日々雑感 ~写真と思い~

今日と言う日は、二度と来ない。 
だから今日を大切に・・そんな私のデジカメ散歩 

* 壁紙・・ *

2012年12月10日 | 雑感


私の今のパソコンの壁紙はと言うと、エメラルドグリーンの海遊館の巨大な海の中を悠々と泳ぐエイの画像。
タイトルと、不定期に気分で変わるパソコンの壁紙とは全く関係ないんだけど。

我が家はもう築24年になった。
リビングの壁紙は真っ白だったのに、当時夫は煙草を吸っていたので壁には額の後や、時計の跡などが型になっている。
越して来た時は中学に入学したばかりの長女と小学生の長男と次女がいた。  
部屋で煙草を吸うのはまるで当たり前で慣例だった。
その何年かあとに、ベランダで煙草を吸う男性のホタル族なる言葉が生まれたように思う。

もう今夫は4年前咽頭癌の宣告を受け、そのときピタリと煙草をやめて以来吸うことはない。
今は煙草を吸っている人の中にいると、匂いが気になると言う。

年数とともに黄ばんだりした壁紙を、かねがね替えたいと思っていた。
夫の卓球仲間には色々な職種の方がいるが、壁紙を専門に貼っている人もいる。
「その人に頼んだる、貼ってもろうたらええやん」そう言ってくれていた。

のに・・改めて貼り替えたいと言ったら、
「このままでいい」そう言った。
「変わるよ、この部屋。 絶対すっきりするよ」
「いいや、このままでいいんや」重ねて言った。

「この壁が、ここで暮らし始めた24年の歴史やん」

言葉が出なかった。  夫の言葉には一家の長としてのやさしさが溢れているのを感じた。
替えるのは簡単である、替えて新しくなれば雰囲気も変わる、置いたものも映えるしとそんな事ばかりを思っていた。
(すごいなぁ、やっぱりこの人は) 
もう私は「替えようよ」とは言えなかった。

新築祝いに実家からお祝いにもらった鳩時計、もう修理がきかなくて3匹の鳩は顔を覗かせたまま・・時計の針は同じ時刻をさしている。
記念なんだし、この部屋のひとつのアクセントになっていて今更、外せないのだ。 もちろんはずせばくっきりと跡が残っているし。
部屋の入口の白い柱には、折にふれては、夫が孫たちの背を順々に測っては鉛筆で日付と名前を書いている。
わいわい言いながら孫たちが入れ替わり並ぶ、その光景は、実に微笑ましい。

それに・・お風呂場には可愛い猫のシールが貼ってある。
それは前に住んでいた家、幼児期だった子供たちと夫がお風呂に入っていたときにタイルに貼っていたシールなのだ、4匹ほど。
引っ越した日、夫がはがして無造作にまっさらなタイルに貼っ貼ったのである。  
私はそのことを思い出にと持って来たんだ・・と思って、それほどは深く感じていなかった。 

壁紙を変えなくていいと言った夫の思いと、そのシールを持ってきて貼った思いが初めて重なった。
猫のシールなんて、持ってきたときだって、14年ほどになるだろう、あれから24年になるのだ。  
掃除をしてタイルがピカピカになっても、この形さえちぎれた部分や色が薄くなったネコのシールははがせないでいる。 
それは大切な夫の気持ちだから。

そうだなぁ。 部屋だって誰に見せる訳ではないし、恥ずかしいと思うこともない。
私たちの子育てや暮らしを見守りながら、家族を黙って包んんでくれている壁紙は、替えればいいというものではない。  
それにもう私たちはどれほど長く生きられるというものでもない。
大切な暮らしの思い出は、壁紙の色や跡型の中に沁み込んでいるのだ。
息子が使っていた机を使う今、息子がつけた墨や傷跡の中に使っていた当時が懐かしいように、古く色が変化したような壁紙も、
みんな大切な生きたあかしなのである。

真っ白な壁紙は体裁はいいが、今私はふっきれた。  恥ずかしいとさえ思った。
同時に、(この人はなんて繊細な優しい心を持ち得ているのだろう) 
まだまだ夫の全てを感じとっていないし、認めていない事柄もある。  もう、来40周年だと言うのに。
でもそんなことを思えたことは、夫のお陰である。

年末の掃除と称して、表面の汚れは拭いて落ちても24年間で色変わりした壁紙の色は消えない。
苦笑いしながら、これがいいんだこれが・・そう思って眺めている。



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2 コメント

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みくちゃんもすばらしいよ! (ちごゆり嘉子)
2012-12-24 16:52:26
そこでご主人が理解できたなんて、りっぱなのはみくちゃんでもあるよ!
それもご主人から教わったって・・なんていい奥さんでしょう
そんなに思えるなんていいなあ 
私なら張り替えてしまってますよ(苦笑)夫の家に嫁いだ人間なのになあ~~~
改造も、ここに来てから、ボーナスごとに・・やってしまってます
 今年でこの家で住み・・45年ですよ 体も壊れてきています。
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☆ちごゆり嘉子さんへ☆ (みく)
2012-12-25 11:14:40
こちらへもコメントを、ありがとうございます!

ちごゆりさん、褒めないで下さい。
豚もおだてりゃ木に登る~・・
膝腰悪いのに、落ちますがな・・。

替えたいってずっと思っていました。
どれだけ綺麗になるだろうって、描いていました。
言う通りです、変わった色も跡も、傷もちょっと剥がれた所も、
みんな思い出を語っているのですよね。
そんなことを大切に思う・・ちょっと感動ものですよね。
まだまだ夫の本当のやさしさを全て受けとれていない私です。
ごうの強いおなごです。

ちごゆりさん・・ボーナス頂かれるごとにですか?
あの立派なお庭のあるお家、ご夫婦で同じ思いなら改造もいいですよ。
終の棲家ならば、お2人で住みやすく快適に過ごされるのが一番ですもの。

45年ですか、我が家は24年です。
体も・・壊れかけて?ですか? なんのなんの、
山野草のアップ、待っておられる方が沢山いらっしゃいます。
健康の為にも、どうぞ頑張ってよろしくお願い致します。
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