☆・・・20年くらい前、俺は、車のパーツの板金&溶接工場の倉庫内で部品出しのフォークリフト(FT)ドライバーとして働きはじめた。
派遣社員だ(よく話している「派遣会社の社員」ではない、この時は純粋な派遣社員)。
その頃、工場のデータ化がされていなくて、膨大なパーツ部品の捜索は、熟練のFTドライバーの経験による「記憶」で行われていた。
ホンダのストリームの生産が盛んだった。
しかし、えてして、そんな現場の先任者は教え下手で、俺は自分で覚えるしかないのだった。
覚えるには時間が必要だった。
しかも、前任者が何人も辞めている事でわかるように、先任者は、イジワルとも思える無骨さで、なんにも教えてくれない。
指示されたパーツ捜索には10分強は必要だった。
だが、俺は非常にせっかちな男で、少しでも早く作業のアルゴリズム(パターン)を熟知し、楽になりたかった。
(せっかちだからこそ、後にやるポスティングのバイトも、オリンピックにそんな競技があったら金メダルになれるような異常なスピードで毎回終わらせていた…)
「作業のシステム化をしよう」と思った。
大きい会社なので、コンピューター管理のプログラミングなど、勝手なことは出来ないし、そもそも、俺はパソコンは苦手だ。
個人的に、アナログでやるしかなかった。
ある日、俺はサービス残業し、倉庫内の車の部品パーツを全て、自分であらかじめ作成していたレイアウトに書き込んだ。
縦にも、違う種類のパーツが蔵置されているので、平面図なれど、立体3D的な【地図】となる。
それぞれにナンバリングした。
続いて別紙にて、車種ごとにパーツをリスト化した。
リストのそれぞれのパーツを色分けし、レイアウト地図にもカラーリングを施した。
完成だ!
さて、溶接現場から依頼がくる。
書類には「車種」「部分」「数量」の情報がある。
俺は、先ず、自分作成のリストで、その「車種」を見る、
続いてパーツを指で探す、
パーツの横にはナンバリングがある、
そのナンバーを車種のカラーとともにレイアウト上から探す。
そこで初めて、その場所にFT車を動かし進めるのだ。
も〜う、飛躍的に作業スピードが上がった。
15分の作業が三分の一の時間で出来るようになっちゃった!
専任者も、俺が働き始めて一週間ほどで一目置いてくれるようになった。
思えば、この無骨な先任者は悪い人ではなかった。
邪魔をしてくるようなヤツじゃなくて、俺のやった結果には素直に感心してくれた。
その後、俺は、施設長に目をつけられ、「もっと稼げるぞ」と溶接現場に異動させられ、そこでも、せっかち故に、常に12時間の作業時間で最大効率での結果を出し、
50人くらいいた派遣社員が、中国人研修生の大挙としての入社に伴ない【派遣切り】にあった時も、俺だけが唯一残された。
「辞めさせてください!」と言っても、施設長の引き伸ばしにあって、なかなか辞めれんかった。
まあ、お金はたくさん貰えた。
◇
中国人研修生たちは、社食のお味噌汁をセルフでよそう時に、具を根こそぎ持っていきやがるので、腹が立った俺は、ご意見箱に投書した。
翌日から、社食のお味噌汁は、あらかじめお椀によそわれるようになった。
社食のおばちゃんの手間を増やしてごめん!
だけども、俺は中国人研修生らには優しく接していた。
寮生の彼らを、すたみな太郎で奢ってあげたり、つるつる温泉に連れて行ったりしてあげた。
ある日、研修生の一人がボコボコの顔して来社した。
話を聞くと、寮の共同冷蔵庫に入れていた、他人の万頭(マントー=まんじゅう)をそいつが盗み食ったとのこと。
それでリンチにあったらしい。
・・・怖ッ!
(2023/04/23)