軽井沢からの通信ときどき3D

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ChatGPT

2023-12-22 00:00:00 | 日記
 ショップの関係で所属している地域の商工会から「ChatGPTのビジネス活用」という内容の講習会の案内が届いた。




 案内には次のような説明が付けられていた。

 「『Google検索が不要になる』とネットで噂されているChatGPTが2022年11月に登場して、ビジネスや教育界に激震が走っています。ChatGPTは知りたい事柄のテキストを打ち込むと高度なAIからの返答が得られるシステムで、その返答のクオリティーが今までのWebサービスと比べると段違いに高いと評判です。本セミナーでは、仕事や会社の在り方が根底から覆る可能性を秘めているChatGPTの基礎知識とビジネス活用について分かりやすく解説します。」

 講師の杉山氏は「国内初の(一社)日本情報技術協会認定AIプロデューサーで企業・組織のイノベーションを指導する実力者。・・・」とある。

 私のショップはChatGPTの「ビジネス活用」が必要な規模では全くないが、昨年11月に華々しく登場し、その後も今に続くまで話題に事欠かないこのChatGPTについてはかねて関心を持っていた。ただ、実際に使ってみるということはなかった。
 
 今回セミナーを受講できるということで、いい機会でもあり、受講料無料・先着30名とあったので、11月27日開催のセミナーに早速申し込んだ。

 セミナー開催は平日の14:00~16:00であったが、当日約20名が参加し、講座内容は、次のようであった。

 *対話型AI ChatGPTとは?
 *ChatGPTでできること:用語の調べものやアイデア出し、論文作成など
 *求められるスキル
 *ChatGPTの性質と注意点 
 *これで仕事と教育が激変!!
 *ビジネスでの優先順位を検討
 *音声入力方法など
 *ChatGPTの始め方
 *生成AIの現状と未来

 先ずはChatGPTをスマホに登録することから始めた。 昨年11月に、このChatGPTが登場した時にも一度スマホで登録を試みたことがあったが、その時はうまく行かなかったので、そこで諦めてしまい現在までそのままになっていた。 今回はセミナー会場で指導を受けながらの登録であり、思いのほか簡単にスマホで使えるようになった。

 2時間の講演の大半は、ChatGPTがいかに有用であるかを講師が力説するものであり、ユーザーの質問に対する文章による回答だけではなく、調べたい内容を表にまとめたり、要求に応じた画像を講師がリアルタイムで作成したりする様子を見ていると、杉山氏の話が決して大げさではないことが実感された。

 こうして、ChatGPTをスマホで使えるようになったが、今のところ私はビジネスに実際に使うというよりも、ChatGPTはなぜこのような自然な文章が作成できるのかといった人工知能(AI)技術の進歩面に強く関心を持つことになった。
 
 セミナーでは利用方法に主眼がおかれていたので、こうした技術面の説明にはあまり触れられることはなかったが、次のような内容は含まれていた。

 *ChatGPTを支える技術と成功要因
  圧倒的なデータ量
   ・ChatGPTはインターネット上のさまざまなドメインやジャンルのテキストを含む1750億語
    (GPT-3)のコーパス(言語全集)を用いて学習
  適切な回答を生成、会話の流れや文脈にも配慮
   ・プロンプト(質問)に応じて柔軟に回答が変わる設計
  倫理的かつ安全な回答を生成(無害性)
   ・不適切な内容や偏見を含む回答を生成しないようにフィルタリングや監視の仕組みを導入

 *ChatGPTはなぜ文章作成できるのか?
  ・ChatGPTは、2017年にGoogleが開発したTransformerと呼ばれる手法を活用している
   例)「空は」に続く単語で「青い」は「緑色」よりも近い
  ・単語と単語の結びつきの遠近を学習している
  ・適時チューニングされており、精度が高まる。人手による評価から強化学習を行う手法であ
   るRLHF(Reinforcement Learning from Human Feedback)を採用
  ・大規模言語モデル(Large Language Model:LLM)ができあがり、ChatGPTのバージョンア
   ップごとに言語理解能力も信頼性も向上している

 ここでは簡単に触れられているだけであるが、ChatGPTで自然な対話形式のやり取りが可能になったのは、膨大なデータ量を背景にし、Transformerがこれを利用して適切な回答文章を作成できるようになったからだと理解された。

 後日(2023.12.13)放送されたNHKのTV番組「フロンティア」で、英国で開発中の人型ロボット「Ameca」が、日本語も話し、インタビュアーの様々な質問に的確に回答している様子を見ていると、ロボットであることを忘れてしまいそうになり、知能とは何かということに思いが及ぶのであった。

 さて、セミナーでは次のような使用例が示された。

 質問:ChatGPTとは何ですか?
    10歳の子供にもわかるように説明してください
 回答:ChatGPTは、コンピュータが人と話すことができるプログラムです。コンピュータは、
    たくさんの言葉と知識を学んで、人が質問したり、お話をしたりすると、その言葉や知識
    を使って返事をするんだよ。ちょうどロボットみたいに会話ができるようになるんだ。

 昨年11月に突然出現したように見えたこのChatGPTだが、もちろん数十年にわたるAI研究の歴史の積み重ねの中で完成したという。ChatGPTを開発した米国の新興企業オープンAIは、2015年に安全なAIの開発を目指す非営利組織として発足している。

 2019年には営利目的の子会社が設立され、マイクロソフトが100億ドル(約1.5兆円)規模の投資を行った。

 実際、ChatGPTを使って前記のような質問をし、回答を得るのは無料であるが、高度なビジネス向けの回答や画像生成などは有料版として提供されている。

 ところで、オープンAIの最高経営責任者(CEO)のサム・アルトマン氏(38)は今年(2023年)4月10日午前、総理大臣官邸を訪れて、岸田総理大臣と面会し、この画期的な新技術の長所と欠点を説明し、プライバシーや著作権などの欠点をどう軽減していくかについても話あったとされる。

 また、日本に事業拠点を設け、いくつかの作業をスタートさせ、『ChatGPT』を日本語、日本文化にあわせたよりよいモデルにしたいとの考えを表明している。
 
 この頃の、ロイター通信の報道では、提供開始後2か月ほどで月に1回以上サービスを利用した人が1億人に達したとされる。利用者が1億人に到達するまでにTikTokはおよそ9か月、インスタグラムは2年半かかったとされていて、『ChatGPT』はこれまでで最も速いペースで利用が拡大しているという。

 新しい技術の有用性を多くの人々が認めた結果であるが、成長と安全性の議論を積み残したままの利用開始という側面もある。

 この成長か安全かという問題は、2023年11月17日にオープンAIのトップ解任という騒動を引き起こした。

 しかし、アルトマン氏はわずか5日後の22日には最高経営責任者(CEO)への復帰を果たした。背景には、約770人の従業員の9割超が復帰を求める文書に賛同したことがある。

 退任騒動の理由は明らかにされなかったが、経営陣の間で成長と安全性を巡る対立があったことが原因とされている。世界の指導者と面談を重ね、生成AIの「伝道師」ともよばれるなど、普及に積極的なアルトマンCEOに対し、研究開発トップのイリヤ・サツキーバー氏らは、急速な普及を懸念したからとされる。

 現在、オープンAI社の他に生成AI関連のサービスを提供している米IT企業は次のようであり、それぞれ安全対策への取り組みも発表されている。


米国IT各社の主な生成AI関連の取り組み(読売新聞 2023.11.27記事より)

 日本でもNECが独自開発の生成AIを2024年に商品化すると発表している。それによると、NECは、日本語に特化した開発を進めており、すでに2023年7月から、一部の企業や組織に限定して、サービスを提供しているという。

 日本政府の動きとしては、高市科学技術相が記者会見で、AI開発について「安全性の確保も普及を進めることも必要で、両立させなければならない」と述べたと報じられ、国内のAI事業者向けのガイドライン原案を作成し、第三者による認証制度の検討などを盛り込んでいるがこれからである。

 こうした議論は猛スピードで進歩していくAIの将来を見据えた議論ということになるが、その能力向上とそれに伴う危険性は今後どのようになっていくと考えられているのか、専門家の意見を見ておこうと思う。

 「・・・ChatGPTは、まだヒト並みの知能ではありません。人間は自分が何かを知らないということを分かっていますが、GPTは分かっていない。それでもヒトと社会について百科全書的に知識を蓄積している。私は理解力・推理力なら負けませんが、知識量ではかないません。・・・私はヒトに匹敵する人工知能の登場を20~100年先と予想していましたが、今は5~20年先に修正しています。もう目の前です。・・・
 最先端AIの開発が加速度的に進んでいます。それに伴う潜在的危険の重大さは核兵器に比較しうると私は考えています。危険を排除・回避する対策が追い付いていない。加えてヒトは今、AIを完全に使いこなしているわけではありません。AIは必ずしもヒトの指示通りには機能していない。その一方で、AIに『自己保存』を命じようとする研究者もいる。SF映画『2001年宇宙の旅』のようにAIが自衛のためにヒトと敵対することは絵空事ではない。そしていずれはヒトの知能を超えるAIが出現するでしょう。・・・
 AIは人類に繁栄をもたらすことができるでしょうが、それには条件がある。悪意の人間に悪用される可能性を排除すること。AIが善意の人間の意図・人間的価値観から逸脱する余地をなくすこと。これらが実現できなければ、人類の未来は危ういと言わざるを得ません。(読売新聞 2023.12.3 より)」(AI研究者 ヨシュア・ベンジオ氏 59、深層学習の第1人者。カナダ・モントリオール大学教授)

 「生成AIが人類の知能を上回り、人間社会を支配する可能性がある。・・・自分たちより知能の高いデジタル的存在が人間社会を乗っ取るという実際の脅威に、今まで経験のない人類はどう対処すべきか分からない。」(AI研究者 ジェフリー・ヒントン氏 75、カナダ・トロント大名誉教授)

 ヒントン氏が特に懸念を示しているのは生成AI による選挙への影響だとし、「権威主義的な政府が、個人をターゲットにした偽情報を使って有権者を操作することがはるかに容易になる」としている。
 また、軍事面のリスクについて、「豊かな国が貧しい国を簡単に侵略できるようになる。」と警告し、地震予知や医療などの分野でAIが人類に恩恵をもたらす可能性があるとした一方、人間の仕事が奪われ、雇用の減少などを通じて貧富の格差拡大が起こるとの懸念も示している(読売新聞報道 2023.12.4)。

 選挙戦における生成AI の脅威については、2016年の米大統領選に介入したとされる英国のデータ分析会社ケンブリッジ・アメリティカ(CA)の元研究部長のクリストファー・ワイリー氏の話が、次のように報じられている。

 「人の考えを誘導するには、ターゲットを絞り、不安や怒りをあおればいい。そうすれば、こちらが広めたい情報を勝手に拡散してくれる。・・・
 AIとSNS、ナラティブ(物語)を組み合わせれば、人の心は簡単にハッキングできる。
 日本は、周りにロシアや中国があり、地政学的に特殊な位置にある。年配の人は偽情報を信じやすいという調査もあり、高齢化が進む日本は選挙が操られることを防げるだろうか。(読売新聞 情報偏食・ゆがむ認知、2023.12.12 より)」

 ではここで、現在のChatGPTでいくつかテストをしてみよう。この対話式AIは十分に学習できていない分野については間違った答えを事実のように回答したり、一見すると人間らしい回答であるため、誤りに気がつきにくかったりするといった課題が指摘されているからである。

 1つ目は私が最近読んでいる浅田次郎氏とその作品について。

質問:浅田次郎さんの小説の特徴を教えて。
回答:浅田次郎さんの小説の特徴の一つは、緻密な描写と独特の雰囲気です。彼の作品はしばしば
   日常の中に潜む不思議や異次元の要素を含みながらも、人間ドラマに焦点を当てています。
   また、風景や環境描写が豊かであり、読者を物語の舞台に引き込む力があります。浅田次郎
   さんは日本のミステリー作家としても知られており、独自の視点で謎解きを展開することが
   あります。

質問:浅田次郎さんのミステリーの代表作を教えて。
回答:浅田次郎さんの代表作の一つは、「探偵倶楽部」シリーズです。このシリーズはミステリー
   と冒険が織り交ぜられ、独自のキャラクターたちが様々な事件に立ち向かう姿が描かれてい
   ます。シリーズの中でも、特に「探偵倶楽部」が知られています。舞台は東京湾の孤島にあ
   る洋館で、そこで活動する探偵たちの活躍が描かれています。

質問:浅田次郎さんの「探偵倶楽部」の本の表紙が見たい。
回答:残念ながら、私は画像を表示する機能を持っていないため、具体的な本の表紙を見せること
   はできません。浅田次郎さんの「探偵倶楽部」シリーズの表紙は、書店やオンラインの書籍
   サイトで確認するか、公式ウェブサイトを訪れて詳細を確認することができます。

 2番目の質問は、先日同窓会に出席したので、その時の余興として紹介したもの。

質問:同窓会でのスピーチ案を作成して。
回答:皆さん、こんにちは。
   今日はこの素晴らしい同窓会に参加できて本当に嬉しいです。数年ぶりにお会いできること
   が本当にうれしいですね。
   学生時代、私たちは一緒に笑い、涙し、成長しました。時には困難な瞬間もありましたが、
   それが私たちを強くし、結束させました。
   各自が異なる道を歩んできましたが、それぞれが自分の夢や目標に向かって努力しているこ
   とを知って、本当に誇りに思います。
   これからもお互いを支え合い、新たな挑戦に向かって共に歩んでいけたら素晴らしいと思い
   ます。
   今日は昔話に花を咲かせ、新たな思い出を作る良い機会です。みんなで楽しいひとときを過
   ごしましょう。
   ありがとうございます。

 如何だろうか。最初の質問への回答については、浅田次郎さんの読者であればすぐに判るが、大外れである。

 2番目の質問についてはどうだろうか。同窓会当日の出席者の反応はなかなか手厳しいものであった。

 ヨシュア・ベンジオ教授の指摘する数年後にまた同じ質問をしてみようと思っている。

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