昨年、卵から飼育し、観察と撮影を続けてきたヒメギフチョウが、長い蛹の期間を経て、今春羽化にこぎつけた。
今年4月になって、卵を採集した場所に近い東御地区にヒメギフチョウの発生状況を見に出かけた時は、やや時期的に遅かったためか、成虫の姿を見ることができなかった。
周囲のウスバサイシンの株を丹念に見て回ると、20数株中2つの株に卵を見ることができた。2年前に同様の観察をしたときには、7~8株に産卵してあったので、今年はこれに比べると随分少ない。
産み付けられた2か所の卵の間隔はだいぶ大きくなっているので、産卵から時間が過ぎていると思われた。一方1枚目の写真の右側の8個の卵は、間隔が接近していて、最近産み付けられたもののようで、ごく最近まで成虫が生きていたことを示している。
この時、なぜか1枚のウスバサイシンの葉裏には、オオムラサキの幼虫ではないかと思えるものが見られ、辺りにはイカリソウの花も咲いていた。
ウスバサイシンの葉裏に産み付けられたヒメギフチョウの卵 1/2(2024.4.23 撮影)
ウスバサイシンの葉裏に産み付けられたヒメギフチョウの卵 2/2(2024.4.23 撮影)
ウスバサイシンの葉裏に潜んでいたオオムラサキの幼虫?(2024.4.23 撮影)
イカリソウの花(2024.4.23 撮影)
軽井沢と東御地区とでは、サクラの開花時期が半月ほどずれている。我が家のヒメギフチョウの羽化もそろそろではないかと毎日のように様子を見ていたが、外観上は真っ黒で、ほとんど変化らしい変化が無く、軽井沢ではやはり越冬は無理なのかと諦めかけていたある朝、屋外に置いたスミレの鉢植えの根元にいた蛹の1つから、ヒメギフチョウが這い出しているところを見つけた。
早速撮影に取り掛かかり、タイムラプス撮影した。次のようである。
ヒメギフチョウの羽化(2024.4.26, am 8:10~8:42 30倍タイムラプス撮影)
続いて他の蛹からも羽化してくるのではと、その後も期待して様子を見ていたが、羽化してきたのは、この1頭だけで、他の蛹からの羽化は見られなかった。
昨年、東御地方の山中で採取した卵を飼育し、今春の羽化を見届けようとしてきたが、16個の卵から10匹の蛹が得られ、その内1匹だけが羽化したという結果になった。
蛹は、冬期間ずっと屋外に置いた。すぐ隣にはカラスアゲハの蛹も3匹置いてあった。そのカラスアゲハの蛹は5月になって2頭が順調に羽化している。残る1匹の蛹からは、驚いたことに寄生バチが生まれてきた。この顛末については別途まとめる予定である。
さて、ヒメギフチョウが終齢になった時、1匹が飼育ケースから脱走して、行方が分からなくなっていた。その他の終齢幼虫は、蛹になった後飼育ケースごと屋外に置いたまま冬を越し、春を迎えたのであったが、行方不明の1匹は、冬を過ぎて、春先になってから、カーテンレールの溝に隠れるようにして蛹になっているのを見つけた。そしてこの1匹も他の仲間に後から加えておいた。
従って、今回羽化した個体が、屋外に冬中置いてあった9匹中の1匹か、脱走し、室内で蛹化した1匹かは、残念なことに判らない。
10匹の蛹の内、羽化したものが1匹だけであったので、確率的には室内で越冬した個体が羽化した可能性が高いと考えてはいるが。
もしそうだとすると、ヒメギフチョウの蛹は軽井沢の環境下では越冬できなかったということになる。また、ヒメギフチョウの蛹は通年20~25℃前後と、ほぼ一定の温度の室内にあっても、季節を間違えることなく、春になって羽化したことになる。
どうしたものかと迷いながらも、ヒメギフチョウの蛹を室外の自然環境下に置いたのは、季節外れの時期に羽化してくることを恐れたからであった。
実際、モンシロチョウなど、冬に室内で羽化させてしまった経験があったので、このようにしたのであったが、ヒメギフチョウの場合、これは間違いだったようである。
羽化したヒメギフチョウ (2024.4.26 am 9:05撮影)
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