すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【女子W杯2023 戦術論】なでしこジャパンのスペイン戦で「起こったこと」とは?

2023-08-02 07:28:18 | なでしこジャパン(ほか女子サッカー)
古くて新しいカウンター戦術

 なでしこジャパンがスペイン女子代表を圧倒した「女子ワールドカップ2023」のあの試合を観て思うことは、サッカー界とそれを取り巻くメディアの世界は、ポゼッション率やパス総数のような数字だけで優劣を語る単純思考を改める必要があるということだ。

 たとえば件のスペイン戦を、こんなふうに報道しているメディアがあった。

「スタッツだけ見れば、どちらが勝ったのかわからない。数字上では圧倒的に支配されながら、終わってみれば勝者はなでしこだった」

 いや意図的に相手にボールを持たせているのだから、そりゃあスタッツだけ見ても優劣がわかるわけがない。

 しかも「数字上では圧倒的に支配されながら」という表現が、ちょっと恥ずかしい。

 いや別に圧倒されているのではない。わざと相手に攻めさせているだけなのだから。

攻撃は「失点すること」と背中合わせだ

 つまりあのスペイン戦で起こったことは、以下のようなお話である。

 実はサッカーでいちばん失点する危険がある時間帯は、自分たちが攻撃しているときだ。なぜなら攻撃とは、みずから守備のバランスを崩して行う行為だからだ。

 逆にサッカーで守備がいちばん安定している状態とは、守備のバランスが取れているときだ。そのバランスをわざわざ自分から崩して攻撃を行うわけだから、失点する危険性が高いのも当然である。

 そんな原理を応用するのがカウンター戦術なのだ。

 あえて最終ラインを低く設定し、敵を呼び込みわざと攻めさせる。で、相手の背後に十分なスペースが開いてスキができた(守備のバランスを崩した)のを見計らい、逆にボールを奪って少ないタッチ数で素早く相手を攻め潰すーー。

 こんな理論に基づいてカウンター攻撃は行われる。

 その昔、カウンター戦術は、弱いチームが勝つために仕方なくやるものだった。だが現代サッカーでは事情がちがう。いまでは強いチームがあえて能動的に「それ」をやっている。

 例えばリバプールのユルゲン・クロップ監督が広めたゲーゲンプレスをベースにしたカウンターサッカーを駆使するチームはいまや多い。

 このようなスタイルは、スペインで生まれたティキタカでボールを支配するポゼッションサッカーに対するアンチテーゼとしてサッカー界に根を張っている。

 ポゼッションスタイルだけが「勝てるサッカー」だった時代はもう終わった。ポゼッション率やパスの本数だけ見て判断する思考はもう古いのだ。

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