軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

チョウが少ない

2021-09-17 00:00:00 | 
 6年前に軽井沢に転居してすぐに始めたことは、庭にチョウを呼ぶための花が咲くブッドレアを植えたことと、ダイニングルームの窓の外に野鳥の餌台を設置したことであった。

 野鳥の餌台の方は、転居の挨拶に行ったご近所のMさんからのプレゼントであり、自ら進んで行ったことではなかったが、ブッドレアは妻と相談してこの種を選び植えたのであった。

 両者ともすぐに効果を現し、庭に野鳥もチョウも来るようになって、その様子は「庭にきた鳥」と「庭にきた蝶」として順次紹介してきている。

 これまでに野鳥8種とチョウ28種を紹介した。思うような動画や写真が揃わずに、まだ紹介できていないものはこのほかにもいて、野鳥については確認しただけでも20種以上が餌台にきているし、私たちが気づかないうちにやってきた種も当然いるだろうから、実際に庭にやってきた種類は野鳥もチョウもこれよりも多いことになる。

 ところが、昨年春から我が家ではネコを飼い始めた。その前にも数か月間我が家にネコがいて、このネコのことは「我が家にネコがきた」(2020.3.13 公開)で紹介した。

 この最初の預りネコを娘に返した後、ネコ・ロスになった妻がどうしてもネコを飼いたいと言い出したので、近隣地区の保護ネコを1匹いただいて飼いはじめたのである。2020年4月ごろのことである。
 
 我が家の中を好き勝手に動き回るこのネコはすぐに窓外にある野鳥の餌台に興味を示し、野鳥がやってくると窓の近くに行ってじっと観察するようになり、時には窓ガラスにぶつかるようにして狩りのまねをするようになった。

 こうして、野鳥たちは次第に餌台に来なくなってしまった。私の方もそれに伴って餌を撒かなくなったので、いまはもう野鳥は庭の餌台にくることはなくなってしまった。

 ブッドレアの方は黄色の花の種と薄紫色の花の咲く2種類を植えていたが、黄色の花の咲いていた方は3年目に枯れてしまい、今は薄紫色の方だけが残っていて、こちらは相変わらずたくさんの花を咲かせ、周囲に芳香を漂わせている。

 ところが、今年はこのブッドレアの花にくるチョウの数がこれまでに比べると極端に少ないようである。植えて2年目からはあれほど多くのチョウを集めてくれたのに、一体どうしたことだろうかと思っている。

 7月下旬に最初の花が咲いたので見に行ったときには、トラフシジミが早速やってきていて写真撮影もできたので、今年もまた多くのチョウがやってくるものと期待をしていたが、その後はスジグロチャバネセセリ、ジャノメチョウとヒメアカタテハをそれぞれ一度見かけただけで、パッタリとチョウが来なくなっている。来ているのはハナバチばかりという状況である。

咲き始めたブッドレアにきたトラフシジミ(2021.7.20 撮影)

ブッドレアの脇に咲くアザミで吸蜜するスジグロチャバネセセリ(2021.8.1 撮影)

ブッドレアにきたジャノメチョウ(2021.8.4 撮影)

ブッドレアで吸蜜するヒメアカタテハ(2021.8.10 撮影)

 一体どうしたのだろうかと妻と話し合っているが、ご近所のHさんから妻が聞いたところでは、やはり今年は軽井沢周辺でチョウが少ないと感じているという。

 神奈川県に住んでいる元の職場の上司のMさんは横浜市内の自宅と、山中湖の別荘を行き来して、チョウの写真撮影をしている方であるが、やはり今年はチョウが少ないと感じているという。

 さらに、同じチョウ仲間で、やはり湘南で毎日のようにチョウを求めて散歩を続けている元の職場の先輩Sさんからも、今年はチョウがとても少ないというメールが届いた。

 我が家だけではなく、軽井沢だけでもなく、関東地方も含めた地域で同じように今年はチョウが少ないと感じているひとがいるのは一体どうしたことだろうか。

 長期的な傾向としてチョウの減少が起きていることは、かねて指摘されていることで、これは生息環境の変化として論じられることが多い。

 軽井沢周辺でもアサマシジミやオオルリシジミの急激な減少があり、隣接する御代田町ではアサマシジミを天然記念物に指定しているし、オオルリシジミについては現地企業の協力のもと食草のクララを植え環境を整えるなどして保護活動が行われている。
 
 チョウマニアによる採集圧力についても議論になることがあるが、確かに生息地における食草を含めたチョウの卵や幼虫の採取が問題視され、採集禁止条例を制定する自治体も増えてきている。

 しかし、それにもかかわらずチョウの数の減少は止まっていない。オガサワラシジミなど絶滅が伝えられている種がいることを、当ブログでも採りあげたことがある(2020.9.4 公開〈日記〉)。

 他方で一部のチョウが異常発生しているといったこともこれまでに起きている。私自身、2013年に青森県弘前市の山中に、アカシジミの大量発生を見に行ったことがあり、夕方の空が暗くなるほどの、その数の余りの多さに圧倒された経験がある(2017.6.30、2017.7.7 公開〈旅行〉)。

 また最近では昨年までテングチョウが中国・関西地方で異常発生しているとの報道がある(2021.4.16 公開〈蝶〉)。

 生息環境の変化のほかに、一体何が原因でこうした急な減少傾向や、これとは相反する異常大発生が起きているのだろうかと思い、あれこれ調べてみて次の2つの記事に出会った。いずれも地球温暖化に関係している。

 ひとつは、2016年の英国の記事で、次のようである(https://jp.sputniknews.com/science/201611012961832/)。

 「気候変動に関係した異常気象的な現象の頻発化のため、温帯気候帯にある多くの国で、多くの蝶の個体群が消えたか、目に見えて減少している。論文は『Journal of Animal Ecology』に掲載された。
 イースト・アングリア大学の気候学者は次のように述べた。
 多くの異常現象は極めて否定的に蝶に影響していることが明らかになった。例えば、芋虫が蛹に変わる時の降雨は英国に住む蝶25%にとって極めて危険であり、蝶にとって最も危険な天候現象である異常に高い冬季の気温は、半分以上の種に関係する。おそらく、冬季の暑さは蝶を冬眠から目覚めさせ、その後、寒さが戻ってきたときに死なせる。」

 「英国の学者たちは憂慮すべき信号を出し、それによると、2050年までにジャノメチョウ亜科、モリジャノメ属、セセリチョウ科、オオモンシロチョウ、モンシロチョウ、エゾスジグロシロチョウといった6種の蝶が英国と全世界において完全に消滅する可能性がある。」というものである。

 もう一つは、2021年の記事で米国に関する。

 「米国西部450種のチョウが減っている、原因は『暖かい秋』・40年分のチョウ目撃データと気候データを分析」(ナショナルジオグラフィックニュース 2021.03.10 )。

 「米国西部でチョウが減っている。過去40年のデータから、450種以上のチョウの個体数が年平均で1.6%減っていることが判明、3月5日付けで学術誌『Science』に発表された。
 チョウははかなく美しいだけでなく、様々な植物の花粉を媒介している。それが、米西部では急速に姿を消しつつある。
 よく知られているオオカバマダラは、個体数が99%も激減したにもかかわらず、米国の絶滅危惧種法による保護の対象としない決定が2020年12月になされた。しかし今回の調査では、あまり知られていない種が絶滅に向かっていることが明らかになった。シジミチョウの仲間イカリオイデスヒメシジミ(Icaricia icarioides)やカリフォルニア州の州蝶であるモンキチョウの仲間、カリフォルニアイヌモンキ(Zerene eurydice)といったチョウだ。

 『どの種も減少しています』と、米ネバダ大学リノ校の生物学教授で、今回の研究を率いたマシュー・フォリスター氏は言う。『あらゆる種が危機に直面しているのです』
 科学者たちは今回、チョウにとって最大の脅威と思われる気候変動に着目した。1972年から2018年までに集めた、米西部70カ所におけるチョウの目撃データと気候データを分析したところ、驚きの事実が判明した。フォリスター氏によると、チョウの個体数が減少した原因として最もはっきり表れたのは『暖かい秋』だった。
 全米の200以上の都市で秋の気温は上昇しているが、その中でも南西部での上昇は激しい。例えばアリゾナ州では、1895年以降10年ごとに秋の気温が華氏0.2度(摂氏約0.1度)ずつ上昇している。そのためか州内では、オレンジと黒の鮮やかなチョウ、ルリボシヒメアカタテハ(Vanessa annabella)が年間3パーセントの割合で減少している。
 『私たちはここ数十年、春(の温暖化)に着目してきました』とフォリスター氏は言う。しかし、『暖かい季節の終わりの温暖化にこそ、大きなマイナスの影響があったのです』・・・」
 
 秋の温暖化がなぜそれほど有害なのかについては、「チョウが秋にとる休眠に関係しているかもしれない」とされる。「チョウのほとんどは1年程度生存するが、暖かさのために休眠状態に入るのが遅れ、飢えに追い込まれている可能性がある。」という。
 「言い換えれば、彼らは『より早く老いてカリカリになって死んでしまう』のだと、論文著者の一人である昆虫学者、ケイティ・プルディック氏は言う。同氏は米アリゾナ大学天然資源環境学部で市民科学・データ科学の准教授を務めている。」

 これは、越冬蝶の話かと思える。チョウの仲間には、卵で越冬するもの、幼虫で越冬するもの、蛹で越冬するものなどもいる。今回の指摘が成虫越冬する種についてだとすると、それ以外の種ではどうなるのかという問題が残る。

 以上の2件の報告は英国と北米でのものであるが、温暖化は世界共通の現象、日本でも同じようなことが起きている可能性はあるのだろうか。

 温暖化により、チョウの生息域が北上しているということはこれまでに言われてきていることであるが、温暖化でチョウが減少するというのは意外なことであった。

 我が家の庭のブッドレア、1番花にやってきたチョウがが少なかったことは前述の通りだが、その後2番花が咲き始めた9月になって、アオバセセリ、アカタテハや夏眠からさめたミドリヒョウモンが吸蜜にやってくるようになった。ただ、種数も個体数も相変わらず少ないことには変わりがない。


ブッドレアで吸蜜するアオバセセリ(2021.9.10 妻撮影)

ブッドレアで吸蜜するアカタテハ(2021.9.10 妻撮影)

 朝一番でやって来た数頭のミドリヒョウモン、中には食餌に熱中するあまり、私が指を差し出しても意に介する様子のないものがいて、人差し指で掬い上げるようにして指に止まらせると、こちらを睨みつけているようである。この写真はちょうど持っていたスマホを使って、左手で撮影した。

ブッドレアで夢中になり吸蜜するミドリヒョウモン♂(2021.9.9 撮影)

吸蜜の邪魔をされ、不機嫌なミドリヒョウモン♂(2021.9.9 撮影)

 また、ショップの前に置いている野菜のように成長したヴァイオレットの鉢植えでは、ツマグロヒョウモンの幼虫が育っていた。この幼虫は無事蛹になり、9月上旬には飛び立っていった。
 
ヴァイオレットの鉢植えで育つツマグロヒョウモンの幼虫(2021.8.22 撮影)

ヴァイオレットの葉を食べるツマグロヒョウモンの終齢幼虫(2021.8.22 撮影)

 朝の雲場池の散歩では、初めてオナガアゲハが別荘地の庭で満開になっているフシグロセンノウで吸蜜するところに出会った。


雲場池の別荘地に咲くフシグロセンノウで吸蜜するオナガアゲハ(2021.8.26 撮影)

 少しづつ、チョウを見る機会が増えてはいるが、やはり今年はチョウが少ないと感じるのである。

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