2017年9月22日 嘉瀬川ダム
嘉瀬川ダムは左岸が佐賀県佐賀市富士町小副川、右岸が同市富士町畑瀬の一級河川嘉瀬川本流上流部にある国交省九州地方整備局が直轄管理する多目的重力式コンクリートダムです。
一級河川嘉瀬川は古くから九州最大の穀倉地帯である佐賀平野の水源となってきましたが、集水域が小さいため水量の季節変動が大きく、また中流平野部は天井川となっているため少雨による渇水と豪雨による洪水が頻発していました。
一方高度成長による都市用水需要の増加や農水省の農業水利事業の採択などにより新たな水源確保も切迫した課題となっていました。
そこで1973年(昭和48年)に建設省九州地方建設局(現国交省九州地方整備局)は嘉瀬川上流部への多目的ダム建設を軸とする『嘉瀬川総合開発事業』を採択しまが、用地買収交渉に20年以上の歳月を要し2005年(平成17年)にようやく本体工事に着手し2011年(平成23年)に嘉瀬川ダムが竣工しました。
嘉瀬川ダムは国交省が直轄管理する特定多目的ダムで、嘉瀬川の洪水調節、安定した河川流量を維持と既得取水権としての流域農地への灌漑用水の補給、農水省による『国営筑後川下流白石平野土地改良事業』による9180ヘクタールに対する新規灌漑用水の供給、佐賀市への上水道用水の供給、王子製紙への工業用水の供給、九州電力嘉瀬川発電所での最大2800キロワットのダム式水力発電を目的としています。
しかし、事業着手から完成までに40年近い年月を要し、この間に高度成長の終焉とバブル崩壊、人口減少時代への突入など経済・社会情勢が大きく変化したことで利水需要は当初見通しを大きく下回ることになります。
皮肉なことに嘉瀬川ダム竣工前年より国交省は全国のダム事業見直しを進め多くの事業が縮小・廃止となっています。
長崎自動車道佐賀大和インターから国道323号線を北上、古湯温泉を過ぎると右手に嘉瀬川ダムが現れます。
下流から
21世紀のダムらしくクレストには自由越流式洪水吐が並び、さらにオリフィスゲートが1門、コンジットゲートが2門設置されています。
右岸から下流面
両岸には堤趾導流壁。
天端は車両通行可能
今どきのダムらしく各種建屋はコンクリート打ちっぱなし。
減勢工
副ダムが2基あります。
左岸には九州電力嘉瀬川発電所と放流設備、ポンプ設備が並びます。
ダム湖は『富士しゃくなげ湖』と命名されています。
総貯水容量7100万立米は佐賀県では最大の貯水池です。
訪問時は貯水率30%、水位が非常に低くなっていました。
上流面と取水設備。
上流から遠望
取水設備の右手にコンジットゲートの予備ゲート、その間にオリフィスゲートがあります。
水位が低いため、普段見れない水没した施設が顔を出しています。
こちらはダム建設で水没した九州電力川上発電所の水圧鉄管。
道路とガードレール、そして橋梁。
ダム湖上流には副ダムがあります。
堤高29.5メートルで型式は台形CSG
ダム湖上流部の湖面水位維持を目的としています。。
追記
嘉瀬川ダムには1750万立米の洪水調節容量が設定されていますが、治水協定により豪雨災害が予想される場合には事前放流によりさらに2977万7000立米の洪水調節容量が確保されることになりました。
2553 嘉瀬川ダム(1151)
佐賀県佐賀市富士町小副川
嘉瀬川水系嘉瀬川
FNAWIP
G
97メートル
454.5メートル
71000千㎥/68000千㎥
国交省九州地方整備局
2011年
◎治水協定が締結されたダム
ハッと胸を突かれるような光景でした
ああ・・確かに人の暮らしがあったのだ
切ないような思いで、何度も見返しました
、それの何万倍、いや何億倍もの恩恵が得られたのも紛いない事実。
以前も申し上げましたが、万人が納得できる政策なんてない。
最大多数の最大幸福こそが民主社会の基本。
わたしはダム愛好家なのでマスコミが発信しないこの恩恵の部分を発信したいと思っています。
様々な葛藤の末に、その選択をしたのはこの景色の中に住んでいた人たちだと思います。
ダムによって生み出された多くの恩恵は、翻ってこの景色の中に住んでいた人たちに返って来たと信じたいからです。
わたしはまっちさんのダムに対する愛情のようなもの、それによって生み出される恩恵の紹介部分が大好きです。
ダム建設の経緯から「最大多数の最大幸福」では済ませられない部分もある事業です。
このダムについては月内にもアップする予定です。