まつお文庫からのご案内

仙台市若林区中倉3-16-8にある家庭文庫です。水・土の3時~6時(第2土は休み)どなたでも利用できます(無料)。

新しく買った本 11月

2024-11-22 17:11:53 | 文庫のページ
①『火の鳥 いのちの物語』
        手塚治虫/原作  鈴木まもる/文・絵  金の星社 2024.4

 手塚治虫の傑作「火の鳥」の雑誌連載が始まったのは1954年のことです。今年は連載が始まってちょうど70年。それを記念して、中学生の頃、「火の鳥」を何度も愛読し、漫画家を目指そうとまでした鈴木まもるさんによる「火の鳥」の絵本が出版されました。永遠の命を持つ火の鳥を美しく描き上げています。
 地球に生きる様々な生き物はすべて、いろいろなものを食べ、生き、命を育み、そして死に至りますが、火の鳥は何も食べなくても生き続け、死ぬこともありません。「すべての命のお母さんのような鳥です」と語られるように、画面いっぱいに大きく羽ばたく火の鳥の姿は、輝く命と生への賛歌そのものです。火の鳥は何度も何度も不死鳥のように生き返るのです。その様子が美しく描かれます。
 鈴木まもるさんは、今年1月、仙台手をつなぐ文庫の会の50周年記念講演で来仙しました。
②『わたしはきめた 日本の憲法 最初の話』
        詩訳 白井明大 絵 阿部海太 ほるぷ出版 2023.7

 「日本国民は」で始まる憲法の前文を、詩人の白井さんが詩の言葉で語ります。前文に込められた理想と理念のすばらしさが改めて心に響きます。
 20代の頃、白井さんは前文を暗記したことがあり、読むたびになんてすばらしい理想に満ちた文章だろうと思います。2022年5月3日の憲法記念日に「前文の詩訳と原文」をフリーペーパーで発行します。さらに2023年3月には『日本の憲法 最初の話』(KADOKAWA 191ページ)を出版し、話題になりました。
 詩の言葉に優しく寄り添うように、阿部さんの美しい色調の画面が印象的です。中高生にも手に取ってもらいたい絵本です。
③『ひみつだけど話します』 堀川理万子 あかね書房 2023.11
 ある町の3年3組の4人の子どもたちのオムニバス形式の物語です。電車の大好きな足立典生さんの話。いつも楽しそうにしている小川まやさんの話。生き物に詳しい内海学さん(うっちゃん)の話。学校を休んでいる上田しゅうこさんの話。見返しにはこの町の地図があり、4人がどこに住んでいて、どこでだれと出会ったか、読みながら確かめることができ、物語が膨らみます。学校以外で4人がそれぞれに友だちと出会い、心を通わせていくさわやかな物語です。足立さんの秘密の電車の見方を4人で共有するところも、上田さんが学校に行けるようになる結末も感動的です。
④『水平線のかなたに 真珠湾とヒロシマ』 
        ロイス・ローリー/ケナード・パーク 田中奈津子訳 講談社 2023.6

 『ザ、ギバー 記憶を伝える者』の作者、1937年ハワイ生まれのロイス・ローリーの自伝的作品です。
 父親の撮ったホーム・ムービーの一コマ「浜辺で遊ぶ3歳の女の子と水平線のかなたに浮かぶ艦隊アリゾナ」。アリゾナが映っていることに作者はずっと気づきませんでした。戦艦アリゾナは1941年12月7日8時15分、日本の奇襲攻撃を受け、1200人の若い乗組員のほとんどが命を落とします。
 一方、1945年8月6日の朝、山口県の田布施に住む少年は、広島で何が起きたかを知らずに山の向こうの大きなきのこ雲を見ます。
 そのふたりが1994年アメリカで、子どもの本の授賞式で奇遇にも出会い、戦後の東京で、接点があったことにも気づきます。
 当時、子どもで知らなかったとはいえ、その渦中にあった真珠湾攻撃や広島の原爆投下で、どれだけ多くの人が亡くなったか、作者は丹念に調べ、感情を抑えた筆致で、未来ある若者や子どもの姿を書き記していきます。若い人にぜひ届けたい作品です。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« クリスマス会のご案内 | トップ | 大人のコーヒーサロンとレン... »

コメントを投稿

文庫のページ」カテゴリの最新記事