「プロデューサーズ」で大成功を収めたメル・ブルックスのミュージカル第2弾。
70年代にヒットした同名の映画を、ステージに仕立て上げた。
演出はもちろん、スーザン・ストローマン女史。
鳴り物入りでオープンしたが、2匹めのどじょうはいなかったようだ。
12個のトニーを獲得した前作に比べ、今回は獲得ゼロ。
さらに興行成績も、常にオファーを出すなど厳しさをうかがわせる。
「ヤングフランケンシュタイン」のオープンは2007年10月。
「プロデューサーズ」での成功に味を占めた制作側は、チケットにプレミア価格を乗せて販売した。
もちろん商売だから、人気作ならごく一部の席において、その様な設定があるのは仕方がない。
オーケストラ・センター5列目などは、「プロデューサーズ」でも450ドルの設定になっていた。
しかし今回問題だったのは、15列目あたりまでも250ドル以上の販売価格にしていた点だ。
定価の120ドルで買える席は、明らかに見切れてしまう席ばかり。
「果たして、そんなに高いお金を出してまでみんな見るのかなぁ?」
メガヒヨは数ヵ月後にその疑問の答えを知ることになる。
オープンから年を越した3月、プレミアムチケット制度は無くなっていた。
120ドル払えば、早いもの勝ちで好きな座席を買える。
メガヒヨはめでたく、オーケストラ・センターB列目をgetした♪
早速CDも購入し、予習して観劇に備える。
楽曲は聞き覚えのあるものばかり!!
「プロデューサーズそのまんま!!」と思ったけど、メル・ブルックスの曲って聞くと何故かクセになる。
「JOIN THE FAMILY BUSINESS」や、「LISTEN TO YOUR HEART」、「SURPRISE」は自分的には名曲!!
特に「SURPRISE」の複合コーラスは、プロデューサーズより完成度が高いかも。
一ヶ月位、通勤時間はこのCDを聞いていた。
いざ公演当日。
会場は、巨大で豪華なヒルトン劇場。
座席におさまり、雷鳴と共に始まったオーヴァチュアを聴く。
この古き良き、だけどオペラとは違う音楽。
「ミュージカルを観るぞ~!!」という気持ちが高揚して来た。
幕が開くと、いきなりお葬式。
主人公フレデリックの祖父であり、トランシルヴァニアの城主のビクターが亡くなったのである。
村人は最初は悲しそうな振りをしていたけれど、あっという間に曲想が変わり、
「やっかいなマッド・サイエンティストが死んでくれた!」と派手にお祭り騒ぎを始める。
このシーンは最初から有り得ない位、派手。
歌うわ、跳ぶわ、回るわ…って、どこかで観たことあるぞ。
あ。プロデューサーズの「THE KING OF BROADWAY」だ…。
でもいい。楽しい。ストローマン・マジックだ。
ここに来ているお客さん達もこういうのを期待して来ているのだろうし。
村のシーンから一転。
ニューヨークの大学では、この作品の主人公、フレデリック・フロンケンスティーン博士の講義の真っ最中。
学生達が、
「うちの先生、人造人間を作ったフランケンシュタイン博士の孫っての本当なの?」
とウワサをするのを、
「私の名前はフロンケンスティーンだ。」とそっけ無く、祖父との繋がりを否定する。
後の展開は映画と一緒。
主演のROGER BARTは、メル・ブルックス作品ではもうおなじみ。
プロデューサーズのカルメン・ギーア役は怪演だった。
トニーを獲ったスヌーピー役はもう伝説。これを観なかったメガヒヨは、今でも大後悔している。
さて今回の役どころは、高名な脳外科医で貴族、さらに色男ということだけど、
ごめん!! そんな感じには見えません。
あまり高貴さが伺えない上、失礼ながらモテる役には当てはまらないのである。
しかしモンスターを創造するシーンで、マッド・サイエンティストに豹変する演技は、
神がかっていたものがあった。
この方は血圧を自由に操れるのか、顔色を一瞬で赤くすることが出来る。
その様にして、狂気っ振りをますます発揮していた。
そんなフレデリックの「自称・愛くるしくて、おてんばな」婚約者、
エリザベスを演じるのは、MEGAN MULLALLY。
大人の魅力あふれる女優さんだけど、声がアメリカ流アニメ声。
ノドを締め付ける様な声にも関わらず、ビッグナンバーを高らかに歌い上げる。
劇中、髪の毛が大変な事になったり、大胆なセリフを言ってのけたりと
大女優にこんなことさせちゃっていいのかな、とハラハラする。
でもMEGANさん、メル・ブルックスに頼まれたからこそ、ここまでやったんだろうな。
そしてトランシルヴァニアでの短大卒の助手、インガ役にはSUTTON FOSTER。
今回は金髪のウィッグで、セクシーな歌とダンスを披露してくれた。
馬車の上で仰向けになって、ゆっさゆっさ揺れるシーンなんかはとっても大胆!!
この方も、メル・ブルックスのお願いだから、この仕事引き受けたんだろうな。
ケンプ警視・ハーミット役のFRED APPLEGATEは、NATHAN LANEのそっくりさん。
ロンドンで、マックス・ビアトリックス役をされていたとのこと。
歌声に深みがあって、聞いてて気持ちよかった。
モンスター役のSHULER HENSLEYは、正直、勿体無い使われ方。
この方は「オクラホマ!」でトニーを獲っている実力の持ち主。
メガヒヨはこの方を初めて見たのだけど、終盤の「DEEP LOVE」で歌声を聴いたとき、
「もっと歌わせてよ~~!! 聴きた~~い!!」と地団駄を踏んでしまった。
アイゴール役のJON PATRICK WALKER、フラウ・ブラッハー役のLINDA MUGLESTONは、
それぞれ代役としての登板だった。
でもクオリティはとっても高かった。
ところでアンサンブルで、JIM BORSTELMANNが活躍している。
シアターゴーアー仲間内での通称は「ジミーちゃん。」
映画版の「プロデューサーズ」をご覧になった方はご存知かも知れない。
ロジャー・デ・ブリスの住み込み振付師他、多くの役を演じていた俳優さんである。
熟練したダンサーであり、コメディ俳優でもある多才な方。
今回は、村人ジギー、その他色々な役を演じられる。
ケンプ警視や、モンスターのアンダーにも名前が入っている。
ジギーは村の中では「抜け作」的存在。
お葬式のシーンでは、女性ダンサーに囲まれて楽しく踊っていた。
ジミーちゃんのダンスは、見ている人に幸せを与えてくれる。
幸せといえば、ハッピーエンドを愛するストローマン先生のこと、
今回も登場人物それぞれをハッピーにしてくれた。
ラストのフラウ・ブラッハーの○○デートは、元ネタの映画に無いオチで、
思わず「良かったね♪」と言いたくなった。
村人もオデキが消えた(と思った)アイゴールを一緒になって喜んであげてたし、
この事件後は城主のフレデリックを囲んで、ほのぼのとした村になりそう(^-^)
メガヒヨが観にいった火曜日夜は大勢のお客さんが入っていて、
老若男女問わず賑わっていた。
座席では70代くらいのご夫妻と隣合ったのだけど、その奥様がメガヒヨが芝居についていけてるかを心配してくれた。
笑いのタイミングが明からさまにズレてるものね(^-^;
「映画を観たから、あらすじは知ってます。」と答えたら、
「そうよね。あの映画は楽しかったわ~。」と笑いながらおっしゃっていた。
今後、この作品の寿命がどうなるかは分からないけれど、出来ればまだ何回かは観たい。
B'wayには現在、ホラー・ミュージカルはこの作品しか無いのだから、何とか生き延びて欲しい。
そうそう。終演後はもちろん、ちゃっかり出待ちをしてしまった。
お目当てはもちろん、ジミーちゃん♪
気さくに2ショット写真に応じてくれた。
彼のモンスター役も観られるといいなぁ。