
☆予告編を何度も見ていたが、予告編では、この作品の傾向がいまいち分からなかった。
思ったのが、何人かの主人公の「視点・主観」で、大統領暗殺事件の真相が二転三転するストーリーのようだった。
「ああ『羅生門』かあ」とは思ったのだが、画面は派手なアクションが展開されていた。
公開されて、各種のネット映評を覗くと、かなり評価が高い。
私は楽しみにしていた。
# # # #
黒澤の『羅生門』(原作は芥川龍之介の『藪の中』)は、物語や思想、主張、議論といったものを突き詰めて考えた時、必ず立ちはだかる問題<それぞれの主観>をテーマにしていた。
黒澤作品においては、イタコの口を借りた死者にまでも真実を語らせないという人間の業を描いていた。
私は、黒澤作品がビデオでは発売されていなかった17,8年前に、NHK衛星で放送された『羅生門』を見て感動した覚えがある。
だから、その後『アイアンメイズ』や、天海祐希主演の『ミスティー(だっけ?^^;)』など、『羅生門』にインスパイアされた作品と聞くと、異常に気になった。
しかし、『バンテージ・ポイント』の舞台は、現在である。
このハイテク情報記録機器が行き渡った時代である。
それぞれの主観の出る幕ははないはずなのである。
とにかく、私は、楽しみにしていた。
# # # #
いやはや、面白かった。
ここ数日、『魔法にかけられて』『ケロロ軍曹3』と、傑作ばかりで楽しい毎日だ^^
・・・なんなんだろう・・・?
とにかく、構成が緻密であった。
緻密と感じさせないハリウッド風の娯楽的見せ方の「緻密」であった。
集会での大統領暗殺の場面が、複数の登場人物の視点で繰り返し語られる。
テレビ番組の制作者たち
大統領警護のシークレット・サービス
舞台となるスペインに旅行に来ていたアメリカ人
女に惚れて、その頼みごとを聞いた刑事
集会を見に来た母と娘
テロリストに弟を捕らえられ、その要求通りに動かなくてはならない殺し屋
大統領
テロリストの女活動家
テロリストのリーダー
正午12時から12時半までの30分が何度もくり返されるのだが、その内容は、それぞれの視点ではない。
微妙に客観的な視点がちりばめられている。
そして、その5,6回くり返される30分間は、単純な並列ではなく、リピートを続けつつ、核心に至る情報が徐々に足されていく。
それが、知的に、実に心地良いのだ^^
いわゆる「アハ体験」を連続させてくれるのだ。
# # # #
私が危惧していたハイテク時代の、暴かれる『羅生門』とは異なっていた。
ハイテクはハイテクとして、実際の犯罪者を記録していた。
しかし、30分の間のことなので、その瞬間においては、個々の登場人物の主観に頼るしかないのだ。
<ラショーモン>の形式を借りつつ、娯楽大作として、観ている私たちが満足できるオチを用意してくれている。
# # # #
全員が主人公だが、特にシークレット・サービスのバーンズ(デニス・クエイド)が良かった。
過去の事件(大統領を暗殺から救い銃撃される)にPTSDを抱え、精神安定剤を飲みつつ現場復帰しているのだ。
挙動が不審で、かなり頼りない。
私は、このバーンズが黒幕だったりして? などと思いつつ見た。
まあ、バーンズは悪ではないと言っておく。
そこをネタバレしても、考える選択肢は無数にあるからだ。
わずか、わずか40分後、バーンズが異常に頼もしい男に復活する様は、スタローン映画並みにスカッとする。
これは、挫折した親父の再生の物語である。
もう一人の生き残りし主役の親父も、妻と不仲で傷心旅行中だったのだが、愛を復活させる。
ちゃんと人間ドラマとしても成立しているのだ。
# # # #
数年前に、『メメント』とか言う、つまらない物語をモンタージュし、奇を衒った駄作があったが、
この『バンテージ・ポイント』は、モンタージュを駆使しなくても面白い作品になっただろう。
足によるチェイス、カーアクション、爆発、ガンアクション・・・、それら一つとっても「極上」であった。
皆さんも観に行ってほしい。
傑作である・・・。
(2008/03/20)
思ったのが、何人かの主人公の「視点・主観」で、大統領暗殺事件の真相が二転三転するストーリーのようだった。
「ああ『羅生門』かあ」とは思ったのだが、画面は派手なアクションが展開されていた。
公開されて、各種のネット映評を覗くと、かなり評価が高い。
私は楽しみにしていた。
# # # #
黒澤の『羅生門』(原作は芥川龍之介の『藪の中』)は、物語や思想、主張、議論といったものを突き詰めて考えた時、必ず立ちはだかる問題<それぞれの主観>をテーマにしていた。
黒澤作品においては、イタコの口を借りた死者にまでも真実を語らせないという人間の業を描いていた。
私は、黒澤作品がビデオでは発売されていなかった17,8年前に、NHK衛星で放送された『羅生門』を見て感動した覚えがある。
だから、その後『アイアンメイズ』や、天海祐希主演の『ミスティー(だっけ?^^;)』など、『羅生門』にインスパイアされた作品と聞くと、異常に気になった。
しかし、『バンテージ・ポイント』の舞台は、現在である。
このハイテク情報記録機器が行き渡った時代である。
それぞれの主観の出る幕ははないはずなのである。
とにかく、私は、楽しみにしていた。
# # # #
いやはや、面白かった。
ここ数日、『魔法にかけられて』『ケロロ軍曹3』と、傑作ばかりで楽しい毎日だ^^
・・・なんなんだろう・・・?
とにかく、構成が緻密であった。
緻密と感じさせないハリウッド風の娯楽的見せ方の「緻密」であった。
集会での大統領暗殺の場面が、複数の登場人物の視点で繰り返し語られる。
テレビ番組の制作者たち
大統領警護のシークレット・サービス
舞台となるスペインに旅行に来ていたアメリカ人
女に惚れて、その頼みごとを聞いた刑事
集会を見に来た母と娘
テロリストに弟を捕らえられ、その要求通りに動かなくてはならない殺し屋
大統領
テロリストの女活動家
テロリストのリーダー
正午12時から12時半までの30分が何度もくり返されるのだが、その内容は、それぞれの視点ではない。
微妙に客観的な視点がちりばめられている。
そして、その5,6回くり返される30分間は、単純な並列ではなく、リピートを続けつつ、核心に至る情報が徐々に足されていく。
それが、知的に、実に心地良いのだ^^
いわゆる「アハ体験」を連続させてくれるのだ。
# # # #
私が危惧していたハイテク時代の、暴かれる『羅生門』とは異なっていた。
ハイテクはハイテクとして、実際の犯罪者を記録していた。
しかし、30分の間のことなので、その瞬間においては、個々の登場人物の主観に頼るしかないのだ。
<ラショーモン>の形式を借りつつ、娯楽大作として、観ている私たちが満足できるオチを用意してくれている。
# # # #
全員が主人公だが、特にシークレット・サービスのバーンズ(デニス・クエイド)が良かった。
過去の事件(大統領を暗殺から救い銃撃される)にPTSDを抱え、精神安定剤を飲みつつ現場復帰しているのだ。
挙動が不審で、かなり頼りない。
私は、このバーンズが黒幕だったりして? などと思いつつ見た。
まあ、バーンズは悪ではないと言っておく。
そこをネタバレしても、考える選択肢は無数にあるからだ。
わずか、わずか40分後、バーンズが異常に頼もしい男に復活する様は、スタローン映画並みにスカッとする。
これは、挫折した親父の再生の物語である。
もう一人の生き残りし主役の親父も、妻と不仲で傷心旅行中だったのだが、愛を復活させる。
ちゃんと人間ドラマとしても成立しているのだ。
# # # #
数年前に、『メメント』とか言う、つまらない物語をモンタージュし、奇を衒った駄作があったが、
この『バンテージ・ポイント』は、モンタージュを駆使しなくても面白い作品になっただろう。
足によるチェイス、カーアクション、爆発、ガンアクション・・・、それら一つとっても「極上」であった。
皆さんも観に行ってほしい。
傑作である・・・。
(2008/03/20)
>主役の親父も、妻と不仲で傷心旅行中
そうだったのですか~(笑)
私その辺のところを見逃していたのかな~
なんで、このおじさんは一人で旅行してたのかな~っとものすごく疑問だったのです。
だからいいところを見せたくて頑張って警察に協力もしてたのですかね~
とにかく見終わって久々に面白い映画をみた!っとうきうき気分で家に帰りました(笑)
りバックされる23分間のそれぞれのシーンの中にアナのエピソードを巧妙に絡ませて来てのラストは秀逸だと思いました。
面白い手法の作品ながら、奇をてらったところよりも、ストーリー、アクション、役者の演技がしっかりしていて、いい作品だと思います。
恐る恐るの任務で、最初はガチガチだったバーンズが、後半がむしゃらに犯人を追跡する、プロのシークレット・サービスに変わっていくのが、話を盛り上げたようです。
rikocchinのブログは画面が格好良いので、いつも心に残ります。
>主役の親父も、妻と不仲で傷心旅行中
親父さんがビデオで集会の周回を(^^;)撮っていたとき、後にテロリストのリーダーと判明する男が話しかけてきて、親父は身の上を語るのです。
口数は少ないですが、親父さんの表情で、「ああ、別居中なんだな」と分かる趣向です。
テロのリーダーは、自分らの行動を撮られているのかと疑っていたのですが、「ただの可哀そうな親父か」と安心して、その場を去ったような次第でした。
これからもよろしく!!☆
ええ、最初のバーンズは明らかに挙動不審でした。
情けなく見えて、
だからこそ、デニス・クェイドの演技のうまさを感じました。
ところで、かめさんブログの、4姉妹さん、メチャ可愛いですね。
特に、末っ子ちゃんが、目が点でかわゆい^^
かめさんは、ヤンキー先生とか夜回り先生が好きなようで、教育に興味がおありのようですね。
「日本教育再生機構」を検索してみてください。
最近の集会には、ヤンキー先生が登壇してましたよ^^(正直、私は、ヤンキー先生も夜回り先生も苦手ですが^^;)
保守派の組織です。
娘さんを持つお父さんは、大体、保守派になります^^
TBありがとうございます。
テンポがよく最後まで引き込まれました。
最後はちょっと出来すぎとも思いましたが、うまくできてるな~と納得。
二人のおじさんのドラマも、多くを語らずとも伝わってくるところが、ニク~イ。
私は広末涼子が好きなので、ryokoさんのハンドルネームは嬉しく感じました^^
最近思い出したのですが、デニス・クエイドは、『デイ・アフター・トゥモロー』のお父さん役だったんですね^^