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みくさま ハッピーバースデー
いつも口紅をつけて おしゃれしてや~
つけるたびに T美を思ってや~
朝届いたおみかんとレモンの上に、ぽんとおかれていた封筒には、こう書いてあった。
3人娘の1人である。 U子は20日、T美は23日。
”してや~”なんて、彼女らしい書き方だったが 最後の一行は彼女らしくないような気がした。
あまり人に弱みを見せるような彼女では無い気がするから。。
その言葉を見た時に、同居していた自分のお母さんが4月他界した。
まっとうされた人生だったが、やはり昼間ひとりいる家は広く寂しいのであろう。 特に秋には。
ご主人の名前で送られてきた。 やさしい仏さまのようなご主人さまの名前で。
そのことも、母親が亡くなっていっそうご主人のやさしさや存在そのものを感謝で再認識した現れのようだった。
義父さんの写真にひとつお供えした 義父さんはおみかん好きだったのかなぁと思いながら
私もひとついただいて そして電話をしようと思った
ふるさとから車に乗って運ばれてきたおみかんは ひんやりと冷たかった
口に含む前に もう期待している 糖度の高い濃厚な味を
やっぱり・・やっぱりな味
夏に家を訪ねた時の 彼女の顔が浮かんだ 寡黙なやさしいご主人の顔が浮かんだ
もう会えなくなったおばさんの笑顔が浮かんだ
ありがたいな~ おいしいな~
濃厚な味 もう娘たちは良く知っていて 我が家で人気な命名さえしている”T美ちゃんのみかん”
誕生日前に届く ふるさとの味の定期便
彼女の家はおみかんは作っていない。 レモンだけ。 島はレモンの生産日本一。
そのレモンをちぎってお昼ごはんに帰ったところだった。
今年はみかんが少ないらしい。 「やっと手に入れた第一便よ」と言っていた。
それにしても直接生産者から買うのに そこのみかんはいつも甘い 濃厚なのだ
(きっと仲の良いご夫婦、ご家族で作っているに違いないのだ) そう思っている。
「上等な口紅やん」 「そうやで、みくには紅筆もらったの毎日使ってるので、お返しに」
3年前栄養士さんを定年退職したとき、考えて考えてパールのついたミキモトさんの紅筆を贈った。
「大事に使ってるよ」 電話をしたときは必ずそれを言ってくれる。 そうか毎日私を思い出してくれてるんや。
いいもんだね、同級生。 いいもんだね。 もう30年以上忘れずに届く 彼女からのみかん
「年末までにもう一回送ってあげる、お正月用に!」 「お互いに身体に気をつけてがんばろうね
「言うとくけど、おみかんは朝が一番、朝ひとつそしてお昼にひとつ、夜はやめときんさい、夜みかん食べ過ぎると太るよ」