備は表面取水塔
房総では一の沢堰や山田溜池でこの手の取水塔が見られます。
水は房総らしく濁っています。
濁水は灌漑施設などへの負荷はかかりますが、稲作にとっては重要なミネラルを供給します。
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左岸の横越流式洪水吐。
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導流部はトンネル。
越流した水は丸山川に放流されます。
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管理事務所
職員の常駐はありませんが、今回は職員様帯同の見学ということで開けていただきました。
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水利使用標識。
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土地改良区設立50周年の記念碑。
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国道410号線を超えて丸山川に下ります。
向かって左手は洪水吐の減勢工
トンネルを抜けた後はジャンプ台になっており捻りが入ります。
機械室を挟んで右手は放流設備
灌漑用水と維持放流や水位低下放流の分水ゲートがあります。
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洪水吐の減勢工
捻りの入ったジャンプ台は初見。
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こちらは取水塔からの吐口
仮排水路を利用しこの奥にホロージェットバルブがあります。
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こちらは灌漑用幹線水路
計約25キロの幹線水路で受益農地に用水を補給します。
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向かって右手が灌漑用ゲート
左手が維持放流及び水位低下用放流ゲート。
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ダムを案内していただいた土地改良区の事務局長さんは千葉県OBでダム管理技士の資格を持つダムのエキスパート。
地理や地質にも精通され、多面的な切り口でダムを案内していただき大変勉強になりました。
厚く御礼申し上げます。
(追記)
安房中央ダムは洪水調節容量を持たない利水ダムですが、治水協定により台風等の襲来に備え事前放流を行う予備放流容量が配分されました。
0667 安房中央ダム(0236)
左岸 千葉県南房総市川谷
右岸 同市御子神
丸山川水系丸山川
A
E
32メートル
110メートル
2113千㎥/2096千㎥
安房中央土地改良区
1972年
◎治水協定が締結されたダム
重要なミネラルの供給となる」
自然界に無駄なものなど無い・・と
改めて感じさせられる一言でした
かつて海底にたまった栄養分豊富な土砂が濁水を作り上げています。
これが上水道なら浄水にも大きな負担がかかるのですが、田んぼに使う分には栄養たっぷりの土のミルクです。