前からプレスをかけてラインを上げる
女子ワールドカップ2023の準々決勝、なでしこジャパンは強豪スウェーデン女子代表と戦い、1-2で敗れた。だが、あの試合は戦い方を変えればもっと勝負になったはずだ。
まずは総論から行こう。
前半の日本はスウェーデンの猛攻に押し込まれた。気おされ、低い最終ラインのまま耐えた。そのため攻撃のチャンスがなかなか回ってこない。どこかでラインを上げたかった。それなら前からプレスをかける必要がある。
そもそもスウェーデンは前半の立ち上がりから、グラウンダーのボールで最終ラインからていねいにビルドアップしてきていた。明らかにそういうゲームプランだ。ならばなおさらプレッシングで彼らのビルドアップを断ち切るべきだった。
5-2-3に可変しフォアチェックをかける
一例だが、たとえばフォーメーションを5-2-3に可変し、フォアチェックをかける方法がある。前線3枚で中央を規制し、ボールをサイドに追い込む作戦だ。
これでスウェーデンがたとえば左SBにボールを出せば、ボールサイドのCMFが寄せに行く。もう片方の日本のCMFも、敵CMFへのパスコースを切るため同様に右へスライドする。
このときなでしこの右シャドーは敵の左CBに付き、ボールを保持した敵の左SBがバックパスできないようにする。また逆になでしこの左シャドーは自軍CMFが空けた左のハーフスペースを埋めに下がり、カバーリングすると同時に敵の右CMFに付く。
これでスウェーデンはボールを出す場所がなくなる。ボールはクローズされたので、なでしこは最終ラインを上げられる。もちろんあわよくば、ボールに強く寄せて奪い取ってしまうチャンスもうかがう。
こうしたプレッシングは応用可能だ。同様にボールがどこにあろうと、なでしこのポジショニング次第で絡め取ってしまえる。
たとえば上記の例で敵SBがボールを保持しているとき、(間に合うなら)同サイドのなでしこのウイングバックがプレスをかけに出て行ってもいい。これで残りの4バックがボールサイドにスライドする方法もある。つまり「偽5バック」だ。
なでしこジャパンは攻撃はグレードが高いのだから、こんなふうにもっと守備に手を入れてチーム全体をグレードアップしたい。守備面での伸びしろはまだまだ大きい。
ハイクロスは避け低いボールで勝負する
あとは各論だ。
日本はしきりにサイドからハイクロスを入れてフィニッシュした。だが高さのあるスウェーデン相手にあれでは勝ち目がうすい。もうひと工夫ほしい。なるべくなでしこの小柄さが不利にならないグラウンダーのボールで攻めたかった。
たとえば相手GKと最終ラインとの間にできたスペースに、サイドから強くて速いグラウンダーのボールを入れる。で、味方をライン裏に飛び込ませる。
あるいは中央にいるFWやシャドーの選手に、クサビのボールを当てる。これで敵DFは中へ絞るので、空いたサイドにボールを展開する。またはポストになった選手が落としたボールを、3人目の動きで受けて中央突破を図ってもいい。
前へ飛び込みFWが落としたボールをシュートするか、落としのボールをワンツーで一度ゆさぶり敵の視点を移動させてからフィニッシュするのもアリだろう。こんなふうに変化球はいくらでもある。
これで高さ勝負を避け、あくまでグラウンダーのボールでゆさぶり攻めたかった。
ほしかったセットプレー対策
スウェーデンには得意のセットプレーから2点を取られた。彼らは今大会にあげた11ゴールのうち、8ゴールがセットプレーがらみだ。その意味ではもっとセットプレー対策をしておきたかった。
また超各論だが……後半29分、植木が倒されPKを取った場面だ。彼女のシュートはクロスバーを叩き、跳ね返ってきたボールを植木はGKの真正面にヘディングしてしまいボールを跳ね上げて外してしまった。
あそこも例えば真正面でなく、ゴールのスミを狙ってボールを下に叩きつけるような抜け目のなさが欲しかった。
一方、収穫としては、途中交代で入ったMF林穂之香とMF清家貴子は非常によかった。層が厚い。1次リーグのときから手駒の豊富さは感じさせていたが、このあたりは将来に希望がもてる点だ。伸びしろしかない。
重ねて前半から積極的に敵と撃ち合っていれば、と残念でならない。先手必勝だった。なでしこジャパンは今大会をよく検証し、来年のパリ五輪をかけた今年10月から始まるアジア2次予選に臨んでほしい。
彼女たちのおかげで今回は女子W杯のおもしろさに気づけた。なでしこジャパンの次戦が楽しみだ。そんな気持ちにさせられたのが今大会、最大の「収穫」といえるかもしれない。
女子ワールドカップ2023の準々決勝、なでしこジャパンは強豪スウェーデン女子代表と戦い、1-2で敗れた。だが、あの試合は戦い方を変えればもっと勝負になったはずだ。
まずは総論から行こう。
前半の日本はスウェーデンの猛攻に押し込まれた。気おされ、低い最終ラインのまま耐えた。そのため攻撃のチャンスがなかなか回ってこない。どこかでラインを上げたかった。それなら前からプレスをかける必要がある。
そもそもスウェーデンは前半の立ち上がりから、グラウンダーのボールで最終ラインからていねいにビルドアップしてきていた。明らかにそういうゲームプランだ。ならばなおさらプレッシングで彼らのビルドアップを断ち切るべきだった。
5-2-3に可変しフォアチェックをかける
一例だが、たとえばフォーメーションを5-2-3に可変し、フォアチェックをかける方法がある。前線3枚で中央を規制し、ボールをサイドに追い込む作戦だ。
これでスウェーデンがたとえば左SBにボールを出せば、ボールサイドのCMFが寄せに行く。もう片方の日本のCMFも、敵CMFへのパスコースを切るため同様に右へスライドする。
このときなでしこの右シャドーは敵の左CBに付き、ボールを保持した敵の左SBがバックパスできないようにする。また逆になでしこの左シャドーは自軍CMFが空けた左のハーフスペースを埋めに下がり、カバーリングすると同時に敵の右CMFに付く。
これでスウェーデンはボールを出す場所がなくなる。ボールはクローズされたので、なでしこは最終ラインを上げられる。もちろんあわよくば、ボールに強く寄せて奪い取ってしまうチャンスもうかがう。
こうしたプレッシングは応用可能だ。同様にボールがどこにあろうと、なでしこのポジショニング次第で絡め取ってしまえる。
たとえば上記の例で敵SBがボールを保持しているとき、(間に合うなら)同サイドのなでしこのウイングバックがプレスをかけに出て行ってもいい。これで残りの4バックがボールサイドにスライドする方法もある。つまり「偽5バック」だ。
なでしこジャパンは攻撃はグレードが高いのだから、こんなふうにもっと守備に手を入れてチーム全体をグレードアップしたい。守備面での伸びしろはまだまだ大きい。
ハイクロスは避け低いボールで勝負する
あとは各論だ。
日本はしきりにサイドからハイクロスを入れてフィニッシュした。だが高さのあるスウェーデン相手にあれでは勝ち目がうすい。もうひと工夫ほしい。なるべくなでしこの小柄さが不利にならないグラウンダーのボールで攻めたかった。
たとえば相手GKと最終ラインとの間にできたスペースに、サイドから強くて速いグラウンダーのボールを入れる。で、味方をライン裏に飛び込ませる。
あるいは中央にいるFWやシャドーの選手に、クサビのボールを当てる。これで敵DFは中へ絞るので、空いたサイドにボールを展開する。またはポストになった選手が落としたボールを、3人目の動きで受けて中央突破を図ってもいい。
前へ飛び込みFWが落としたボールをシュートするか、落としのボールをワンツーで一度ゆさぶり敵の視点を移動させてからフィニッシュするのもアリだろう。こんなふうに変化球はいくらでもある。
これで高さ勝負を避け、あくまでグラウンダーのボールでゆさぶり攻めたかった。
ほしかったセットプレー対策
スウェーデンには得意のセットプレーから2点を取られた。彼らは今大会にあげた11ゴールのうち、8ゴールがセットプレーがらみだ。その意味ではもっとセットプレー対策をしておきたかった。
また超各論だが……後半29分、植木が倒されPKを取った場面だ。彼女のシュートはクロスバーを叩き、跳ね返ってきたボールを植木はGKの真正面にヘディングしてしまいボールを跳ね上げて外してしまった。
あそこも例えば真正面でなく、ゴールのスミを狙ってボールを下に叩きつけるような抜け目のなさが欲しかった。
一方、収穫としては、途中交代で入ったMF林穂之香とMF清家貴子は非常によかった。層が厚い。1次リーグのときから手駒の豊富さは感じさせていたが、このあたりは将来に希望がもてる点だ。伸びしろしかない。
重ねて前半から積極的に敵と撃ち合っていれば、と残念でならない。先手必勝だった。なでしこジャパンは今大会をよく検証し、来年のパリ五輪をかけた今年10月から始まるアジア2次予選に臨んでほしい。
彼女たちのおかげで今回は女子W杯のおもしろさに気づけた。なでしこジャパンの次戦が楽しみだ。そんな気持ちにさせられたのが今大会、最大の「収穫」といえるかもしれない。