2017年1月28日 小向ダム
2024年1月26日
小向ダムは千葉県南房総市和田町小向、右岸が同町南三原の三原川水系三原川にある南房総市水道局が管理する上水道用水目的の重力式コンクリートダムです。
房総半島南端に位置する旧千倉町・和田町・丸山町は昭和40年代後半から3町共同で水道事業を進めるため一部事務組合である朝夷水道企業団を設立、その上水用水源として1976年(昭和51年)に竣工したのが小向ダムです。
併せてダムに隣接して小向浄水場も完成し、同年3町への給水が開始されました。
その後2006年(平成18年)に安房郡6町1村が合併して新たに南房総市が誕生、旧富浦町と旧三芳村を除く水道事業は南房総市水道局に統合され小向ダムの管理も同局が引き継ぎました。
小向ダムでは2020年(令和2年)にクレストゲート置換工事のため水位を低下させましたが、その後の記録的な少雨により貯水率が30%まで低減、渇水が2か月続き一躍その名を全国に広める事態となりました。
小向ダムには2017年(平成29年)1月に初訪、2024年(令和6年)1月に再訪しました。
初訪時の写真には撮影日時を記載、それ以外の写真はすべて再訪時のものです。
小向ダムは県道186号線沿いにあります。
数多い千葉県の上水ダムでは唯一ゲートを装備した本格的な重力式コンクリートダムです。
さらに洪水吐のローラーゲートも千葉県では珍しく、装備しているのはここと高滝ダムの2基のみです。
ゲートをズームアップ
こちらはゲート置換前、栗本鐵工所製のローラーゲート。
(2017年1月28日)
こちらは新しいゲート
大同機工製。
ダムの下段に白い水路管と桝が見えます。
これは利水放流用の設備で桝は量水計で放流の際には桝から溢流させる仕組み。
天端は対岸に通じる車道になっており、ゲート部分だけ下流側にクランク。
右岸ダムサイトの竣工記念碑。
当時の朝夷水道企業団により昭和51年に竣工と記されています。
上流面
ゲート左手に円形取水塔。
天端から減勢工を見下ろす
湾曲した2本の導流堤が特徴的
初訪時は左手の桝から河川維持放流が行われていました。
(2017年1月28日)
総貯水容量95万立米のダム湖。
房総らしく水は濁っています。
新旧ゲートのプレート
このゲート置換工事のため水位を低下させたところ、記録的な少雨のため2020年(令和2年)12月から翌年1月にかけて渇水状態となりました。
新ゲートを見おろすと
ここではゲートの昇降にチェーンが使われます。
一般にワイヤーが使われチェーンのローラーゲートは初めて見ました。
件のチェーン。
円筒形の取水設備
荏原製作所製の選択取水設備。
左岸の艇庫とインクライン。
右岸にはホロージェットバルブ
利水放流用ではなく水位低下用。
右岸上流から
こちらは初訪時の写真で、円形取水設備の手前に利水放流用のフロート式表面取水設備が設置されています。
ここで取水された水が上から4枚目写真の水路管を経て利水放流されます。
(2017年1月28日)
同じアングルで再訪時の写真。
なんとフロート式表面取水設備が沈没。
近々改修予定とのことですが、それまでは利水放流設備は使えずバブルで代用するようです。
渇水騒ぎで一躍知名度を上げた小向ダムですが、千葉県で2基しかないローラーゲート装備ダム、さらには非常に珍しいチェーン式ローラーゲートなど見どころの多いダムです。
昨今の人口減少、水道施設の老朽化等に対処するために2015年(平成27年)に千葉県が示した「県内水道の統合・広域化の進め方(取組方針)」に従い、安房地区の鋸南町・三芳水道事業団・南房総市・鴨川市各水道事業者の事業統合に向けた調整が進められており、早晩事業の統合が実施される見込みです。
0670 小向ダム(0821)
左岸 千葉県南房総市和田町小向
右岸 同市和田町上三原
三原川水系三原川
W
G
37メートル
106メートル
950千㎥/750千㎥
南房総市水道局
1976年
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